再開します
風圧に押されてしばらく、気づけば地面に降りていた。
「あ、こ、ここは?」
「お疲れ様です。さ、目的につきましたよ。」
「は、はあ。それでここはど、こ…。」
彼女の眼には鳴子の後ろに立つ巨大な動物が見えた。像よりも大きなその体には鱗が生えており長い首には馬のような顔がついている。翼には蝙蝠のように被膜が張っており、一言では言えばその見た目はドラゴンであった。
「私のペットです。シャンタク鳥のシーちゃんです。」
「シャンタク鳥、と、鳥?えと、そのそのシャンタク鳥…シーちゃん?に何かするんですか、餌付けとか?」
「いえいえ、この子知能は人間並みにあるんでご飯ぐらい自分で何とかしますよ。建物とかも立てたりしますし。ただこの子自分の首が届かないところを繕いすることができないですよ。だから私がたまにこうやって代わりにしてあげるんです。人間の構造はこういう時に楽ですよね。」
「え、あ…あれこの子が建てた…。」
シーちゃんの横には遺跡で見るような建造物があった。人が建てたものと遜色ない形はこんな生物が建てた者とは到底考えられない。
鳴子は一生懸命シーちゃんの首をよじ登っている。手に持ったクロスでシーちゃんの首を拭くつもりだろうか。
「すみません、暁さんは背骨に沿って拭いてもらえますか?」
「あ…はい…大変なら巨大化するぐらい大丈夫ですよ?でかい人外死ぬほど見てきましたし。」
「あ、そういえば暁さん大丈夫でしたね。じゃあそうさせてもらいます。」
鳴子は一度降りてから巨大化して拭き始めた。彼女も首の付け根から体を拭き始めた。近くで見ると結構光沢があって綺麗な鱗だ。拭けば拭くほどその光沢は増していく。
「綺麗でしょ。シーちゃんの鱗。」
「はい。つなぎ目もきれいで色もとてもきれいです。」
「たぶんそこらに生え変わりで抜け落ちた鱗があるので持って行ってもいいですよ。生えているものほどではありませんけど抜け落ちた鱗でも十分綺麗ですよ。」
「じゃあ、後でもらいますね。」
始めはそんなに時間はかからないと思っていたが終わったころには日も暮れようとしていた。
「こんなもので大丈夫ですよ。」
「や、やっと終わった。」
「すみません、こんなに時間まで付き合わせてしまって。」
「い、いえ、私もなんか無駄に時間撮らせちゃってすみません。」
多分いつもはこんなに時間はかからないのだろうが彼女が少し手間取ってしまったせいで時間がかかってしまった。しかし、こんなに手間がかかることをシーちゃんは一人で自分たちがしたところ以上のところをやっているのだと思うとすごいなあと思う。
「はい、これをどうぞ。」
「これは?」
「いったじゃないですか、シーちゃんの鱗をあげるって。はい、今日のお礼です。」
「ありがとうございます。…5枚もですか?1枚で十分ですよ。」
「あの子達のお土産にでもしてやってください。」
「あー、ありがとうございます…あれ、鳴子さんに話したことありましたっけ。」
「人数は教えてもらってないですねー、でもそれぐらいはわかりますよ。」
「はは、まあそうですよね。そろそろ驚かなくなりました。」
「今日はもう遅いでしょうし、ここに泊まっていくといいですよ。」
「そんな、大丈夫ですよ。」
「いやー、でもここ結構危ないんですよ夜になると。暁さんなら大丈夫かもしれませんけど…大事をとって、ね?」
「…鳴子さんがそう言うなら、まあ。」
「良かったぁ。じゃあ、あそこの建物にどうぞ。」
「あれって、シーちゃんが作った建物にですか?」
「人間でも十分使えますよ。」
何故かあるドアをくぐると確かに部屋の広さも天井も人間用っぽい。石造りではあるがやけに落ち着く空間だ。
「暁さんはあそこの部屋をどうぞ。」
「あ、どうも。」
もうすっかり暗くなっている部屋に月光が差し込んでいる。月は満月であるのに星はそれに負けじとかがやいいている。今まで見た星空の中でも一番きれいだろう。今頃ヤーナムはどうなっているだろうか、いつも通り獣がはびこっているのだろうか。それともまた別の上位者が住み着いているだろうか。
暁たちはどうしているだろう。遠征はどこまで進んだだろう。あの様子だと昔の遠征とはわけが違うのだろう。昔は遠征に行くのにも命がけだった。そもそも海に出ること自体自殺行為に等しかった。
