最終回です。
梯子を上りきるとまた何かの音が聞こえてきた。砲撃音、どうやらだれか戦っているらしい。その音をたどって発生源まで行くとそこには複数の人影がいた。あの4人が見える。4人が戦っているのは、あれは長門だ。長門があの4人に主砲を撃っているらしい。それに対し4人は避けてばかりのようだ。彼女は一番近かった響に声をかけた。
「ねえ、どういう状況?」
「あ、ヨアケさん。助けてくれ、急に長門さんが襲ってきたんだ。声をかけても聞いてくれなくて。」
「くそっ!すばしっこいな。やはり副砲で攻撃したほうがいいか。」
どうやら響の言うとおりらしい。吹雪と似たような状況だ。しかし、自分を攻撃するならまだしも4人を攻撃する理輔はよくわからない。しいて言うなら狩人だからだろうか。暁たちが攻撃される理由はそれしか思いつかない。
「ヨアケさん!」
「暁、大変そうね。」
「ど、どうしたらいいのかしら。長門さんが…」
「響から聞いたわ。狩りなさい。」
「え、か、狩るって長門さんを?」
「そうよ。きっともう長門はあなた達を敵としか見てないわ。」
「そ、そんな。きっとなにか…正気を失っているんだわ!ほ、ほら赤い月のせいで…。」
「それはないわ。吹雪も同じだったから。私を敵とみなして攻撃してきたわ。吹雪はちゃんと理由があって攻撃してきたわ。『あなたは敵だから、提督にそう言われたから』って。だから私は吹雪を狩った…はぁ、殺したわ」
「そ、そんな。吹雪さんが…で、でも長門さんは」
「違うって言いたいの?いいえ、同じよ。奴は…ここの提督はメンシス学派の人間だった。あいつは私たち狩人に敵意をむき出しにしていたわ。だから吹雪をわたしにけしかけたの。あなた達も狩人である以上、長門も提督に命令されて狩人であるあなた達を攻撃しているの。」
「そ、それは本当なの?」
おや、いつの間にかほかの3人も集まってきたらしい。
「ええ、本当。私はこの手で敵である吹雪を殺したわ。長門の意志は決して変わらない。あなた達艦娘は提督の命令には絶対逆らえないわ。あなた達は狩人になったから支配されることはないけどね。だから殺しなさい。もうここには敵しかいないの。だからやりなさい。」
「…わかった。やるわ。」
「暁!?」
「しょうがないでしょ。やらなければ私たちがやられるんだから。」
「……私もやるわ。」
「電も決めたのです。」
「2人まで…!」
「響、あなたも覚悟を決めなさい。3人はもう決めたのよ。」
「……うぅ。」
やがて響も無言で振り返り長門と対峙する。
「はい、よくできました。親切に待ってくれた長門さんに感謝しないとね。それじゃ私は邪魔しないように離れるわ。終わったら私のいた部屋まで来てね。」
彼女はその場から離れると再び様々な音が流れ始めた。彼女はそれを無視して戻る。
そこにはまだ鳴子が立っていた。顔は赤い月の光で照らされていて鳴子もその月を見つめていた。
「ここは面白い場所でしたね。離れるのが惜しいです。」
「ええ、私もそう思います。想像よりも退屈な場所でしたが昔を思い出せました。」
「次はどこに行こうか、まだ決まっていないんです。暁さんは?」
「私はこのあと戻ろうと思っています。あの4人がいますから。」
「ああ、いいですね。仲間がいるのは退屈に最も効果的な存在です。」
「ええ、まったく。」
「あの赤い月は美しいですね。」
「…私は、あまりそうは思えません。」
「そうですか?」
「あれは、まだこの場に上位者がいるという証。私は獣狩りで上位者狩りの狩人ですから。狩人は狩りを全うするのが使命です。」
「でも地下の存在は狩ったんじゃあ?」
「いえ、まだ一ついますよ。ずっと張り付いて私のことを見ているやつが。」
「…ああ、そうですね。私としたことがすっかり忘れていました。」
「存在感が薄かったからですから。あいつは4人に狩らせようかと思います。私が狩ってもいいですけど、やはりあの4人に狩らせてあげたい。」
「うふふふ。優しいですね。」
「…優しいですか?…ここにきてから私も変わったような気がします。」
