夜明けの狩人   作:猫又提督

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前回から8日経ちました。

メンシス学派を取り入れてみようと思って少し調べたんですが複雑だったのでガッツリ取り入れるのは諦めました。


第2話

連れて行かれて数十分後。大きな建物群が見えてきた。あれが鎮守府だろう。昔より規模が大きい。彼女はそのままもうちょっと過ぎたところで、ほかからは死角なのだろうドッグへ連れて行かれた。ドッグで待っていたのは数人の艦娘。その艦娘が立っている後ろに扉が見える。きっとその扉の先が目的地なのだろう。艦隊が止まり長門が立っていた艦娘の一人と言葉を交わす。

 

「準備は……」

「大丈夫です。…報告を……。」

 

コソコソと話す二人。耳をすませば誰でも聞こえそうなものだが彼女は聞く必要はないと判断したようだ。話が終わると彼女は立たされついてくるよう指示される。案の定、一人が扉を開け長門はそこに入っていく。彼女もついていく。後ろから艦娘がもう一人ついてくる。その艦娘のことも彼女は知っていた。赤城だった。扉の先は真っ暗で少し埃っぽい。そう長くついていくわけでもなく扉から少しまっすぐ行った先の階段下が目的地だった。コンクリートが撃ちっぱなしの部屋で光源の類はなく部屋の上部に小さく採光窓が取り付けられているだけ。鉄格子で仕切らているスペースがいくつかある。なるほど、禁錮室か。彼女は、その一つに案内させられた。

 

「私が見張っているから、提督を呼んできてくれ。」

「わかりました。」

 

長門の命で赤城は別の扉から出て行った。長門はさっきの言葉通り彼女が入っている牢の前で立ち始めた。彼女も長門も何も話さない。彼女は長門との邂逅の時を思い出していた。あの時長門が彼女に行った質問のことを彼女はいい加減だったように思えた。たったニ、三の質問で結論を出した。彼女はただ従ったにすぎない。そも、長門は彼女のことを憶測で艦娘と決め、結局それを確認することはなかった。言葉が通じることだけを確認したかったのか。と、すれば艦隊は最初から彼女を鎮守府に招き入れるかあの場で処分するのが目的だったのだろうか。

 

「長門。」

「提督。こっちだ。」

 

彼女の思考は早々に打ち切られる。赤城が出て行った扉から男性が入ってくる。長門が声をかけたように彼がここの提督のようだ。その後ろから赤城と加賀も入ってくる。提督は彼女の牢の前で立った。

 

「やあ、初めまして。僕がここの提督だ。君のことは報告書でよく知っている。…君の目的は何だい?」

「…ない。」

「目的もなしに深海棲艦を蹂躙したのかい?」

「…。」

「おい、答えろ。」

「まあ、まあ。えーっと?君は艦娘なのかな?映像も見せてもらったけど海面に立っている時点で人間ではないはず。でも私も長年提督をやってるけど君みたいな服装の艦娘は見たことがない。」

「…昔。」

「昔?」

「昔はそうだった。」

「…じゃあ、本当の名前。艦娘としての名前教えてくれるかな。狩人ってのは違うんでしょ。」

「暁。」

 

提督はずっと優しい顔をして話しかけていた。が、彼女が顔を変えずに相手を驚かせようという気など全くなく、まるでおまわりさんに名前を聞かれたときのような彼女の言葉にその顔はすこし崩れることとなった。

 

「暁…!?」

 

長門と赤城が驚愕の顔をあらわにする。それもそうだ。彼女たちが知る暁と、今目の前でそう名乗った少女とは似ても似つかないのだから。彼女たちの知る暁は決してこんなにも暗い死人のような、この世のものではないような雰囲気を漂わせるような少女ではない。

 

「…それは本当かい?」

「ええ、本当。」

「貴様嘘をつくな!それはいくら何でも無理がある!」

「私もそう思います。提督やはりこの者は深海棲艦の…。」

「いえ、赤城さん。それではわざわざ深海棲艦を蹂躙する理由がありません。」

「なんだ加賀。じゃあ貴様はこいつが嘘をついてないというのか。」

「そういうわけではありません。彼女が本当に暁なのかは疑わしいことです。ですが、深海棲艦の仲間というのもおかしいと思います。」

「僕もそう思うね。何、疑わしいなら確かめてみるだけだよ。」

「確かめるとは?」

「艦娘ってのはそれ専用の艤装を持っているだろう。長門が長門専用の艤装を持っているようにね。専用とはいっても長門の艤装は長門ではあればだれでも作動するからそれをこの娘にもすればいい。加賀、明石から暁の艤装借りてきてくれ。」

「分かりました。」

 

加賀が部屋を出る。提督、長門、赤城は牢から少し離れて話し出した。やはり、彼女はその会話を聞く気がなかったため何を言っているのかはわからなかったが、大方彼女自身のことを話しているのだろう。加賀案外早く戻ってきた。更にはその後ろにもう一人いた。その艦娘のことも彼女は知っていた。明石だった。

 

「すいません。どうしてもと言うので。」

「いや、明石には話しているから大丈夫だよ。それよりも工廠はいいのかい?]

