夜明けの狩人   作:猫又提督

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前回から35日経ちました
いや、なんか気づかない間にすっごい時間たってましたね。すみません



第21話

「やあ…待ってたよ。」

「あらそう。」

「なんだ、そっけないね。」

「予想はできたわ。にしても趣味悪いわね、その服。」

「趣味が悪いとは何だい、正装だよ。それを言うなら、僕はそっちのほうが趣味が悪いと言えるね。」

「物は言いようね……ああ、なんか見覚えがあると思ったけどあなたドリームランドにいたでしょう。」

「ドリームランド?」

「あなた一回ぐらい変な森にいたことはない?そこで獣まで呼び出しやがって。」

「…ああ、一度夢に見たね。好きに行動できたから夢だとは気づかなかったけど後々気づいたよ。」

「あなたね、むやみやたらに獣の病をふりまかないでくれる。」

「なんだい、あそこは実在していたのか?それならもう一度行きたいね。あそこなら研究がはかどりそうだ。それに君だって狩りができるんなら本望だろう?」

「…はぁ。で、その後ろのは何。」

「ははは!よくぞ聞いてくれたね。これこそ僕が作成した上位者さ!……君たち狩人は獣じゃ飽き足らずあろうことか上位者まで狩り始めた。いったいどれだけの上位者が犠牲になったと思う。なんとかミコラーシュ様は悪夢を作り出し、そこで研究を進めることができた。僕もこの世界で独自に研究をすすめ、やっと作ることができた。まあね、だから君がやってきたときは正直驚いたさ。赤城から送られてきた写真でピンときたさ。君が狩人だってね。僕は慌てて準備したさ。アメンドーズやロマに隠してもらった。だが、アメンドーズに関しては逆に君に感づかせてしまったかもね。しかしまぁ…あれだね。ロマまで…きっとあの副産物たちにも気づいただろう。あれも一緒に送るつもりだ。ああ、ミコラーシュ様…待っていてください…」

「…長い自分語りお疲れ様。いくつか言っておくわね。上位者狩りをしてるのは…まあ成り行きよ。でもまあ最近は楽しんでたわね。だから今までやってきた探偵ごっこもこれのため。楽しかったわ。でも責められるのは困るわ。そんなこと言ったらあなた達だって上位者を作るために市民を材料にしたじゃない。まぁもとはと言えばビルゲンワースの連中のせいだけどね。あ、あとミコラーシュなら私が殺したわよ。」

「は…?き、君はいま、なんといった?」

「だから、ミコラーシュなら私が前に殺したし、上にいた上位者だって狩ったわ。」

 

まぁ、一度夢に戻ればなぜか復活するのだが。だからいまヤーナムに戻ればまたいるだろう。

 

「…き、君はなんてことをしてくれたんだ…そ、そんなミコラーシュ様…そ、そうだ、僕、僕だけでも…そうだ、そうだよ。なんてすばらしいことなんだ…自分で作った上位者でミコラーシュ様の願いが叶うかもしれないんだ。」

 

「ま、というわけでそいつ狩るからってなにしてるの?」

「やるぞ…!僕はやるぞ!僕だけでもやるんだ!僕だけでも瞳を見出して見せる!さあ、深海の深淵よ僕に瞳を分け与えたまえ!」

 

奴は後ろの異形に呼びかけ手を広げた。異形は奴の言葉に反応したのかもぞもぞと動き始める。ところどころ深海棲艦の一部が見えるので、あれは深海棲艦を材料に作られたのだろう。その中ではっきりと頭を残している部分の口が開き中から人間の上半身のような骨格が出てきた。それは奴の頭をつかみにらみ合う。やがて奴は耳から血を流し始めたかと思うと頭がはじけ飛んだ。頭を失った奴は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。彼女はその様子をずっと黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、汝、汝よ。なんと醜い姿だろうか。そのような姿では何もできまい。死すら与えられないのだろう?死は解放であるか?否、死とは次へ進むための段階に過ぎない。だが、それはとても重要なことなのだ。多くの存在は死を乗り越えることができないのだから。上位者になりたければまずは死を乗り越えよ。

 

