※今回ご都合主義が発動します。
「ここで見ててね。」
「ここで?何もいないと思うけど?」
「いいえ。来る…ほら。」
海からイ級が飛び出す。今ここでなます切りにしてもいいがそれでは暁たちの服が汚れてしまうだろう。ここはひとつ、受け流すようにして投げ飛ばす。ね?と4人のほうを見ると、唖然として吹っ飛ばされたイ級を見ていた。
「この程度で唖然とされては困るわ。さ、私の近くにいると服が汚れちゃうからもう少し距離を取って見てて?」
4人が十分に距離を取ると、彼女の手には武器が握られる。さっきと同じように飛び込んできたイ級の腹を袈裟斬りにする。腹を裂かれたイ級は彼女に大量の体液をぶちまけ海中に没していった。
気配。またイ級が飛び出してきた。いや、少し違う。イ級ではなくロ級だった。しかし、狩る対象であることに違いはない。仕掛けを発動させ鉈に変える。腹を見せたロ級に刃を滑らせ綺麗に裂いていき、装甲で引っかかる。彼女の持つ仕掛け武器は、例え上使者であろうと簡単に断つ。深海棲艦の装甲など話にならない。しかし、それは武器の性能もさながら、彼女の技量に基づくところが多い。ゆえに、少しでも角度が甘ければその刃を通すことができない。彼女はコレを逆手に取り刃を装甲で引っ掛けて、振り下ろしてロ級を海面にたたきつけた。当然この程度で深海棲艦は沈まない。彼女は手早く聖剣に持ち替え頭のあたりに突き刺す。ロ級は痙攣し、それもすぐに収まり静かに沈んでいった。
後ろから暁たちに感嘆の声が聞こえる。しかし、彼女はその声になんという反応をすることなく思案にふけっていた。というのも、ここ最近さっきみたいに考えもなしに、まるで理性をなくしたように突撃する駆逐艦や軽巡をよく見る。なんなら、数日前からはそれしか見なくなっていた。なぜだろうと考えたときに、数か月前に試験した兵器が思い浮かんだ。さっきのイ級やロ級の挙動はあの時とそっくりだった。しかし、今回彼女にはあの時聞こえた悪趣味な悲鳴のような梅井期越えのようなものは一切聞こえない。ならば違うのか。…あれから数か月たっている。もしかしたら改良され地区過程でその声がより深海棲艦だけに伝わるようになったのかもしれない。メンシス学派の本を読んだせいでいろいろな偏見が思い付くが、たどり着いた結果としてやはり人口の上位者を、それも深海棲艦を素材にして作っている可能性がある。
「すっごいわ!あなたあんなのできるのね!あれ?ヨアケ?」
「ん、あ、え、ええ。そうよ。でも。あなた達もきっとできるようになるわ。」
「え、ほんと!?やった!そうしたらきっと司令官も喜んでくれるわ。」
「でも、服が大変なことになりそうだけどね。」
響が彼女のことを怪訝な目で見てくる。それもそうだ。彼女の体は深海棲艦の体液でまみれている。色こそあまり目立ってないが、その分鈍い光沢は見えるし何よりも深海棲艦独特のにおいがより一層際立っている。つまり臭い。彼女は特に気にするようなことでもないのだが、この4人はそうではないらしい。
「魚臭いのです。」
「む、そんなに匂うかしら。」
自分でも嗅いで見るが、そこまで悪いにおいではないと思う。
「さ、どうかしら。あなた達も狩人になる気はない?」
「うーん。面白そうではあるけどちょっとにおいとか…。」
「それに、電はあんなに機敏には動けないのです…。」
「大丈夫よ。匂いはいずれ気にならなくなるし、狩人だってみんながみんな最初から機敏に動けるわけではないわ。」
その時、突如海から影が飛び出す。その影はヨアケ目掛けてその手に持っているものを振りかざそうとする。その突然の出来事に4人は表情を変えることすらできない。しかし、彼女も4人に向けた優しい笑顔のままその飛んできた影目掛けエヴェリンを撃った。その、衝撃で影はみっともなくひっくり返った。
「あなた達だってこんなことできるようになるわ。……ねぇ。今わたし、大事なお話してたんだけど分からなかったかしら。」
丁度いい見せ場を作ってくれたとは言え、話を邪魔された。これすなわち万死に値する。どうやらこの深海棲艦は軽巡らしい。先ほど同様理性はないように思うが、心なしか恐怖でおののいているようにも見える。しかし、彼女にはそんなことは関係ない。無慈悲になぶり殺す。これは狩りとしてではなくただの八つ当たりだ。殴り続けているうちに相手の皮膚は破れ、殴っていた音もいずれミンチに手を突っ込んだような音に変わる。殴るたびに派手にしぶきが上がる。