「環境が変われば人というのは変わりますよ。」
「人はそう簡単には変わらないとよく聞きますけどね。」
「じゃあ、簡単に変わってしまった暁さんは人間じゃないかもしれませんね。」
「そう…ですね。きっと私は人間じゃない。」
「ははは。暁さんはまだ人ですよ。じゃなきゃ私も人型であなたとお話ししてませんから。」
「なら嬉しいですね。」
彼女は鳴子と別れて部屋に戻った。結局一度も使わなかったこのベッド、せっかくだから最後に使ってやろうか。どうせ待たなきゃいけないのだ。本を一冊引き抜きベッドにダイブする。
「おぉあ…この感触久しぶりだわ。こんなに気持ちよかったのね…眠気はないけどそこまで贅沢は言えないわね。束の間の人間の娯楽を楽しみましょうかね。」
「…はぁ、はぁ…ヨアケさんやってきたわよ。」
「ん、あらお疲れ。見事に血まみれね。それはあなたの血かしら、相手の血かしら?」
「相手に決まってるでしょ。みんながみんなこんなに出血してたら死んでるわよ。」
「…それもそうね。」
「ヨアケさんの常識がちょっとおかしいのです。」
「な、なんでみんなそこまで落ち着いているんだ。私たちは仲間を殺したっていうのに…」
「響、いい加減慣れる。吹雪と長門がいなくなってもここにはまだもう数人いるんだから。とりあえず…一度戻るわよ。私も久々に苦戦して輸血液とかすっからかんよ。」
「ヨアケさんが苦戦する相手…出会いたくないわ。」
「安心なさい、ここはヤーナムじゃないから死んだ奴は復活できないわ。ちょっと残念ね。さ、無駄話はこれでおしまい。早く戻りましょう。」
夢に戻ってくるのは久々な気もしたがよく考えてみればそうでもなかった。彼女は4人にアイテムを補充するように諭す。
「さ、戻るわよ。」
「え、戻るってどこに…」
「決まってるでしょ、鎮守府よ。」
「なんで?」
「なんでって、あそこにはほら、まだアメンドーズがいるし。せっかくならあなたたちに倒してもらおうと思って。」
「な、なんで私たちなのよ。」
「せっかくだからって言ったじゃない。ほら、予習予習。」
「えー…」
4人はしぶしぶ彼女についていき、またあの場所に戻ってきた。夢のような明るい空間とは違って以前暗い夜を赤い月が不気味に照らしている。
「…あれ、そういえばまだ夜が明けてないのね。」
「そうよ、ちゃんと夜を明かすためにもアメンドーズを倒して狩りを全うしないとね。」
「だからなんで私たちにそれを押し付けるのよ…」
「文句言わない、やる、いいね?」
「……」
なんだかこちらをずっとにらんでいるようだがそれは無視する。奴はずっと同じ場所にいた。庁舎の正面の壁に張り付いたままこちらをずっと見ている。しかし全員で近づいたとたん奴は飛び上がりこちらに落ちてきた。
「ほー、やろうってのね。じゃああとは任せたわ。」
「うぇ、本当に私たちでやるのね。」
「もうやるしかないのです…」
彼女は遠目から戦闘を観察する。いまだに未熟な部分も見えるがチームで戦うことを考えるなら互いにカバーできてるてるから、十分だと思う。さて、彼女はなにもただずっと観察しているわけではない。4人を邪魔する輩から守るためだ。例えば…
「あんた、吹雪をやったのね。」
「だとしたら…?」
「殺す!」
そう提督の奴隷どもとかだ。わざわざ話しかけてこずに後ろからズドンとすればよかったのに。まぁ、そんなに殺気を出していたら後ろからでも普通にばれてるが。殺すといっていたが、確かに殺す気満々だ。持ってる槍をでたらめにさしてきている。だが、ちゃんと冷静さもあるみたいでちゃんとこちらの攻撃は避けてきやがる。生意気な。我を忘れているなら適当に避けて一発切りつけてやれば終わるのに。
「あんた、なんで吹雪を殺したのよ!あんなになかよくしてやったのに!」
「殺されかけたんだからしょうがないじゃない。」
「じゃあ、おとなしく殺されときなさいよ!」
「それは無茶な話ね。」
「いやってんなら今ここで私が殺してあげるわ。」
「お断りするわ。」