「…深海の深淵ねぇ。微妙な名前ね。さて、深海の深淵とやら。私はあなたを狩るわ。」

『そなたが狩人であるか。』

「あらそうよ。話が分かるのね。」

『我は知っておる。我は上位者という存在である。たとえ低俗なものに生み出されようともそやつに好きにされることは許されぬ。そなたはそこの低俗とは違うな。だが我らに届くこともない。』

「…ええ、そうね。でも私はあなたたち上位者を狩る、上位者狩りの狩人よ………汝、死に興味はないかな?」

『死とな。そなた我らに死を与えられると思っているのか?』

「狩人とはそういう存在である。もはや狩るものは獣だけではない。青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために。求めよ、求めよ、青ざめた血を、上位者の血を。そのためならば獣狩りも上位者狩りも、狩人狩りも行うのだ。」

『そなた、本当に我らに死を与えられるとでも?』

「試してみるか?」

『いいだろう。我らはそなたをとことん利用したい。人が人ならざる者に変化した存在、とくと興味がある。』

「狩人は狩るだけ。ただ狩るだけ。狩るためならば上位者の知恵すらむさぼりつくす。」

 

深海棲艦の残骸がつながってできた触腕が上から降りかかってくる。彼女は避けたが先ほど頭がはじけ飛んだ奴の残骸は押しつぶされた。どかされた地面には無残に押しつぶされたはずの残骸はなく、その触腕に引っ付いて触腕ごと内部に収められた。

 

『ああ、こいつには脳がなくなってしまったな。取り込んでも意味がない。そなたの脳を見てみたい。』

「私は汝の素材が欲しい。汝からはどんな聖杯ができるかとても気になる。」

『そなたは今でも墓荒らしをするのか?』

「墓荒らしとは人聞きの悪い。探索と言ってくれたまえ。」

 

団子上の異形の端からにゅっと何か伸びてきた。深海棲艦によく見る歯のついた大きな艤装、つまりは砲。彼女が見たことない形をしている。確実に撃ってくる、それはわかるが口径が分からないのでどれほどの範囲があるのかわからない。大体こういう時は近づけばいい。狩りの基本だ。

 

撃った。コンクリートの地面は無残に砕け散っている。多分重巡かそれに近いぐらいの砲だ。爆風は当然届きはしない。だが、回避のために異形に近づくと、異形は体からいくつもさっきと同じものを生やした。それはあっという間に彼女を囲うように広がった。躱せない、そう悟った瞬間、目の前に閃光が走った。

 

 

 

「…軽率だったわね。」

 

つい癖で相手に近づいて回避しようとしてしまった。まさか全体から生えるとは思わなかった。久々に死んだ。あの部屋に戻ってきたらしい。

 

「あーあ、かっこつけるもんじゃないわ。」

 

ドアを開けると廊下を赤い光がほんのり照らしている。鳴子も真っ赤な月を眺めていた。

 

「あ、どうも。」

「あ、暁さん。見てくださいよ。珍しいですね、この世界でもあんなに真っ赤になることなんてあるんですね。」

「あ、まあ、そうですね。すみません急いでるんで。」

「そうですか。じゃあまたあとで……おもしろいなぁ人間って、あんなのつくっちゃうんだねぇ。」

 

外に出るとそこらにあの人間もどきが歩き回っている。

 

「そういえばあんな奴いたわ。面倒ね、突っ切ろうかしら。」

 

突っ切ろうと走り出すと遠くから爆発音が聞こえた。その音に人間もどきは反応する様子はない。彼女もそれに付き合おうとは思っていない。

 

戻ってきた。異形はまだそこにいる。

 

『戻ってきたのか。殺したはずだが、消えてしまったから不思議に思ったが…』

「狩人だから。さ、続きよ。」

 

ノコギリ鉈片手に突っ込む。生えた砲塔からの砲撃を避けて切りかける。刃は簡単に入り振りぬくと体の一部が飛び散っていく。青い体液も飛び散りそこから重油の匂いが漂っていく。まだ全然届いてない。異形の体はそのすべての面が正面ですべての面から砲塔が触手のように伸び、ショットガンのように生え撃ってくる。彼女はその全てをよけ斬り、斬り、斬り、斬る。そしてスカッた。異形は彼女の視界から消え、そして彼女は死んだ。

