書いては見たものの、多分既出っぽいなと思ったり。
とりあえずこれで無印ヒロインコンプです。

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空門姉妹誕生日SS~どうか幸せな夢を~

 夏の終わりの少し冷たい風に吹かれながら、俺は一人島へと向かう。

 最高だと思えた夏休みを過ごした、あの島、鳥白島へ。

 そこに待つ人がいるから、大切な人たちがいるから。

 

 平日だろうと構わない。授業をさぼったって今日だけはと俺は家を飛び出て電車に乗り、すぐさま船に揺られた。

 そうして、俺は島に舞い降りる。

 

---

 

「なんだ、鷹原じゃないか」

 

 午後三時。俺が島についた船のもう一つ後の船の乗客から声が聞こえた。振り返ると薄緑の髪をしたちんまい少女が立っている。

 

「おお、のみき」

 

「久しぶりだな・・・と言いたいけど、確か先週の週末も来てたか。というより、今日は平日だぞ? なんでこんな時間にここにいるんだ」

 

「えーっと、まあ・・・」

 

 俺が言葉を濁したことで、それが何を指し示しているかのみきは理解したようだった。小さくため息をついて、やれやれと首を横に振る。

 

「不良の癖はまだ抜けきっていないか?」

 

「反応に困る」

 

「冗談だ。・・・きっと、それくらいの行動力がある方があいつも喜ぶだろう」

 

 果たして本当に喜んでもらえるかどうかは知らないが、そこはまあ置いておくことにする。それから今度はふっと一つ小さく息をついて、のみきは微笑んだ。

 

「まあ、ここで立ち話をするのもなんだ。早く行ってやれ。どうせ今日は金曜だ。泊っていくんだろう?」

 

「ああ、まあ・・・」

 

「なら尚更だな。鷹原の滞在時間はともかく、今日という特別な日はもう限りがあるんだからな」

 

「分かった。じゃあ、また後でな」

 

「ああ」

 

 腕を組み、満足げな表情を浮かべるのみきを後目に、俺は街の方へと足を進めた。

 その足はどんどん速さを増していく。一刻も早く会いたいという気持ちが前面に現れていた。

 進む。進む。足は止まることなく、心はさらに加速していく。

 気が付けば走り出していた。無駄に動いても汗をかくだけだと脳では分かっていながら、本能はそれを受け付けない。

 

 そして俺の身体は、少し古ぼけた木造の診療所へたどり着いた。たまたま外に出ていた看護師の人に軽く会釈をして、俺は建物の中へと入る。

 短い廊下の一番右奥、音を立てて扉を開く。

 

 そこに、俺の愛する眠り姫がいた。

 

「・・・よっ、来たぞ。蒼」

 

 返事のないベッドへいつも交わしていたような挨拶を飛ばして、俺はベッドの横の椅子へ腰かける。部屋の中は二人きりだった。どうやら藍はいないらしい。

 この夏の終わり、蒼は目覚めない長い眠りについてしまった。どれだけ長くなるかは俺次第。ただ少なくとも来年の夏までは絶対に目覚めることはない。そんな眠り。

 あの夏、無理に七影蝶を探したばかりに・・・と後悔はしないでおく。現にあの夏の頑張りのおかげで、長い間眠ったままでいた蒼の姉である藍を目覚めさせることが出来たのだから。なんて、代わりに寝たきりになるのは元も子もないけど。

 

 けど、それが蒼のしたかったことだ。俺が何か言えた質じゃない。

 そんなことより今話すべきことは今の事。そうやって話をしてほしいと願ったのは蒼だから。

 

 俺は椅子に腰掛け直してゆっくりと話を始めた。

 

「部活やめた話・・・は前したよな。じゃあその続きからやるか。俺さ、この間からバイト始めたんだよ。平日に週四。自分でもどうかと思うくらい、結構頑張ってるよ」

 

 おまけに変に肉体を使う労働だから、筋肉痛なんてのもちょっと垣間見えている。運動部だったのが信じられないくらいだ。

 

