夜明けの狩人   作:猫又提督

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前回から10日経ちましたね


第10話

あれから数か月たった。意外にも彼女の生活は何も変わらなかった。だが周りは賑やかになったし窓から見える艦娘の量も増えた。あの時にここではない飛行機が一機ずっと彼女を付け回したことは誰にも言わなかった。そのせいでここの立場が危うくなったりしているような様子はない。

あの日を過ぎてから彼女に接触してくることが極端に少なくなった。まずもってあれから提督が一度も彼女の前に姿を見せないし、もっと言えば見せるのは吹雪だけであとは叢雲がたまに来るぐらいだ。唯一の楽しみは鳴子との世間話だけになってしまった。

 

「……。」

 

うるさい。にぎやかになったのは恐らく最近になってこの建物近くまで艦娘が来るようになったからだ。これまたかなり騒がしい。なんだ、広場か公園にでもなったのか。おかげで本もまともに読めない。

 

「暁さん。こんにちは。」

「あ、はーい。」

 

鳴子だ。鳴子と会話すれば多少はこのイライラもおさまるかもしれない。今日は部屋に招いて話をすることにした。

 

「こんにちは。最近は賑やかになってなかなか静かに過ごせないですね。」

「ええ、なんでも近くに新しい宿舎を建てるらしくて。」

「え、初耳なんですが…。」

 

現状、彼女はこうして鳴子から話を聞いたり新聞を読ませてもらうなどしないと外の状況が全くつかめない。

それにしても、新しい宿舎。通りで最近艦娘の声以上に何やら大きな音がすると思った。

 

「まあ、最近決まったようですしね。その割には着工がかなり早い気もしますが。」

「…ここどうなるんでしょうね。」

「あー、残念ながらそこは私にもまだわからなくて。」

 

提督は彼女をどうするつもりなのか。彼女の存在を一部の艦娘を覗いて秘密にするといい、ここなら滅多に艦娘も来ないから隠しやすいと彼は言っていた。秘密にするというのはまだ守っているが、近いうちに破られそうな気がする。…彼女としてはどっちでもいいのだから見つかったのなら見つかったでその場で存在をばらすとか暴れるとかすればいい。

 

 

 

夜になってやっと静かになった。流石に工事を一晩中やるなんて言う蛮行には走らなかったようだ。今夜も狩りに行こうと窓に手をかけたが…気が変わった。たまには普通に玄関から出よう。階段を降り玄関をくぐる。ドアがガラス張りのため中からでも外の様子が分かる。数か月前まで見えていたドアの向こうの景色は幕のようなものに覆われた建築物ですっかり見えなくなっている。どうやら道も新しくなっているようだ。アスファルトが黒い。このまま裏手に回って降りる。

 

「…?」

 

裏手に行こうとすると声が聞こえた。何を言ってるのかはわからないが複数人いるようだ。ひとまず深海棲艦ではなさそうなので警戒はせず、ただゆっくり行く。壁に沿いながら建物の側面に回る。いる。艦娘が4人。

 

「…にい…?」

「きいた……にいる…。」

 

ひそひそと話している。あたりは暗いし4人とも向かい合って話しているので誰なのかはわからないが背は低い。駆逐艦だ。ふと、顔をあげた一人が目が合った。

 

「あっ…。」

「どうしたのいかづ…あ。」

 

全員が同じ反応をした。彼女は4人を見て凍り付いた。まず目についたのが明るいショート髪の艦娘。昔目の前で死んだ妹の一人だった。それから順々に目を移し、電、響…そして自分。彼女と同じ暁がいるとは前から知っていた。しかし、いざ会うと少し混乱した。そのうえ、死んだ妹たちまでこうして生きて出会うとさらに混乱した。取り乱しそうになるのをこらえて黙るが、それは彼女たちも一緒なのかお互いだんまりになって気まずい時間が流れる。

 

「…ね、ね?やっぱりいたでしょ?」

 

気まずい空気を破ったのは自分…暁だった。

 

「…珍しいね。暁の話が嘘じゃないってのは。」

「ちょっと!?どういう意味よ、それ!」

「ねえ、あなたは誰なの?どうしてここにいるの?ここで何をしているの?その服は何なの?」

「はわわわわ。い、雷ちゃん。一度に質問しすぎなのですよ。」

 

一斉に話し出した。暁たちの会話を聞いていると昔の自分を思い出す。それで十分混乱も解けた。

 