「はい!夕張産に頼んでるんで大丈夫ですよ。彼女がそうですか。」

「ああそうだ。本当かどうかは今から決めるがな。」

 

長門が牢を開け彼女を外に出す。そして腕の解かれた。が、長門の手は彼女の肩に置かれたままだ。警戒されている。逃げ出すつもりなど毛頭ない彼女は加賀に促されるままに艤装を取り付ける。

 

「よし、じゃあ艤装を起動してみて。それでその艤装が動き出したら君は暁だと証明される。」

 

彼女は艤装を起動させた。本人にしか聞こえないほどのモータ音が聞こえた。体内を血液とは別のものが流れていく感覚を覚える。それから数秒後その違和感もなくなり、とうとう彼女はその艤装を操作しだした。主砲の砲塔回転、魚雷発射管の操作。後ろの錨のロックも外し起用に回って伸びた鎖をつかんだ。これで彼女が正真正銘駆逐艦暁であることが立証された。

 

「これは…どうしましょう。」

「うーん。確かにこの娘は暁のようだね。…長門、後で何人か呼んでくれ。」

「了解した。」

「あ、あの。拿捕した武器ってのはどこにあるんですか?私それが気になって気になって…。」

「ああ。それならここにあるが?」

「うわー。これですか。これであの深海棲艦を真っ二つに…。でもなんかちょっとごついだけでそれほど切れ味が良さそうには……。こればらしてみていいですか?」

「…いいんじゃないか。」

 

そんな声が聞こえたのはちょうど加賀に手伝ってもらって艤装を外し終えた頃だった。きっと加賀には急に彼女が消えたように思えただろう。そしてその場にいた全員が見たのは明石の首元に突きつけられた剣と長門に向けられた銃口だったろう。

 

「だめ。それをバラさないで。こっちならいいわ。あなたも勝手に許可を出さない。拿捕した武器の扱いは提督が権限を持ってる。艦娘は提督がその場にいない、かつ判断を急するとき。…今はどっちでもないわ。」

「ウヒっ!?…え、あ、ありがとう?」

「うっ…す済まない。…というか!」

 

明石はギクシャクしながら受け取る。

 

「な、なぜそんなものを持っている!あれで全部ではなかったのか!」

 

長門は激昂して問いただす。しかし、彼女はキョトンとしている何を言われたのかわからないような様子だ。

 

「ええい!いいから持っている武器を全部出せ!」

 

仕方がないので彼女は持っている仕掛け武器を全部出した。ノコギリ槍にルドウィークの聖剣、慈悲の刃等々途方もないほど出てくる。どう見たってその体躯では納め切れない武器の数々。その場にいた全員が言葉を失った。

 

「…全部出したわ。…没収?渡しははするけどそれ以外バラさないでね。大変だから。」

 

机には収まりきらずその周辺にゴマンと置かれた武器を前に彼女はぶっきらぼうにいう。長門は動揺しながらも応えた。

 

「…あ、ああ。これで全部だな?貴様の言うとおり没収する。扱いは今夜決めるから、今夜はここで過ごせ。」

 

彼女は頷いて自ら牢の中へ戻っていった。長門が鍵を締める。

 

「…これどう運ぼうか。置く場所は…数が多いから工廠に持っていくしかないかな…。」

「ですね。夕張さんはこの件のことは承知で?」

「あ、はい。私と一緒に話だけは聞いてますよ。」

「となると問題は、これを他の娘たちにバレずに持っていくことですね。」

「この件を知っているのはあと何人だ。」

「あとは、吹雪さんと叢雲さんだけですね。」

「じゃあ、その三人にも手伝ってもらうか。バレないようにね。」

「了解した。」

 

それぞれ仕掛け武器を運び出した。途中から吹雪と叢雲も手伝いだした。やはり彼女の顔を見ると少し顔が歪む。彼女が暁であったことを聞いたのだろうか。最後の一つを持っていくとき長門が言った。

 

「…貴様は今、特別処置で捕虜の立場にいる。この場監視の目は入れないが外はそうではないからな。絶対に抜け出すなよ。処遇については明日報告するからな。」

 

