アイドルの僕にクール?なファン(姉)が出来ました   作:@naru

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 今回は推し視点です。お話自体は進みません。ご了承ください。
 最後にアンケートを設置したので答えていただけると嬉しいです!
 そして、日間ランキング入ってて自分でも驚きました‥‥‥。
 本当に皆様には感謝感激です!







3.ファンとの邂逅

「周音‥‥私、再婚しようと思うんだ」

 

 それは突然の申し出。自分で作った夕食に箸を進めていた手はピタリと止まり、僕は思わず目を丸くした。

 だが、その驚きも一瞬で、止めていた箸を再び動かしながら言葉を返した。

 

「うん、良いと思うよ」

 

 その僕の言葉に安心したのか、お父さんはホッと息を吐いて柔らかい微笑みを浮かべていた。

 お母さんは僕が小学生の時に病気で他界している。

 その時の悲しみは凄まじく大きかったし、お母さんを愛していたお父さんはもっと辛かった筈だ。

 

 勿論、少し複雑な感情がある。

 新しいお母さんが出来ることで昔の母の印象が薄れてしまうのではないか。そんな不安が少なからず心中にあったが、再婚すると決めたのはお父さんだ。

 

 お父さんが自分で決めた人なのだから、相手もきっと良い人なのだろう。

 僕があーだこーだと言ってもお父さんを困らせるだけ。そこら辺は理解しているつもりだ。

 だって、こっちは人生二回目ですから。年齢を合計したら30歳近くになりますし、良い歳した大人だよね。

 

「相手の方にもお子さんはいるの?」

 

「ああ、あちらには周音より一個上の娘さんがいるよ」

 

「へえ〜。じゃあ、お姉さんが出来るんだね」

 

 前世の家族構成ははっきりと覚えていないが、恐らく一人っ子だった。

 だからこそ、姉という存在が出来るということに期待と嬉しさが溢れてくる。

 この世界の感覚で言うと少し変わってしまうため、前世で言う兄妹のような関係になることに少し複雑だが、それでも姉が出来ることが嬉しく感じた。

 

「ふふっ、嬉しそうだな」

 

 表情に出ていたのか、自分の感情を見透かされたことに恥ずかしさを覚え、思わずそっぽを向いた。

 そんな僕の姿が面白いのか、お父さんは楽しそうに笑っている。

 

 その後は新しいお母さんについて聞いたり、主にお父さんの惚気話だったけど中々に楽しい夕食の時間を過ごしていた。

 そんな中、そう言えばと何かに気づいたようにお父さんが言葉を切り出した。

 

「アイドルはどうするんだ?多分苗字はあちら側の方になるから、少し面倒なことになりそうだが‥‥‥」

 

「ああ、そっか。苗字変わっちゃうんだ」

 

 僕は現在本名で活動しているため、多少問題というか、何か言われることは避けられないだろう。

 まあ、別に僕が結婚するわけじゃないし、特に大事には至らないと思うけど。

 

「そこは多分何とかなるよ。後でマネージャーさんにも連絡しておくから」

 

「そうか。でも、何かあったらすぐに伝えてくれ。出来るだけ助けにはなるから」

 

「うん、分かった。ありがと」

 

 心配してくれるお父さんに感謝の言葉を返し、自分をしっかりと気にかけてくれているという実感が僕の心を温めてくれるのだった。

 

 

 

 

 

 

「周音です。よろしくお願いします」

 

「ご丁寧にどうも。私は白波朱莉よ。これからは家族になるんだし、気軽に接してね♪それと、こっちが娘の白波美咲」

 

「ど、どうも‥‥‥」

 

 お父さんの再婚発言から三日後。

 僕はお父さんと一緒に再婚相手の自宅を訪ねていた。

 相手側のお母さん、もとい新しいお母さんとは何度か顔を合わせたことがあるが、新しいお姉さんとは初めてだ。

 

 見た感じ、容姿は整っていると思う。

 肩より下にかかる黒のロングヘアー。つり目で僕より身長が高く、ちょっと負けた気分。

 この世界では相対的に男性の方が低いため、何ら問題はないけどやはり前世の感覚を持った自分からするともう少し身長が欲しい。

 

 とまあ、お姉さんの第一印象としてはクールって感じ。

 加えてあんまり、というかほぼ感情が無しと言ってもいいほどの無表情。

 そういう物なのか、はたまた歓迎されていないのか不安を感じた。

 