「あー…。」

 

彼女が何か話そうと口を開けると暁たちは急に黙って彼女を見つめる。どうしようか、自分は暁だと搬送か…いいか。別に困ることはない。

 

「私は…暁よ。あなたと同じ。」

「え!?私と同じ?」

Ничего себе(これは驚いた)。暁とはあまり似てないようだけど?」

「こうすればわかるかしら。」

 

帽子とマスクの布を降ろす。

 

「本当だ。暁にそっくり!」

「そっくりなのです!」

「こっちの暁よりもずっと落ち着いてる感じだね。」

「なによそれ!私がいつも落ち着いてないみたいじゃない?」

 

なんだか昔を思い出す。暁なんかは本当に当時の彼女そっくりであるし、響たちもそうだ。艦娘量産計画はどうやら成功したようだ。

 

「ねえ。あなたたちは何でこんなところにいるのかしら?」

「うぇ!?そ、それはぁ、そのぉ。」

「噂だよ。そんなにしどろもどろになるようなことでもないだろう。」

「噂?」

「そう!ここにお化けが出るっていう噂よ。あなたは見てない?」

「お化け…?いや、見てないわね。どんなお化けなの?」

「えっと、角が生えてて、顔がなくて、海の上を艤装なしで走る化け物なのです。」

 

ふむ。角が生えてて、顔がなくて、艤装なしで……。もしかして彼女のことか。ちょっと帽子を手に取ってみる。確かに羽の部分があって角のように見えなくもない。顔がない。マスクか?帽子をかぶり布をあげれば顔は見えなくなる。艤装なしで走るというのは言うまでもなく、彼女はそのまま海上を歩くことが可能だ。

 

「ほ、ほかに何か噂とかは…?」

「潜水艦の人たちがたまに月向かって変なポーズをしてる人がいるって言うのを聞いたことがあるわ。」

 

自分だ。それは明らかに彼女だ。彼女自身だ。月に向かって交信するのは狩人のみ。そしてこの場にいる狩人は彼女のみ。そう、それつまりそのお化けというのは彼女であった。しまった完全な不注意だ。潜水艦のことはすっかり抜けていた。そうか、今の時代は潜水艦もいるのか。

 

「あー、たぶんそれ私ね。」

「え、あなたがお化け?」

「まあ、その噂通りならね。」

「なんだ。やっぱりお化けなんていなかったじゃない!心配して損したわ!」

「怖くて毎晩トイレに私を起こしていたのに何を言う。」

「ちょ、それは言わない約束でしょ!?」

「はて?」

「とぼけないでー!」

「と、ともかくこれで安心なのです。鎮守府七不思議のうちの一つが解決したのです。」

「七不思議?私のこと以外にも何かあるの?」

 

その七不思議とやら聞いてみると案外普通なものが多かったがうち一つが気になった。

 

「たくさんの腕がある巨大な化け物?」

「そうよ。と言っても私たち4人しか見たことないから非公式だけどね。」

「そもそも七不思議自体、公式とかそういうものがあるとは思わないけどね。」

「ちょっと!なんで響はいつも一言余計なの!?」

「まあまあ、落ち着いて…その化け物はあなたたちにしか見えないって言ったけど本当?」

「はいなのです。今日も一瞬だけ見えたのです。みんな信じてくれないのです……。」

「その…化け物って顔が網目みたいになってない?」

「言われてみれば…そうかも?暁はどう?」

「え?うーん?そうだったかしら?そうだったような気もするし、そうじゃなかった気も…。」

「それっぽい輪郭が見えるだけだから、はっきりとは見えないんだ。」

「そう…。じゃあ、どこで見たとかは?」

「あそこなのです。何時もあそこで。」

 

電が指したのは今はもう見えないが、いつもアメンドーズが張り付いている場所だ。まさかこの四人にはアメンドーズが見えるというのか。驚いた。狩人の素質がある。

 

「…ありがとう。さ、今日はもう帰ったほうがいいわ。もうかなり遅いわよ。」

「それもそうね。明日もまた会えるかしら?」

「構わないわよ。どうせ私はずっとここにいるから。あ、私のことは誰にも話しちゃだめよ。」

「なんで?」

「私の存在は一応、秘匿になってるから。私のことを知っているのは提督と…あとは艦娘が数人よ。吹雪とか、叢雲とか…。」

「うわ、駆逐艦のトップじゃない!」

「これは…触れてはいけない危険なにおいがするね。」

「分かってもらえたかしら?」

「はいなのです!お口チャックなのです。」

「よろしい。じゃあ、また明日。私はここの二階のこっち側にいるから何なら扉叩いてもらえば出るわよ。」

「分かったわ!じゃあ、また明日ね、もう一人の暁!」

 

結局今日はどこにも行けなかったが、その代わり面白い出会いをした。もう一人の、自分に出会った。そして、彼女たちには上位者が見えている。面白い!