そう言って部屋を出ていく。結果としてこの場にいるのは彼女ただ一人だけとなった。外から足音が遠ざかっていく音がする以外何も聞こえない。採光窓から入ってくる光が埃を照らす。簡易的な椅子やテーブルがあるが彼女は床に座り壁にもたれた。ここには変わるものがない。必然的に視線は埃を照らす光とその光が入ってくる採光窓に行く。太陽の光なんてものを感じるのは本当に久しぶりだった。見れても悪夢の中でモドキの光が、ただそこが明るかっただけだった。だが、彼女には太陽に出会った感動は薄かった。もはや、太陽を見ることが感動には値していなかった。

 

 

 

 

 

 

扉が開いたときに彼女はこの世界を再認識した。誰か入ってきた。入ってきたのは吹雪だった。

 

「えっと…夜ご飯持ってきました。」

 

吹雪はお盆を持っていてその上には軽食が乗っていた。吹雪は近くのテーブルにそれを置き机の上のランプもつける。この部屋の唯一の光源。それを持って牢の中に入った。

 

「ここに置いときますね。30分後に取りに来ます。……。」

「…何かしら。」

 

彼女は吹雪の言葉に返事をするつもりはなかったが、吹雪がやけに彼女の顔を見つめるため、つい彼女は声をかけてしまった。

 

「ああ、いや。こうしてみると本当に暁ちゃんなんだなぁと思って。」

「…私は暁だもの。」

「でも雰囲気とか全然違うから。」

「…そうかもね。」

「あ、じゃあ。また後で。」

 

吹雪は部屋を出ていった。彼女の前にある食事。狩人に食事は必要ない…と言ってもそれをあちらが知っているはずもない。何も必要ないからと言って狩人が飲食ができないわけではない。獣ではあるまいし。ただ、普段口にしてきたものに比べて自身がその昔よく食べていたものは不思議と何か落ち着く感じがするのだった。30分後やはり吹雪がやってきた。

 

「あれ?着替えたんですか?」

「ええ。ちょっとね。改められないと分からないというのは少し寂しいから。」

「あはは。思ったより人間味がありますね…あ、そ、その人間ぽくないとかじゃなくて、その、映像で見たときはなんか機械みたいで感情がまるで感じられなかったから、寂しいって思うんだなあと思って…。」

「…そうね。私も不思議に思うわ。」

 

もはや彼女には人間である要素などなかったはずだった。少なくとも夢以外では感情を捨てたはずだった。ここに来てから不思議といろいろな感情が浮かび上がってきた。これも、ここが昔慣れ親しんだ場所と似ていて昔の仲間と似た人と話しているからなのだろうか。吹雪は空になった皿と一緒に机を外に出し「消しますね。」という声でランプを消した。「お休みなさい」と言って部屋は再び暗闇が閉ざす。

 

彼女は珍しく意識を保っていた。何も聞こえてこない。ただ空気の音が聴こえてくるのみ。こんな夜は初めてだった。ヤーナムでは必ず何か聞こえてくる。獣の足音、うめき声、市民の声、何か金属を引きずる音、肉を引きちぎる音、いろんな音が聞こえた。こっちに来ても波の音は聴こえるし深海棲艦の声だって、何を言ってるかはわからないにしろ何か話しているような音が聴こえる。故に彼女は恋をした。この静かな夜を欲した。彼女にとってこの夜は夜明けよりも大切なものになった。もっと感じたい。認知したい。…もっと瞳を得てこの夜を認識していたい。…医療協会の気持ちもこのようなものだったのだろうか。彼らもまた何かのために瞳を得ようと。だが、もう少し見た目を気にしようとは思わなかったのだろうか。今となってはもう分からない。彼女が全て狩ってしまった。もう獣しかいなかったから。さっきの行動もこの静かな夜のせいかもしれない。

 

彼女は結局、再び窓から月の光ではなく太陽の光が差し込むまで夜を楽しんでいた。遠くから喇叭のような音がする。起床時刻なのだろう。恐らく6時。そこからもうしばらく経ったごろ遠くから足音が近づいてくるのが分かった。吹雪よりも早い。きっと長門とか加賀あたりだろう。扉を少し乱暴気味に開けたのは長門だった。手にはお盆を持っている。恐らく彼女の朝食だろう。長門はテキパキと机にお盆を載せ牢に入る。

 

「食べながらでいい、聞け…何だ貴様着替えたのか。どこから持ってきた。」

「最初から持ってた。誰かさんが信じれないって言うから。」

「…はぁ。もういい。貴様の処遇が決まったから今から聞け。」




誤字脱字ありましたら遠慮なくどうぞ。

クトゥルフ神話とか出してみたいですよね、折角ですし
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