アイドルの僕にクール?なファン(姉)が出来ました   作:@naru

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1.推しとの邂逅

『表情がいつも同じ』

 

『何を考えているか分からない」

 

 何度も言われてきた言葉だが、今の私にはもう何も感じなくなっていた。

 見方によってはクールだとか、良い印象を得られるかもしれないが、反対には根暗など低く悪い印象を与えるのも確か。

 

 自分はその中で後者だった。

 クールと言うよりも無愛想。自分でもそう思っているし、周りから言われれば否が応にも自覚してしまう。

 

 私は感情を表に出すことが苦手なのだ。

 クラスメイトに話しかけられても機械的に言葉を返してしまう。

 そのせいだろう。私は友達や親友といった親しい間柄をあまり持ったことがない。

 

 中には話しかけてくれる人がいるが、あまり私のことを良くは思っていない筈。

 別に人付き合いが嫌いという訳ではない。

 だが、私の思った通りに身体は動かないのだ。何度か克服しようと試みたが、相応の結果は得られなかった。

 

 だからと言って、自分の人生その物を否定する気は無い。学校でいじめを受けているわけでもないし、まずまずと言った感じで生活している。

 もうちょっと表情に感情を出せたらなと不自由に感じてるのは確かだが‥‥‥。

 

 そんな私、白波美咲(しらなみみさき)には今、熱中している物がある。

 ちょうどリビングのテレビに映っている整った顔立ちの男性四人。 

 そう、私は男性アイドルにハマっているのだ。

 

 中でも一押しはluce。割と最近出たグループだが、その人気は凄まじい。

 luceはメンバーの特徴がはっきりと出ていて、髪色、性格、趣味が分かりやすくバラけている。王子様系、クール系、清楚系、小悪魔系の四つで、その独特なメンバーの個性が人気な理由の一つだと思う。

 

 そんな中で、私が一番推しているのは白雪周音だ。

 彼は可愛い・清楚担当で、男性らしく可愛い顔立ち、華奢な体躯、透き通る水色の髪が特徴的なメンバーの一人。趣味は料理、苦手な物は怖い物とまさに可愛いの化身。最高です。

 

 そう早口で捲し立てることが出来るくらい、私はアイドルにハマっていた。

 クラスメイトにバレたらオタクだのうわぁだの様々な言葉が飛ぶかもしれないが、そんなことは知らない。好きな物は好きなんだ。

 

 彼を見ていると、自然と口角が上がるように感じるし、表情に感情が乗るような感覚がある。

 楽しいと思えて、可愛いと思えて、唯一感情を表に出せる最高の時間なのだ。

 

 だからこそ、私は思ってしまう。

 もし、彼が身近な存在であったら、私のこんな印象や性格も変わったんじゃないか。

 友達とか、幼馴染とか、親しい間柄なら、より一層————。

 

 

 

「ある訳ないか‥‥‥」

 

 

 そんな事、ある訳ないし叶うはずがない。ただの夢物語。

 私と彼はどう見ても釣り合わないし、彼は遠い向こうの存在だ。

 私はそんな現実を億劫に思いながら、溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「美咲、私‥‥‥再婚しようと思うの」

 

 それは突然の申し出だった。

 時刻は午後七時。母と一緒に夕食を食べていたところで、思わず驚きを隠せなかった。

 

「そ、そうなんだ‥‥‥」

 

 驚きからたじたじで返事を返すようになってしまい、母はそんな私を見て表情を曇らせる。

 ま、まずい。恐らく私の反応から乗り気でないと思われたに違いない。

 私はそんな事はないとすぐさま否定する。

 

「私は全然大丈夫。お母さんが望んで決めた事なら構わない」

 

 そんな私の言葉から先程の母の表情は消え、明るく嬉しそうな母が此方を見る。

 

「良かった。てっきり美咲はあんまり乗り気じゃないのかなって」

 

 全くそんなことはない。

 ウチの母は女一人手で私を育ててくれた。

 父が早くから病気で他界してしまったため、母はとても辛かっただろうし苦しんだだろう。

 

 そんな母だからこそ、幸せになって欲しい。

 

「あっ、そうだ。彼方の方にもお子さんがいて、貴女よりも年下だから弟になるわね」

 

 うん、ちょっと待って欲しい。弟?何で?そんなの聞いてないよ?まあ、今初めて言われたんだから当たり前か。

 いや、そんな冷静にツッコミを入れている場合じゃない。いきなりそんなことを言われても問題が沢山ある。

 

 まず、こんな私と仲良くなれるか分からないし、もしも怖い人だったり、嫌われたら‥‥‥とか最悪の事態を想定してしまう。

 そんな私の考えを気遣って否定するように母は口を開いた。

 

「大丈夫よ。私はもう会ってきたけど、とても良い子で可愛かったわ」

 

「そ、そっか‥‥‥」

 

 良かった。最悪な事態は取り敢えず免れた事だろう。

 ただ、相手が良い子だったとしても私の方が無表情や無愛想だなと思われて、仲良くなれるのかという問題は払拭出来ない。

 私は全然仲良くしたいと思うのだが、私の性がそれを阻む。

 

 そんな期待と不安が混じる中、また自分の性格に憂鬱さを感じながら、私は嬉しそうな母を恨めしそうに見るのだった。

 

 

 

 

 

 そして、母の再婚発言から三日が経った今日。遂にこの日が来てしまった。

 今日は新たな父と弟との顔合わせをする日なのだ。

 私は緊張から前日はあまり寝れず、気分が優れない。

 

 ただでさえ無表情なのに顔色の悪さが出てしまったら最悪だ。初対面だし、せめてきっちりとした装いで挑みたい。

 私は気合入れを込めて自分の頬を両手で叩き、そんな私を見た母はクスクスと面白そうに笑っていた。

 

「ふふっ、そんな緊張しなくても大丈夫よ。新しいお父さんはとても誠実な人だし、息子さんもとっても優しい子だって前に言ったでしょ?」

 

「わ、分かってるけど‥‥‥緊張するもんは緊張する」

 

 そっか、とまたクスクス笑う母。

 全く面白がって。こっちは緊張と不安でいっぱいなのに。

 テーブルに置いている手は震えているし、椅子に身を置いている身体はそわそわして落ち着かない。

 

 そんな中、玄関の方からインターホンが鳴った。

 誰が来たのか、そんなの言わずもがなだろう。

 私は母の方をチラリと見て、母はうんと頷く。

 はぁっ、と重い息を吐き、意を決心して私は立ち上がった。

 

 それと同時に母も立ち上がり、インターホンのなった玄関へと足を進める。

 玄関に着くと、母は玄関の扉を少し開け、歓迎の言葉を述べているのか少し話し込んでいる。相手の姿は未だ私の視界には入らない。

 それがより一層緊張を募らせた。

 

 そして、話は終わったのか、母は一度こちらに視線を向けてドアを完全に開けた。

 そこから中に入ってくるのは、一人の男性。黒髪のスラッとした体躯で、大人びながらも整った顔立ちをしている。

 この人が新しい父かと考えていると、後ろからひょっこり顔を覗かせてその姿を露にする男の子。

 

 その子の容姿はとても綺麗で、水色の透き通った髪色で————ん?

 

 私は思わずあんぐりと口を開けてしまった。

 だって、目の前にいる水色の髪で、華奢で、すごく整った顔立ちの可愛い男の子は。

 

「白雪周音です。これからどうぞよろしくお願いします。お母さん、お姉さん」

 

 私の、()()()であったのだから。

 

 

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