 

 

 

「飛んだ。飛ぶのね、あの巨体で。」

 

廊下はまだ赤く光っていた。鳴子はまだ空を見ていた。

 

「あれ、いつの間に戻っていたんですか?」

「あ、いや、死んだだけです。」

「あーなるほど。よくわかりませんが、応援します。」

「ありがとうございます。」

外にはまだ人間もどきが歩いていて、爆発音も聞こえていた。彼女は気にも留めず走って戻っていった。

 

『まだ挑むか、狩人。そう何度も死んでは心が持たないぞ?』

「上位者に心配されるなんて光栄なことね。心配しないで。続きよ。」

 

同じように突っ込む。斬りつける。視界から消えた。上を見るとやはりあの異形が上にいる。バックステップで下がると彼女にいた場所に異形が落ちてきて、派手にコンクリートの破片が飛び散った。また斬って、避けて、避けて、斬って、斬って、囲まれて、死んだ。

 

 

 

廊下は赤く光っていた。鳴子は空を見ていた。人間もどきは歩いていた。彼女は走った。

斬り、避け、斬り、斬り、斬り、斬り、潰された。

 

廊下は赤く、空を見て、歩き、走る、斬る、避ける、死ぬ。

赤く見て歩いて走って斬って避けて死んで赤くて見た歩いた走った斬った避けた死んだ赤く見た歩き走って斬って死んで赤くて走って死んで赤くて死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで赤くて死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで

 

 

死んだ。

 

「」

 

 

 

響はいい妹だったと思う。クールで、よく私の暴走を止めてくれた。でも人と付き合うのが少し苦手で、実は甘えん坊で、私の暴走を止めるより、私に甘えてくるほうが多かった。

血なんて繋がっているはずがなかった。すべてが他人で、でも姉妹にならなくちゃいけなくて、響はそれが怖かった。だから私は形だけでもお姉ちゃんにならないといけなかったから頑張ってお姉ちゃんになった。ちゃんとお姉ちゃんだったかな?響は怖くなかったかな?

狂気って何だろう。狂う。狂うって言うのはずっと笑っているっていうこと?笑うしかないって言うじゃない。でも私は笑うしかないことなんてなかったわ。あの時だって死ぬんだってしか思わなかったわ。響のおなかには穴が開いちゃって、私が声をかけても何も言ってくれなくて、血がいっぱい出て、痛そうで、かわいそうだった。響が死んじゃったからとても寂しかった。寂しいのに痛くて響を見ることが出来なくて悲しかった。もっと響の顔を見ていたかった。でも気持ち悪くて、血を吐いて、起き上がれなくて、もう響の顔を見れなくなってとても悲しかったの。

狂気って言うのは分からないわ。

狩人は楽しいわ。最初は怖かったけど慣れたらそうでもなかったわ。最近はコピーも狩人になってくれたから退屈することもなさそうなの。ヤーナムはいい場所よ。あそこの人や狩人様にとっては日常かもしれないけど私にとっては観光地なの。あ、でも狩人様はヤーナム出身じゃないらしいの。どこかは聞けなかったけど今度聞いてみたいわ。

上位者って何なのかしら。よくわからないわ。気持ち悪い見た目して、ロマなんて蜘蛛?芋虫?だし。でも月の魔人は上位者っぽいかも。あれって宇宙人なんだっけ?何か本で見たわ。でもメンシス学派は自分たちで上位者を作り出したのよね。あれってメンシス学派がおかしいのかしら、それとも上位者って実はそうでもないのかしら?悪夢の中に監禁されてたしやっぱりそうでもないのかもしれないわ。じゃあなんで私はあんな団子に苦戦しているのかしら。それは私があいつを見るのが初めてだからよ。それにあの団子は深海棲艦の集合体だもの。砲撃はどの上位者の攻撃よりも早いの。それにあいつの砲塔はどこまでも伸びるわ。瞬間火力にリーチまであったら苦戦するわ。でも私は挑み続けるの。狩人だから。たとえ死んでも挑み続けるわ。狩人になってしまった私にはそれしかないの。上位者になり切れなかった私には。人間を捨てきれなかった私には。