叢雲が槍を突き出したのを避けた一瞬のスキをついて彼女は叢雲の右腕を切り落とした。その激痛に叢雲は府毒うめきながら後ろによろめいた。彼女はそ個に追い打ちをかけるようにさらに切り付ける。
「う…くっ。」
「残念よ。もう少し仲良くできると思っていたのに。」
「くっ…この化け物。」
「ふふ、化け物で結構。」
彼女は叢雲の首へ刃を滑らす。叢雲の首は彼女を恨む表情のまま後ろへ落ちていった。
「雑魚いわね。はー、これで3人目かしら。あと…3,4人ってとこかしら。来るのかしらね。来たら来たでやるし、来ないならそれでもいいんだけど。」
後ろではまだどっしんどっしん音がしているのでまだまだ戦闘は長引きそうだ。
「…ん、どうしたのあんた。」
「死んじゃったのです…おしつぶされて…」
「あー、なるほど。ま、がんばって。」
向こうから電がやってきたのでどうしたのかと思ったが、なんだただ死んだだけか。押しつぶされたといっていたな。
その後もなんどか死んでは戻っていくのが見えたが。やく1時間後やっと4人が戻ってきた。
「遅かったわね。」
「これでも頑張ったのよ…あれ、これは…叢雲さん?」
「殺そうとしてきたから殺し返してあげたのよ。それにあなたたちの邪魔されたら困るしね。」
「そう。」
「……」
「あ、月が戻っていくのです!」
電の言う通り赤かった月が元の色に戻っている。同時に雰囲気もロマを倒す前に戻ったようだ。と、月の様子を見ているとその影を何かが通っていった。
「ん?あれは何?」
「あれは…なにかの飛行機ね。」
「飛行機?どこから…というか、あれどこに向かっているのかしら。」
「えーと、まっすぐ行ったとしたら…本土、かしら?」
「本土?ああ、そういえばここ孤島なんだっけ。でもどうして本土に飛行機なんて飛ばす必要が?」
「も、もしかして私たちのことを報告するつもりなんじゃ?」
「まさか。だとしても何か困るわけでもないし。そもそも今のこの現状……あー、はいはい。なんとなくわかったわ。」
「目的が?」
「犯人もね。多分赤城か加賀でしょうね。目的は…多分響の言うとおりかしら。」
「え、赤城さんと加賀さん!?な、なんで。」
「そりゃあ、いままともに艦娘してる空母ってあの二人だけだし、本土に艦載機よこして何をするつもりなのかは…よくわかんないけど。ま、結局私たちにはそんな影響はないでしょ。ここに来ることもそうそうないでしょうし。」
「え、もう来ないの?」
「私はね?別にあなたたちが来たければ好きなだけ行けばいいのよ。」
「そっかー。」
「じゃ、今度こそ帰りましょうか。まだまだヤーナムの狩りは終わらないわよ。」
「うげぇ、まだあるの?」
「なーにいってるの。これから本番よ。アメンドーズともまた戦うわ。」
「もう踏みつぶされるのは勘弁なのです…。」
「あのレーザーもね…。」
「響?どうしたの?」
彼女は4人を引き連れて帰ろうとしたが響だけが依然として叢雲の死体を見つめて動こうとしない。
「どうしたの響。帰るわよ。」
「ど、どうした3人ともそんなに平然としていられるんだい!いくら狩人になったからって、いくらヤーナムであんなに死んだからって急に冷酷になりすぎじゃないか!?私でもさっきのアメンドーズだとかあの艦娘の恰好した化け物とかは平然と殺せるけど、いくら何でも仲間に対してあんなに冷酷にはなれないよ!」
「響、あれは敵なのよ。もう仲間ではないの。」
「でもまだ会話できたじゃないか。」
「話しはできたけどまるで聞いてくれなかったじゃない。」
「それに響ちゃんももう殺すしかないってわかってたじゃないですか。一緒に長門さんを殺したのです。」
「それは…本当に話を聞いてくれなかったから…そ、そうだ。私は殺してしまった。でも私はそのあとに弔った!ちゃんと手を合した!でも暁たちはすぐにその場から去ったじゃないか!手ぐらい合わせたらどうなんだい!」
いまだにグダグダいう響を無理やりにでも帰らそうかと思った彼女だったが動いたのは意外にも暁だった。ゆっくりと響に近づき何か見せているらしい。何を見せているのかはここからは見えない。