数か月前のやつの言葉を思い出す。すでに自分は過去の存在だ、本来ならあの場で終わっていたはずだった。どういうわけだか目覚めた先はヤーナムであったが。最後の記憶、自分に近づいたのは恐らく狩人であったのだろう。なぜあの場に狩人がいたのか…まあ、どうでもいいか。今こうやって自分が存在しているのであれば。あ、帰ったら暁たちに契約書を書かせなければ。でも契約書ってどこでもらえるんだろうか。自分の時は変な爺さんに書かされたが……狩人さんが持ってるかもしれない。
「どうしましたか、眠れませんか?」
「…え?」
「いえ、もう夜も更けてしまったのなかなか眠りにつきなさらないので。」
「え、いやだって、まだそんな…。」
窓を見るとついさっきまで地平線近くにあった月は真上まで上がっていた。こんなに時間がたつまで自分は思考に浸っていたのか。いや、そんなはずはない、内容的にたかが数分程度だ。
「それとも、知らないうちに時間が進んでいましたか?」
「っ、ま、まあそんなところですかね…。」
「ふふ。そんな何か鎌をかけたわけじゃないんですよ。この世界は限りなくあちらの世界に似ています。なので、住民や迷い込んだ人たちも難なく馴染むんですが…やはり、暁さんは少し違うみたいですね。」
「でもこんなことは初めてですよ。」
「きっとそれは私のように指摘する人がいなかったからです。あなたはずっとどこかこの世界に抵抗してたんですよ。自分はこの世界の住民ではないって。多分一人でいたらどんどん自分の知らないうちに時間進んでたと思いますよ。」
「そうですかね…。私、抵抗してる気は全くないんですけど。」
「私も暁さんみたいな人は初めてですけどね。世界に抵抗する人類なんて初めて見ました。」
「私はそんな気はないんですが…。それに私はもともと夜は寝ません。そういう存在なので。」
「無意識ですか。もっと珍しそうですね。そういうことなら私とおしゃべりしませんか?そこに椅子もありますし。」
「…これもシーちゃんが?」
「はい。器用でしょ?シーちゃんは私とよく一緒にいるので人間のことをよく知ってるんですよ。」
「はぁ、でもまあ、なんて言うか…あの体躯でこのサイズ作れるんですかね。」
「さぁ、私もシーちゃんが何か作っているところは見たことがないので、ただシーちゃんが作ったことは確実です。ここ、人間が来れるようなところではないので。」
シーちゃんが作ったという椅子はやはり石製だった。別にこの辺に木が全くないことはないが、石のほうが加工しやすいんだろう。
「…あら、朝ですね。」
「あ、本当ですね。では、私はそろそろ。」
「待ってください。もう、言ったじゃないですか、一人だと時間がどんどん進むって。私が入り口の近くまで送ります。暁さんはワープしても大丈夫ですよね。」
「大丈夫ですよ、似たようなことよくしてますし。あ、でも握りつぶす方法は痛いし発狂してしまうので勘弁ですけど。」
「じゃあ大丈夫ですね。握りつぶさないので、ワープしたらすぐに扉に入ってくださいね。」
「分かりました。」
鳴子がつぶやくと次第に彼女の視界はゆがんでいった。再びはっきりした時は目の前にいつシカの扉があった。入ろうとしたときふと自分の影を二度見してみたが一回目と二回目で少しではあるが影の長さが変わっていた。それを見て彼女はささっと扉に入った。
何時しか見た真っ暗な階段。あの時はその階段を下って行ったが今度はひたすらに上がっていく。最初はごつごつとした岩場が見えていた壁もいつの間にか何も見えず、感触がただ感じられた。初めに見た門番は同じ場所で出迎え、また同じように見送ってくれた。また真っ暗な階段を上がっていく。そろそろ時間が分からなくなったころ扉が見えてきた。その扉をくぐると彼女が出たのは廊下、ではなく自分の部屋。鳴子の部屋から入ったというのに自分の部屋に出るとはどういうことか。急いで振り返るが先ほどの不思議な空間はなく廊下が見えていた。何度もこういう不思議なことを体験したが未だになれない。不思議がって少し進んだところで彼女に声がかかった。
「ヨアケさーん!」
「…あら暁。帰ってたの。」
「ええ、つい昨日帰ったわ。」
「昨日夜に帰ってからすぐにあなたの部屋に向かったが居なくてね。狩りに言ってたのかい。」
「…ええまあそんなところね。」
「えーずるーい。私も早くしてみたいのに。」