 

 

 

『そなた、よく飽きもせずに来るな。もう何度死んだ。いい加減知っただろう。所詮そなたは我には勝てん。』

「」

『…もう終わってるなそなたは。まるで生気が感じられん。我が言うのもなんだが生物とは思えんな。我の一部にしてやろう。そこまでさせるそなたの脳と瞳に興味がある。』

「」

 

触手が伸びてきた。先についている口は開かれておりその中に砲塔はない。彼女を捕まえるつもりだ。彼女はそれを切り捨てた…いや、これは囮だ。右側から伸びてきた触手に反応した瞬間左から数本間隔をあけて伸びてきた。右手では間に合わない。持ってきた大砲で何とかする。昔のタイプの大砲だから破壊まではできないだろうが軌道をそらすことはできる。一本目は彼女に追いつく直前でそれた。そのすぐ後ろからもう数本襲ってくるが対応できるまでの時間は十分稼いだ。一本はよけ残りを切り捨てる。後ろから襲ってきた2本を切り捨てた。間髪入れず突撃する。ノコギリ鉈で斬るのはそのでかい図体、ではなく上半身の骨格。異形は

この骨格が目のような役割を果たしているらしい。今まで何度かこの部分をかばうような動作をしていたがやっぱりだ。ここを攻撃すると異形全体がのたうち回り骨格が内部に引き戻されダウンした。

 

ここ最近美しい狩りというのを意識してきた。狂気ながらもスタイリッシュに…なんてのはいいわけか。正直に言うと彼女は彼にあこがれてノコギリ鉈を使っていた。彼はノコギリ鉈で狩りをしていたといっていたから彼女もそれを真似したのだ。だが今回はそんな余裕はない。彼女はノコギリ鉈をしまい、もともと使っていた回転ノコギリを取り出した。先につけたノコギリは火花を出しながら回っている。彼女は構えて限界までノコギリを回して勢いよく振り下ろした。回転するノコギリに異形の体は無残に引きちぎられていく。何度も振りかざしては振り下ろし、振りかざしては振り下ろし、異形の青い体液がどれだけかかろうともその手をやめない。やがて体が異形で見えなくなってしまうんじゃないかというところで突然異形がはねた。彼女は飛びのき、異形が落ちてくる。今までに何度も異形がはねたせいですでにコンクリートの床はボロボロになっており小さく小さくなった破片が飛び散る。

上半身の骨格が再び生えそのポーズは彼女を指さすようだった。

 

『貴様、貴様よくも我を焦らせてくれたな。生まれてまだ日は浅いがよもや我のような存在が貴様如きにこんな感情を抱かさせられるとは到底思わなかったぞ。腹立たしいが感謝しよう。我にこのような感情を教えてくれたことを。腹立たしい、ああ腹立たしい。礼だ、後悔させてくれよう。

 

異形が骨格を収めて間もなくうごめきだした。そして黒い塊をいくつか飛ばしてきた。べちゃっと落ちてきた塊はもぞもぞとうごめくとだんだんその形は深海棲艦へと変わっていった。黒い塊は深海棲艦に代わるとすぐに彼女に向けて砲撃を開始した。それと同時に異形も攻撃を再開しだした。さっきと攻撃は変わらないが深海棲艦の砲撃が加わるだけでも十分脅威だ。せいぜい駆逐艦程度なのが幸いだがそれでも艦砲は脅威でしかない。ごり押しするわけにはいかないのでまずは深海棲艦の掃討を行う。もはや深海棲艦など彼女にとっては雑魚以下である。彼女は手際よく掃討していく。しかし、そのほとんどを倒したところで再び異形がうごめきだして黒い塊を飛ばしてくる。面倒なことをしてくれる。深海棲艦を飛ばし続けられるとジリ貧だ。黒い塊は異形から飛ばし続けられているのでこのまま塊を飛ばさせ続ければいずれ消えてなくなるかもしれないが大きさ的に現実的ではない。

 