「……響。」
「な、なんだい?」
「これ。」
「これ?この頭蓋骨がどうかしたのかい…まさかこれ!」
「なんだと思う?」
「暁…なんてことをしたんだ…!暁、狩人になってからどこかおかしいよ!私の姉はこんなことする奴じゃなかった!」
「…私は変わってないしそこまで残酷じゃないわよ。」
途端に響が気絶した。暁は気絶した響を重たそうに運んできた。
「なーにしてきたの。頭蓋骨とか言ってたけど…」
「ん、ちょっと狂人の智慧をね?」
「…はぁ、また狂人の智慧で気絶したの?響は耐性ないわね…」
「しょうがないわよ。一番周りを見てたんだもの。一番精神がまともだったのよ。」
「…それ、遠回しに自分が狂ってるって言ってるようなものよ?」
「自分のことは自分が一番知ってるの。」
暁が響を抱えて歩いている背中を眺めていると雷電姉妹が寄り添ってきた。
「ねえ、最近暁が怖く見えるんだけど。」
「電もちょっと怖く感じる時があるのです…」
「うーん、私も我ながら少し恐ろしく感じるわ…私あんな感じに見える?」
「え…うーん、たまに?」
「そう…」
まぁ、今いる艦娘は自分たちのコピーだから似ているのは当然なのだが。しかし、本人はそのつもりじゃないかもしれないが暁は変わったと思う。多分自分より変化が激しい。
「あー、上位者の叡智はやりすぎたかしらね。」
多分最初に上位者の叡智を与えたのがまずかったのだろう。あの時はちょっと雰囲気に酔っていたというか好奇心に負けたというか…。実はあの後に少しだけ反省してたりしたのだ。あの後も暁は狂人の智慧やらなんやらよく砕いていたし、啓蒙がたくさんあるのだろう。
「…うーんまあそれはそれでいいか。」
別に彼女は協調性だの人間性だのくそどうでもいいので、狩りさえ楽しんでくれればそれでいい。むしろ彼女が心配なのは響の方だ。
「…帰りましょうか。」
再び彼女に暇な時間が訪れた。あの花畑、樹の前に立つ石碑のさらに前で机を置き、彼女は紅茶を飲みながら読書をしていた。机を挟んだ向かいでは彼も同じように読書をしているが両手に本が握られており頭も左右を行ったり来たりしてる。
「…そんなに無理して読まなくてもいいのに。」
「……」
「うふふ。狩人様は勤勉ね。」
あちらから戻ってくるときに彼女は4人に手伝わせてあの部屋にあった本をすべて運び出した。すると彼が彼女が持ち帰った本に興味を示したのだ。夢から離れられない彼にとって新たな娯楽になり得そうなものだったからだ。だが当然彼は日本語は読めない。そこで彼女がわざわざ辞典を用意してきたのだ。
「あ、そうだ。聞きたかったんだけど死にかけの私を助けたのって狩人様?」
「……」
「え、違うの?じゃああれ誰だったのかしら。」
「あー、もう!」
ふとどこからか叫び声が聞こえてきた。暁の声。また何かにぼこぼこにされて帰ってきたらしい。
「……」
「ええ、ほんと。おかげで聖杯ダンジョンに専念するしかなくなったわ。」
「……」
「…その時がまだ来ないことを願うわ。」
「……」
「ええ、すっかりね。なーんか、変な友人もできたし、今思えば結構いい経験だったかもね。」
静寂が多かった夢も今は騒がしいことが多くなった。彼はそのことをどこか喜んでいるらしい。まだ4人と会話することができないのが残念らしいが。きっといつか4人も会話できるようになるだろう。
「…はぁ、4人が私を超えるのはいつになるかしらね。」
気づけばもう最終回なんですね。
大学生になってから投稿頻度が落ちてしまったのは本当に申し訳なかったと思います。勢いで始めてしまった分、何度も構成を変えることがありました。そのせいで既存の設定に無理やりつなげることもあったので不自然なところなどがあったと思います。
最後まで読んでくださった皆様には感謝しかありません。この小説をおもしろいと思ってくださりありがとうございました。
それでは、あるかわからない次回作でまた会いましょう。
誤字脱字等ありましたら遠慮なくどうぞ。