 それからお互い会話を交わし、お姉さんがアイドルに興味があるのではないかと話題に上がったが、それはどうやら違うらしくあっさりと否定された。

 ちょっとがっかりしたのは事実だけど、まあ、アイドルに興味が無い人なんていくらでもいるだろう。

 かくいう僕も前世ではそこまで興味がなかったし。

 

 そして、部屋の案内という話になり、僕はお姉さんに案内を受けることとなった。

 初対面で二人きり。当たり前だけど気まずさを覚えるし、僕は何か話題を探そうと思考をぐるぐる回していた。

 

 そこで一つ思いついたのは名前の呼び方だった。

 お姉さんの名前は美咲さん。名前を聞いた時から何て呼ぼうかなと考えていたが、そう簡単に纏まらなかった。

 それならいっそのことお姉さんの方から指定して貰えば良いと思い、僕はお姉さんに問いかけたが、どうやら簡単には決まらないらしく、お姉さんにこう返される。

 

「好きなように呼んで大丈夫」

 

 圧倒的無表情。未だお姉さんが笑ったりした表情の変化を見たこともなく、所々声音は震えているようだけど全く感情が見て取れなかった。

 やっぱり嫌われてる?流石に無表情過ぎてこちらが困ってしまう。

 

 しかし、それを相手に悟らせる訳にはいかない。

 なるべく明るく振る舞い、仲良くなれるよう努めるのが僕の最重要項目だ。

 僕達のいざこざでお父さんの幸せを壊すわけにはいかない。

 そう心に留め、僕はお姉さんの呼び方の候補を思案してみる。

 

 オーソドックスに考えると、『姉さん、お姉ちゃん』とかだと思うけど、何かもう少し距離を縮める工夫が欲しい。

 そう考えた僕は一つの案を思い浮かべる。

 

『美咲姉さん』

 

 そう、名前+姉さん呼び。少し馴れ馴れしすぎるかなと思いはしたが、別に変でもないし仲の良い姉弟感をイメージした結果、これに決めた。

 それを僕が口に出して提案した途端、お姉さんは誰かに殴られたような声を出しながらいきなり壁に倒れた。

 

 突然の出来事に僕は戸惑う他なく、どうしたのかと心配になってお姉さんの方へと駆け寄る。

 何処か具合でも悪いのかと様々な考えが頭を巡る中、いきなり人が倒れる所に遭遇したことなんて無いため、慌てようを隠せずにはいられなかった。

 だが、どうやら具合が悪いわけではないようで、お姉さんの表情は心なしか満足げなものに見える。

 

 そして、お姉さんは気怠そうに身体を起こした。

 僕は具合が悪いのかと問いかけたが、そういう訳ではないと言葉を返される。

 じゃあ、何で倒れたのかと疑問に思ったのだが、それより呼び名に対する返事の方が気になってしまい、答えを求めるよう僕が口にすると、お姉さんは「うん、大丈夫」と言葉を返した。

 

 その表情は相変わらず変わっていない。

 やっぱりよく思われていないのかと不安に駆られ、僕はつい鋭い言葉を投げてしまった。

 距離を縮めるつもりが、疑うような怪訝な表情を作ってしまっては本末転倒だろう。

 しかし、そんな先程から感情を見せずにいたお姉さんの口が開いた。

 

「全然そんなこと思ってないよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、今日一番のはっきりとした声音に思わず身体が震えた。

 目の前にいるお姉さんの表情が少し変わったように見えたが、それは瞬時に元に戻る。

 

「ほら見て!この顔!凄く嬉しそうだから!」

 

 そう言いながら自身の顔を指差すお姉さんの表情は変わらず無表情。

 全然変わっていないと口にしようとするが、それを遮ってお姉さんは更に言葉を並べた。

 身振り手振りを入れて喋り、そんな姿が何処か面白くて笑ってしまう。

 

「ふふっ、何だか面白い人ですね。美咲姉さんは」

 

 この人は僕を嫌っていた訳じゃないんだ。無表情だけど頑張って自分の気持ちを伝えようとしてくれた。

 それを理解した時、ホッとすると同時に笑みが溢れてしまう。

 新しい家族、初めは凄い不安だった。

 だけど、この人が、美咲姉さんが僕の姉ということが、これからの生活に期待を生み出してくれる。

 

 そんな風に思っていると、僕の部屋になる場所へ着いたようで、美咲姉さんは言葉を詰まらせていた。

 きっと、僕を何て呼べば良いのか考えているのだろう。

 別に僕の方が年下なんだから呼び捨てで良いだろうに。

 だが、美咲姉さんは僕から視線を逸らし、深く考え込むようにしていた。

 