「…ふう。さて、どうかしら?やる気になってくれた?」
「あ、いや。ちょっとそのー私には…。」
「電もちょっと…。」
「あの光景を見ると正直引くね。」
「ちょっと響!?」
「なんで言っちゃうのです!?」
「?思ったことは正直に言うべきだろう?」
「だとしても正直すぎなのです!」
「そうよ!少しはオブラートに包んであげなきゃ。」
引かれてしまったし、ちょっとその言葉はかえって逆効果のような気がする。
「私やりたい!」
その声は意外な人物から発せられた。
「ほ、本当かい。暁。」
「ええ!あれこそレディーよ!」
「……ええぇぇ。」
「それはないと思うのです。」
それは自分も思う。が、暁が乗っかるのは予想できた。自分をもとにして作られたコピー品だ。趣味嗜好が同じなのは当然だ。…成長した今だから言えるが、当時の自分はわけもわからずレディー、レディーと連呼していたものだ。こうして暁を見ると当時自分がどう思われていたのかよくわかる。…クッソ恥ずかしい。
「しょうがない。暁がやるなら私もなろう。保護者が必要だろう?」
「ちょ、ほ、保護者ってどういうことよ!」
「えー、二人がやるなら私もなろうかしら。」
「み、みんながやるなら私も…。」
ふむふむ。ネームシップの提案には基本的に賛同するというプログラムもちゃんと機能しているらしい。艦娘量産化計画は成功していたみたいだ。これがもっと早く実行されていたら自分たちが死ぬこともなかっただろうに。…いや?死ななかったらヤーナムにはたどり着いていなかった。やっぱり死ななきゃだめだ。いやそれでも響が死んでしまったのは…でもやっぱり…やめよう。うん。過去は過去、今は今だ。
「じゃあ、早速戻ってヤーナムに行きましょうか。」
「やーなむ?」
「そうよ。狩人になるにはそこで狩りをしなきゃ。あそこで狩りを完了させるのが狩人よ。」
「…あ、明日私達遠征じゃないっけ。」
「え。」
「…そうだね。明日は遠征に行かないと。」
「数日コースなのです。」
「えー、じゃあそのやーなむに行くのは…。」
「遠征が終わるまでお預けだね。」
「えー…はあ、ごめんねヨアケ。私達明日遠征なの。」
「…あーうん。しょうがないものね。遠征は、うん。」
すっかりやる気が削がれてしまった。今日は狩りにも気が入らない。それに4人を返さないと。仕方なく血まみれな彼女は4人を引き連れて鎮守府に帰っていった。
鎮守府に帰っていくその背中は明らかに落ち込んでいた。
翌朝、彼女は一人で部屋の中にいた。本来なら今頃ヤーナムで暁たちとキャッキャウフフな狩人ライフを送っていたはずだが、あいにく彼女たちは今日から数日間遠征に出かけておりいないのだ。丁度、ここの窓から彼女たちが出発していく様子も見えた。
「……。」
何もすることがない。本でも読めばいいし何ならヤーナムでもめぐって暇つぶしすればいいのだが不思議とやる気が起きない。結局今日も朝にだれも来ることはなかったし。
「…………」
「暇そうですね?」
「うぉ!?」
珍しくベッドの上で天井を眺めていると、突然目の前に顔が現れた。
「な、鳴子さん?」
「はい、鳴子です。」
「あ、あれ。どうして。」
「扉をたたいたんですけど反応がなかったもので、鍵も開いていたので失礼ながらお邪魔させてもらいました。」
「あ、す、すみません。」
彼女に限って誰かの気配に気づかないで接近されるというのはありえないことなのだが、この上なく暇だったので注意力が散漫になっていたのかもしれない。相手が鳴子であったというのもあるかもしれないが。
「どうしましたか?暁さんらしくないですよ?」
「いやぁ、ちょっと予定がつぶれてしまったので暇していたんです。」
「あー、なるほど。あ、それじゃあ今時間ありますよね?」
「え、あ、まあ。3日後までは。」
暁たちからはあの後遠征が3日かかると聞いた。
「十分です。ちょっと用事に付き合ってくれませんか。」
「え、まあ。いいですけど。」
「よかった。丁度人手が欲しかったんですよ。私の部屋まで来てくれますか?」
「わ、分かりました。」
鳴子に連れられて彼女の部屋にむかう。何気に鳴子の部屋に入るのは初めてだ。
「あ、そうだ。一つ暁さんに言っておかないと……大丈夫かな?」
「え、なんですか?」