……しかし、そうだな。観察してみるとたいしたことないな。骨格を収めてから塊を飛ばすまでの数秒間、異形はうごめく以外に何もできない。他の上位者や何なら獣よりも隙が大きい。所詮は、その下賤な存在に作られた偽りの上位者だからか。彼女はこれを好機とみて行動に移した。まずは同じように深海棲艦を殲滅してく。そして異形がまたうごめきだした。その瞬間彼女は動く。異形に向かい走り出し、異形にぶつかろうかと、そこまで近づいた瞬間勢いよく回転ノコギリを振り上げた。その瞬間何か体を引きちぎった感触とは違ったものを感じた。何か硬いものを砕いたような、そう思ったのもつかの間異形が震えだした。そして叫んだ。彼女は目の前に散らばったもので察した。小さな何かのかけらそして所々形か残った白い骨格。どうやらあの上半身を砕いてしまったらしい。きっと単純に攻撃した時よりもダウンが長いだろう。なにせ根元から砕いたようだからだ。回ったのこぎりは易々と異形の体を引きちぎっていく。深海棲艦にしては柔らかすぎる体を引きちぎっていくと、やがて彼女はその手を止めた。彼女の目の前には一つの箱が埋まっていた。両手で抱える程度の大きさの箱は金属質で中からうめき声が聞こえてくる。どこかで聞いた声、そう何時しかの試作兵器が発する、深海棲艦を引き付けるとかいう趣味の悪い兵器の発する声。

 

この事実に気づいたとたん彼女は瞬時にかつ単純な事柄に結び付けた。この箱が異形の核である、これを壊せば異形は死ぬ。彼女は躊躇なく回転ノコギリを振り下げた。ただでさえ火花を散らしているノコギリは箱に触れたとたんすさまじいほどの火花を散らす。しかし、その刃はなかなか進まない。5秒ほど押し付けたところで彼女はノコギリを上げた。箱には少し切れ目が入っているがこれではいつまた異形の骨格が復活するかわからない。と、彼女は回転ノコギリを収めあるものを取り出した。12cm連装砲と61cm三連装酸素魚雷、駆逐艦暁の艤装。もし使えるなら、と思い何周回かめに拝借したものだが、これならこの箱を破壊するのには十分だろう。いそいそと艤装を取り付け箱い構える。箱に向かって一発、轟音と爆風とともに箱には大きな穴が開いた。そこまで厚くないと思っていたが実際には相当な厚みがあったようだ。撃ったことで同時に周りの体も飛び散ったのだが彼女が見たのは箱の吐出した部分だったらしい。しまった、入っていた砲弾はさっき入っていた2発だけだったらしい。空いた穴を見ると中であの装置が浮いているのが見える。幸いにもまだ武器はある。この魚雷だ。砲弾よりもよっぽど威力が高い。だが魚雷を発射管から飛ばしてもあそこまでは届かない。届かないなら飛ばす。魚雷を投げて飛ばすだが、魚雷は重い。砲弾みたいに火薬だけが詰まっているわけではない。ならば力を借りるしかない。ゴースの寄生虫、これなら魚雷をもって飛ばすことぐらいできるだろう。

 

寄生虫のせいでもうろうとする意識の中魚雷を発射し、地面につく前につかむ…お、重い。これでもまだ重いか。だが投げることはできそうだ。最大限の力をもって魚雷を穴に投げ入れる。魚雷は見事穴に吸い込まれていき、その刹那爆発した。爆風が穴からこぼれだし彼女を吹き飛ばす。投げ出された彼女はまともな受け身をとることなく床を転がっていく。

 

寄生虫をはがした彼女は立ち上がり異形のほうを見た。しかし、そこには異形と呼べるものなどなく、黒い大きな水たまりの中に深海棲艦の破片が浮いているだけだった。

 

「…悲鳴も何にもないのね、狩りがいがないわ。」

 

なんというか、あっさり終わってしまった。何か派手に消えるわけでもなく狩った後に何かが変わるわけでもなく、核を失った異形は意識を失い、その体を保つことができなくなって材料に戻った。それだけだ。久々の静寂もつかの間、もはや用などない空間を彼女は静かに去っていく。




次回こそ最終回かな、多分

誤字脱字等ありましたら遠慮なくどうぞ
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