アイドルの僕にクール?なファン(姉)が出来ました 作:@naru
「さあ!いよいよ今日のライブはこれでラスト!」
ドーム内全てを綺麗に彩る四色のペンライト。
「最後まで精一杯楽しもうねー!!」
有頂点に達したステージの熱気は終わりを迎えようとしている。
「みんなの輝いているペンライトを、この日を忘れないように」
だが、その最後を噛み締め、今日という日を心に刻みつける為に各々が正面のステージに視線を送った。
「思いっきり振って、この歌で更に輝かせよう!」
そしてまた、忙しなくペンライトは動き始める。
「じゃあ、最後に行くよー!せぇーのっ!」
強大な歓声と彩りがさらにドーム内の熱気を復活させるのだった。
◆
「はあぁ〜。終わったぁ〜」
控え室にへたり込み、アイドルとは思えない気が抜けた声を晒す。いや、人は居ないから別に良いだろうと少しの懸念を捨て、僕は重い足取りを進めて椅子に座った。
僕の名前は
"アイドル"。この言葉から連想できることは何だろうか。キラキラしてるとか、憧れとか、女性だったら可愛いとか、男性だったらかっこいいとか感想は人それぞれだろう。
かく言う僕もそう言った感想を抱く。
だが、そのイメージ、印象の一部は全く当てはまらない。何を言っているんだと思う人は僕の仲間、理解者と言える。
何せ、この世界は僕が居た前世と全く常識が異なっているのだから。
僕は前世の記憶がある。それも鮮明に覚えているわけではないのだが、名前や歳、高校生であったことなど自分の事は覚えていた。
しかし、どうやって自分は死んだのか、それは全く記憶になかった。
目を開けたら知らない天井。赤ん坊になって、身に覚えのない母が居て、成長して今に至る。
そして成長するにつれて、僕は段々とこの世界に違和感を覚え始めた。
まず、疑問に思ったのは何度も母に言われたこの言葉。
『男の子なんだからもう少しお淑やかになりなさい』
いや、それ普通女の子に言うものじゃないか?
これだけでもおかしいと思うのだが、疑問は一つで収まらない。
今度は僕がテレビを見ていた時だ。
『続いてのニュースです。男子高校生に四十代の女性が猥褻な行為をしたとして—————』
この時は思わず「ん?」と首を傾げそうになったが、まあ、そういうこともあるのだろうと勝手に納得していた。
だが、それを見た父が『痴女、最近多いらしいから周音も気をつけてよ』と言ったことにそれはもう頭の中がハテナだらけになった。
その他にも様々、僕はもう理解したというか、理解せざるを得ない。
この世界は貞操観念が逆転していると。
そこからの生活は中々に不便に感じた。
まず、貞操観念だけではなく男性と女性の在り方の根本自体が変わっていて、男は貞淑、気品を意識したり、お淑やかにいなければならない。
家事とか諸々男の仕事の為、必死に身につけられるよう練習した。
何より、一番苦痛というか、躊躇ったのは服装だ。
そう、この世界は男性が主にスカートを履く。
いや、オカマかよ。
そう思っていたが、その考えがあるのはこの世界でぼくだけ。
小学生までは良かった。私服で通るし、融通は効く。
しかし、中学からは制服だ。強制的にスカートを履かなければならない。
最初は凄く悩んだ。どうにかズボンに出来ないかと父に相談したが、可愛い格好をしなきゃ勿体無いだの全くお話にならなかった。
結局渋々スカートを履く羽目になるのだが、一番恐れたことがあり、それ故着ざるを得なかった。
それが、学校ではぶられること。もとい虐められることだ。
この世界の常識だと男子で制服がズボンというのは考えられていない。
だからこそ、白い目で見られるし、最悪虐めに遭うかもしれない。
そう考えた時、僕は泣く泣くスカートを履くしかなかったのだ。
まあ、高校生になった今、何て言うか‥‥‥。
うん、慣れって怖いよね。
正直このスカートに慣れてしまった。
だって、誰も変な目で見ないし突っ込んでもこない。最初の嫌悪感はどこへやら、何も感じなくなってしまった。
一番は容姿が理由だと思う。
僕が前世から持っていたコンプレックス。それが容姿だった。
中性的な顔、というよりも女顔だ。
男物の服を着ていたら変な目で見られるくらい男だと思われない。
そんな前世では悩みに悩んだ事だが、この世界ではそれが良い方向へ変わる。
そう、この世界は男性がお淑やかになる事から可愛い印象を持つことがモテ度になるのだ。
美的観念は変わらない為、顔が整っていれば取り敢えずモテるがそこに男は可愛い要素、女はかっこいい要素が必要になる。
だから、僕の顔は好都合と言える。女装とか恥ずかしさはあったが、他の目にはそれが好印象に映るようで、所謂美少年。そう言う認識で通ってしまう。
故に、僕がこうして今活動しているアイドル。
これは、前世でいう女性アイドルグループにあたるのだ。
メンバーは僕ほどとは言わないがわりかし中性的な見た目。整った顔立ちをしているので、前世でも大きな人気を得るのではないかと言うほどの完成度があると思う。
そんな前世では歪、今世では清純とも言える道を僕は生きているのだった。