 そんな姿がまた面白くて‥‥‥‥僕が思ってた印象とは違い、美咲姉さんはクールというより優しくて遠慮しがちな人だなと感じる。

 僕が呼び捨てで良いと告げると、それを拒否して君付けを提案する。

 やはり遠慮しているのかと思いながら、ちょっと弄ってみると機械のような途切れ途切れな声になる。

 

 やっぱり面白い。表情から感情の起伏は分からないけど、行動には結構出てる気がする。

 これは結構揶揄い甲斐がありそう。

 

 そんな状況が居た堪れなくなったのか、美咲姉さんはそそくさと自分の部屋と戻っていった。

 そんな後ろ姿を見送り、僕も新しい自分の部屋の中へと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の中は閑散としていて、物は何もない。

 引越し作業もまだだし当たり前だけど、物が無いと寂しく見えた。

 カーテンは付いており、僕はわざと電気を付けずに暗い中で部屋の真ん中に寝転がる。

 

 フローリングの冷たさが手足を伝って肌で感じられた。

 ふと、そこで新しいお母さん、朱莉さんが頭の中に浮かんでくる。

 思えば、あの明るい表情や性格が亡くなったお母さんにとても似ていた。

 もしかしたらお父さんは、朱莉さんのそういうお母さんに似ているところに惹かれたのかもしれない。

 

 一人で寂しげな場所にいると、どうもお母さんを亡くした日のことを思い出してしまう。

 当時僕は十二歳の小学生。感情の起伏は当然あったし、多感なじきであるからこそ酷く悲しんだ。

 十二年一緒に生活して、前世の記憶に引っ張られながらも改めて優しいお母さんだったと思う。

 お父さんとの夫婦仲も良かったし、とても暖かい家庭だった。

 

 別に新しいお母さんを否定する気はない。

 いつまでも引きずってはお父さんを不安にさせる要素だし、アイドルの活動にも支障をきたす。

 完全に忘れる訳にはいかないけど、割り切るしかない。

 それが苦渋でも、耐えるしかないのだ。

 

「んっ‥‥‥」

 

 突如、ポケットの中から振動が伝わる。

 僕は手を伸ばし、ポケットの中からスマホを取った。

 そこには、一件の通知。相手はお父さんからだ。

 

『私と朱莉さんは少し家を出るから、お昼は二人で何か買って済ませてくれ。何か作りたい場合はキッチンを好きに使って良いらしいぞ。お金は机の上に置いてあるからよろしく』

 

「あれ、もうそんな時間か」

 

 スマホの時間を見ると、現在の時刻は十二時を過ぎようとしていた。

 意外と時間が過ぎるのは早いなと感じながら、昼食をどうしようかと僕は一度考える。

 まあ、買って済ませてくれと言っているからには、作るとしても材料を買わなければならないだろう。

 

 僕的には買っても良いし作っても良いしどちらでも構わない。

 それなら、美咲姉さんの意見に合わせれば良いかな。

 

 そう結論付けた僕は美咲姉さんに聞きに行こうと部屋を出て隣の部屋の目の前に立つ。

 流石にノックはした方が良いと思い、軽く扉を叩いた。

 

 すると、中から「はい」と返事が聞こえ、僕は扉を前に押した。

 

「すみません、そろそろお昼ですし、何か食べ‥‥よう‥‥と‥‥‥‥」

 

 部屋に入った瞬間、僕は目の前の光景に思わず目を丸くした。

 至る所に貼られたポスター。数多くの雑誌、水色のペンライト。言っては悪いが、まさにオタクといった部屋の内装。見た感じ、アイドルの物だろう。

 そんな中、美咲姉さんはベッドに寝転がっていた。

 

 そう言えば、美咲姉さんはアイドルには興味が無いと言っていた筈だけど、ここだけならまあ、意外だなとそれだけで終わる。

 趣味を口にするのが恥ずかしかったのかもしれないし、そして趣味は人それぞれ。別に否定はしない。

 

 ‥‥‥‥でもね。

 

 ご丁寧にハートマークと『周音』という文字が施されたペンライト。

 部屋を大きく彩るそれら全ては、僕に関連する物だった。

 中でも、一際大きく目立っていた()()に、僕は視線を向ける。

 それは、その一枚は。

 

 僕は顔を引き攣らせながら、何とか笑顔を作って言葉をかけた。

 

「部屋のポスター‥‥‥凄いですね‥‥‥」

 

 

 それ、僕のポスターですよね。

 

 

 つまり、何が言いたいのかというと————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美咲姉さん、僕推しですやん‥‥‥‥‥。

 

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