「でも、あんまり苦しいとかしんどいとか思わないんだよな。仕事も慣れてしまえば楽しいし、先輩はみんないい人ばかりでさ。・・・なんだろうな、期待されるのが怖くて誰も信じれなかったけど、きっと俺の周りにはいい人がたくさんいたんだなって、今ならそう思えるよ」

 

 だからこそ、逃げてばかりだったあの頃の自分が嫌になる。どれだけ最悪な人間だったんだろうと今でも思うことがある。

 それでも、あの日々があったからこそこの出会いがあったのなら、それもまあ、いっかと思う。

 

 そんなことを話していると、部屋のドアがガラリと開いた。どうやらリハビリを終えて藍が帰ってきたらしい。

 

「鷹原さん、来てたんですか」

 

「よっ、藍」

 

 少し目を丸くして藍が俺に寄ってくる。きっと何の変哲もない平日に俺がここにいることが驚きなのだろう。しかし藍はのみきとは違い、それ以上問い詰めることはしなかった。

 

「こんな昼間から蒼ちゃんを狙おうなんて」

 

「ちげーよ、寝込み襲うほど俺が甲斐性あるように見えないだろ」

 

「そうですね」

 

 カラッと笑って、藍は自分のベッドへと戻る。そのまま目線だけ俺と蒼の方に向けて、藍は続ける。

 

「それで、蒼ちゃんはどうですか?」

 

「今日も可愛い」

 

「そんなこと知ってます」

 

「何も変化はないよ。七影蝶の影響がある以上、多分来年の夏までは起きない。そこはもう割り切ってるんだ」

 

「そう、ですか・・・」

 

「そんなことより」

 

 俺が今日蒼に伝えたかった言葉は、そこにいる藍にも当てはまることである。何せ二人は双子なのだから。

 

「藍、今日、誕生日だろ? おめでとう」

 

「えっ? ああ、はい。まあ・・・」

 

 蒼の彼氏である人間から自分にそのような言葉がかけられると思っていなかったのか、藍は少し目を丸くして驚いていた。藍はもう少し自分を労わってもいいと思う。

 

「それを伝えるために、今日はきたからな。蒼に、藍に」

 

「私の事なんて、後回しでいいのに」

 

 少し俯いて藍が呟く。俺は心の底からそれを咎めた。

 

「なあ、藍。藍はもっと自分を大切にしてやってもいいと思うんだ。というより、蒼もきっとそうして欲しいと思ってるから」

 

「そう、ですか」

 

「ああ。そのほうがきっと、蒼にとって自慢の姉になれると思うぞ」

 

「・・・少々業腹ですが、その口車に乗りましょう」

 

 藍は硬派な態度を見せながらも、俺の言葉に首肯した。

 それを確認して俺はもう一度蒼に向き直る。

 

「・・・と言うわけで、遅れたな。蒼、誕生日おめでとう。・・・本当に」

 

 告げて、俺はその頬に触れる。藍は見ないふりをしていてくれた。彼氏なんだから、これくらいは許してほしい。

 俺が手を放すと、背中越しに声が聞こえた。 

 

「鷹原さん」

 

「なんだ?」

 

「これからもずっと蒼ちゃんの事、よろしくお願いします」

 

「当たり前だろ」

 

 胸を張って即答する。蒼のことが好きなんだ。それくらい、どうってことない。

 その一言が俺の口から発せられた時、蒼の口がニヘっと動いた。

 

「あ、蒼ちゃん笑った」

 

「笑ってるな。・・・幸せな夢、見てるといいな」

 

「そうですね」

 

 その気持ちよさそうな笑顔を見るだけで、俺は幸せになる。

 どれだけ長い眠りになるか分からないけど、この笑顔のために頑張ろうと思える。きっといつか、長い眠りから目覚めさせるから、どうかその日まで。

 

 

 

 だから今は、その幸せな夢のままで。

 蒼、おやすみ。・・・お誕生日おめでとう。

 

 

 




ベタ過ぎますね。GOサインは出しましたが、なんかしっくりくるような来ないような・・・。
でも、この空白の期間は結構好きです。人気高そうなので展開的に既出っぽ装なのが難点ですが。
といったところで、今回はこの辺で失礼します。

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