「あー、いや。ちなみに文明の利器的な者って持ってますか?」
「文明の…いや、現代ものは特に…しいて言うならこれとか…?」
彼女は、エヴェリンを鳴子に見せた。
「うーん…これぐらいなら問題はないかな。最悪私が何とかすればいいか。すいません、じゃあ行きましょうか。」
「あ、はい。」
鳴子が扉を開けるとそこには部屋が…というわけではなく先が全く見えない階段だった。明らかに空間がおかしいがもはや彼女はその程度では驚かない。
「足元暗いので気を付けてくださいね。」
「はい。」
かなり暗い。太陽の光は窓から十分入っているはずだが扉から先はまるで別空間のように光が急に届いてない。携帯ランタンぐらいはつけておくか。
階段が続く。
「これ、どれくらい続くんですか。」
「すぐですよ。ほら。」
鳴子の言う通り、下のほうにぼんやりと光が見えてきた。なんとなく後ろを見ると上に見えるはずの外の風景は全くなく闇が広がっていた。階段を下りた先には洞窟が広がっていた。謎の人が二人いる。彼女の姿を見て、鳴子の姿を見ると姿勢を正した。うち一人が服を持ってきて鳴子に渡した。
「あい、お疲れ。あ、彼女のはいいかな。あの服装なら別に大丈夫だよ。」
鳴子はその場で着替え深いローブをまとった。顔の上半分が見えなくなったがそれだけで一気に不気味感が増した感じがする。
鳴子が着替えるともう一人が案内をするように洞窟の中を先行し始めた。鳴子の後ろに彼女がついていき、さらにその後ろをもう一人がついていく。
階段の前まで来たとき先行していた一人が横にそれた。
「うむ。案内ご苦労。お前さんも頑張れよ。さ、暁さんここからも暗いですし今度は階段も長いですから気を付けて。」
「はい。」
鳴子の言う通り、さっきと同じように階段は暗く、彼女が携帯ランタンで照らしているところ以外は全く何も見えない。互いに無言のまま時間の流れすら全く感じないうちにふと鳴子がまっすぐに進みだした。そのあたりに彼女が至ると階段が終わっておりまっすぐな道となる。なぜか周りはこんなにも暗いのに鳴子の姿だけははっきりと見えるのだが、さすがに暗すぎたので松明をつける。すぐに大きな扉が現れた。鳴子はその扉を何のためらいもなくおす。床をこすってうごく扉の荘厳な音がなり、その先の風景が見える。
森だ。その入り口の四方を森が取り囲んでいる。扉をまたいで後ろを見ると、扉はあるがその扉は岩についておりその岩も上には伸びず鎌倉のような形をしていた。あの階段は独立した人るの空間なのだろう。
「さあ、着きました。本当はここから北のほうに行かないといけないんですがここの時間はあっちとは違ってあっちよりも進みが早いんです。大体…場合にもよりますけどあっちの一日でこちらの一週間、長いと数十年になります。
「そんなに…。」
「早い話。こっちでは時間があっちよりもたっぷりありますから少しぐらい遊んでもいいですよ。私の用事もそこまで急ぐようなものでもありませんし。この先に町があるんです。この世界、
「なるほどそれは面白そうですね。」
鳴子がウキウキで森の中を進む。ここはここであっちの世界や、ヤーナムとは違ってかなり気持ちのいいところだ。あっちみたいに森が全くないような場所ではなく、ヤーナムみたいに獣がはびこる森でもない。
「ふん、ふんふん。」
「…鳴子さんが一番楽しそうですね。」
「え、あ…あはは。私もここに来るのは久しぶりですからね。私みたいな存在でも、町は楽しいですから。」
「ほー。あなたを楽しませるような街ですか。それはそれは、期待が膨らみますね。」
森を歩いてしばらく、突如として道が現れた。アスファルトや、小石の道ではなく轍が目立つ獣道的なもの。そこだけ木や植物が生えておらず光が堂々と照らしていた。
「えーっと、たしかウルタールがこっちだから、こっちか。」
鳴子が道を右に進んだ。彼女もそれに続く。太陽がまぶしく光っていた。
ドリームランドです。何か、ニャルに関した話でも書こうかと思い大百科眺めてたら面白そうだったので急遽調べて入れてみました。
ブラボの世界観は19世紀らしいので、本当はもろもろ変わらなきゃいけないんですけどね。
まあ…うん。そこまで変わらないはずだし……黄色い背骨あげるから許して?
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