「分かった分かった、ちょっと待って思い出したことあったから。今からちょっと契約書がないか探してくるわ。」
「契約書ですか?」
「そんな難しいことじゃないわ。ただ自分の名前書くだけよ。ちょっとないか探してくるからそこで待っててくれるかしら?」
彼女は夢に戻ってすぐに狩人さんに訪ねた。幸いにも狩人さんには心当たりがあったようで引き出しから紙を1枚引っ張り出した。
「そうそう、それよ。それをあともう3枚くれないかしら。」
彼は一瞬躊躇するような素振りを見せた。
「ふふ、そりゃ驚くわよね。急に4人も狩人になりたいなんてね。安心してすぐに来させるわ。」
4人分の契約書を収めようとしたがどうも素直に収まってくれない。何か引っかかってるなと思い確認するとそこにあったのは薄紫色の物体。これはシーちゃんの鱗だ。暁たちに渡すように余分に貰ったやつだ。
「…あれ夢じゃなかったのね。…私が夢とかなんとか言うのも可笑しいわね。」
彼女は夢から戻り部屋に入った。暁たちはそれぞれ部屋を物色していたようだ。
「あら、いいものでも見つかったかしら。」
「いいえ、何も見つからなかったわ!」
「あら正直。はいこれ、それぞれ自分の名前書いてね。」
「……これでいいのですか?」
「で、これをどうするんだい?」
おっと、そういえばそんなこと考えていなかった。自分のときはあの爺さんが勝手に持っていったが。
「きゃあ!?な、何よこれ!」
暁の足に何かしがみついている。なんだただの使者じゃないか。ああ、使者に契約書を渡せばいいのか。
「き、気持ち悪いー!」
「気持ち悪いとは何よ気持ち悪いとは、可愛いでしょ。書いた契約書はその使者に渡しなさい。多分それでオッケーよ。」
「分からないのかい?。」
「私がやったときとはちょっと違うのよ。さ、行くわよ。狩人様に挨拶しないと。」
彼女は4人を灯りがある部屋に入れた。4人ともこの灯りをしっかり認識しているようだ。この灯りは狩人だけが使う特別なもの。狩人にしか認識できない。それがしっかり認識できているようならあれで正解だったのだろう。
「いい?何も考えずにこの灯りに手をかざすの目も瞑ってね。」
「えっと、こうかしら?」
「うおっ、消えたぞ。」
「さすが私のコピー。すぐに慣れたわね。」
「コピー?」
「なのです?」
「…それは今は関係ないわ。さ、あなた達も。」
順々に夢へと移って行き最後に彼女が行った。夢に戻ると何故かあたふたした彼がいた。小屋には書きかけの『ようこそ』。彼の手には何やらいろんなものがあった。
「えっと、あの人は?」
「あの人が狩人様よ。どうしたのそんなにあたふたして……え、歓迎会?大丈夫よ、そんなに大げさにしなくても。」
「え、さっきのでわかるの?」
「何か言ってたっけ。」
「いえ、何も言ってないのです。」
「狩人って凄いわ!」
「多分関係ないと思うよ、それ。」
「皆様、はじめまして。私は人形、狩人様たちのお力添えをしております。」
「に、人形が喋った…。」
「早く慣れなさい。いずれこの人形と使者だけが癒やしよ。狩人様、この娘たちが例の子よ。向こうから暁、響、雷、電よ。」
「……」
「そうよ、同姓同名。だからこの娘たちにはヨアケと名乗っているわ。」
「何で分かるのですか。」
「分からないわ!」
「堂々というものではないね。」
そしてなんやかんや始まった歓迎会。場所はいつもいる場所から離れた花園。普段全く用がないので立ち入らない場所なのだがとても広い。そこに大きな机と人数分の椅子が置かれた。机の上には紅茶と茶菓子が。聞けばすべて人形の手作りだという。
「こんなことできたのね。」
「はい。以前から狩人様に入れることがございましたので。」
「ふーん。」
この花園。昔狩人様が原初の狩人ととある上位者を狩った場所らしい。彼女はその話を全く聞いていない。今度詳しく聞いてみてもいいかもしれない。そう思いながら彼女は紅茶が入ったカップに口をつけた。
ドリームランド終了です。またBloodborneの世界に戻りますよ。
そういえばDLCを買いました。あれむずいですね、ガトリング野郎が倒せません。仕方がなく新データ用意しました。DLCの内容を入れるかどうかは検討中です。
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