 

 

今日、とうとう誰もその扉をたたくことがなかった。見放されたか。もういらないのか。

 

「…餓死でもさせる気かしらねぇ。」

 

飯は来ないが、部屋を出るなと言われているからそのままなにも来ず…という感じだろうか。生憎彼女に飢えというものはないので全くダメージはないし、むしろ自由になったともいえよう。

 

「暇ねぇ…。」

 

久々にヤーナムでも行こうか。本も大方呼んでしまったし何か面白そうな本を探しに行こう。ヤーナムってどこに本あるんだろうか?…ビルゲンワース…?

 

「行ってから考えればいいわね。」

 

そうだ。今日も鳴子が訪ねてくるだろうし張り紙の一つでもしといたほうがよかろう。あの人にヤーナムと言っても通じるだろうか。…いや、あの人のことだ察してくれるだろう。

物置に入り灯りから狩人の夢へ、そこからビルゲンワースへ向かう。久々に来たが一気に辛気臭くなった。それにじめじめしている。ハエを張っ倒しながら中に入る。昔は誰かいたが今は無人だ。本が散らばっているので一つ試しにとってみる。

 

「上位者…地下の墓に……。」

 

これは上位者についてつらつらと書いてあるらしい。とりあえず数ページめくっていい感じのやつだけ持って帰ろう。せっかくだし一冊ぐらいはここで読んでいこうか。

ビルゲンワースの二階。外につながる扉。くぐると正面に月が見え今はもう誰も座っていない椅子がある。彼女はその椅子に座り一つの懐中時計を出す。これはこちらとは違う世界。鎮守府がある世界の時間を示したものだ。恐らく暁たちがまた訪ねてくるだろうから少し早めに、夕方には戻ったほうがいいだろう。

本を一冊開いて読んでみる。やはり上位者のことについてより詳しく書いてある本のようだ。地下の墓にその亡骸が眠っているだの、宇宙からきているだの。…おや。これはアメンドーズのことだろうか。……秘匿者。監視者。アメンドーズがいるところには何かしらの秘密があるようだ。奴らはそれをほかの存在から隠し、また荒らされないように監視していると。たしか、鎮守府にもアメンドーズがいたな。あそこに何かあるんだろうか?

案外こういう本も面白いものだ。今後、上位者狩りをするのに役立つかもしれないし。こんどヤーナム観光でもしようか。もしかしたら面白い発見があるかもしれない。協会とか。

さて、もう一冊。これは…上位者の作り方……だろうか?上位者って作れるものなのだろうか。そういえば確かいたな。上位者かなんかを作ろうとしていたところ。なんといったか…そうだ。メンシス学派だ。あそこはなんか変な生き物をたくさん作ってたし、ヤハグルにいたあの獣…獣?はたぶん上位者だろう。啓蒙手に入れたし、獣かどうかはあやしいし、近くにミコラーシュのミイラがあったし。

というか、なんでビルゲンワースにメンシス学派の本があるのだろうか。つながっていたのか…?わからん。まあ、いっか。別に本が面白ければそれでいい。

 

 

そろそろいい時間かもしれない。にしても、この椅子の座り心地は大したものだ。なんとなくこの椅子の先、湖の真ん前までいく。今はもう何の輝きも持っていない。…そういや、あの蜘蛛の頭とアメンドーズの頭は似てたな。ヤーナムで『湖の蜘蛛が真実を隠してる』とかかれたメモを見た記憶がある。だからどうしたちうわけではないのだが、アメンドーズが守護者であり秘匿者であり監視者であるというという記述と鎮守府にいたアメンドーズが少し気になる。暁たちあたりに何か聞いてみたらわかるだろうか。今日試しに聞いてみよう。




ブラボの世界観は面白いのでぜひともお話に入れたいのですが何分複雑なのでなんとも組み込みにくい…。ちょっと無理やり感あるかもですがご容赦願いたい。


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