昼間は冒険者 夜は銀髪盗賊団 作:キムチの気持ち
ダンジョン攻略が始まってから1時間になるが、経過はすこぶる順調である。大小様々なトラップをくぐり抜け、いくつかの硬貨と装備品を見つけている。そろそろ最深部にたどり着く頃だろうか。
「なあクリスさんよ、これ俺いるかい?」
「どうしたのさ急におセンチになっちゃって」
「いやだってよ、トラップはクリスが全部見つけてくれるし解除もしてくれるし...お宝だってクリスのスキルのおかげだろ?クリスのダンジョン探索は俺が何かする隙がないくらいには熟れてるじゃないか」
「全く、わかってないなあ。君がいなかったら誰がその戦利品を持つのさ」
荷物持ちかよ...
「そんな顔しないで、報酬はちゃんと山分けだよ。君がいなきゃ私は半分だって持って帰れないんだから」
確かにお宝を抱えながらダンジョン探索をするのは危険だ。モンスターとの戦闘だってここまで何度かやってきた。その際悪魔系モンスターの時のクリスは怖かった。まるで宿敵を見つけたかのような目で斬りかかっていったのだ。
「そろそろ最深部に着くよ。このレベルのダンジョンだと主はキメラかゴーストかな」
確かに道中いたのは割と低レベルのモンスター達だったからボスはその辺が妥当だろうか。一応の戦闘準備を済ませて重い扉を開け中に入る。中は広くて天井が高く、柱が何本かたっている少し殺風景な部屋だった。
キメラならば食べ残しが散らばっていたりするため、今回はゴーストだろうか。
「クリス、敵感知スキルに反応はあるか?」
「1番奥の柱の影になんかいるね。ただ、なんかすごく嫌な臭いがするよ」
嫌な臭い?今のところは腐ったような臭いも生臭い臭いもしない無臭空間であるが...
すると奥の方から足音が聞こえ...
「よくぞここまで辿り着いたなあ。冒険者たちよ。我が名はアンsh...危なっ!!」
モンスターを見つけるやいなやクリスが走り出してしまった。しょうがないので無力化してから話を聞こう。
「『チェイン』」
「は?なんだこれは、こんなスキル見たことないぞ!?」
「でかしたよサクマ!それじゃあトドメだ」
「ちょっと待て一旦説明しろ。こいつはなんなの?」
「見たらわかるでしょ?!薄汚い悪魔だよ!」
俺にはタキシードを着た人間に見えるが...ダンジョンの奥底にいるということは悪魔なのだろうか。
「それもかなり上位の悪魔だね。さすがに公爵級ではなさそうだけど...」
すると悪魔が自身の形を変えて鎖から脱出し距離をとった。
「全く貴様らはなんなのだ?特にそっちの小僧!口上の最中に攻撃を仕掛けるのはマナー違反であるぞ!!」
一理ある
「くそ以下の悪魔の口上なんて聞くだけ時間の無駄でしょ?黙ってさっさと死んでくれない?」
さっきからクリスがめちゃくちゃ怖い。ついさっきまで活発でボーイッシュな美少女だったのに今は神敵滅ぶべしって感じの顔してる。悪魔にここまでの嫌悪感はエリス教徒だったのかな?思えば名前といい髪色といい少し似てる気がする。ペットは飼い主と似る的なあれだろうか。
「今すごい失礼なこと考えなかった?」
気の所為である。
「本当になんなのだ、始まりの街に手頃なダンジョンを構え最深部に我がいれば絶望の悪感情を食せると思ったのに...まあいい、死ぬほど痛めつければ絶望を見せてくれるだろうしな」
「頭悪いこと言わないでくれる?上位の悪魔でもそのレベルの知能だから人に寄生してでしか生きていけないんだよ」
上位悪魔というのは本来国をあげて討伐、もしくは撃退するような存在で、最低でも討伐隊を組まなければ戦える相手ではない。何故ならば彼らの体の多くは魔力そのものでできており、その高い魔力値にものを言わせ爆発魔法を連射してくるのだ。公爵にもなるとさらに固有スキルがついてくる。
正攻法ではとても叶う相手ではない.....ならば
不仕打ちをしてしまえばよいではないか。
そして俺はこっそりと『タイムラグ』のスキルを発動させた。
「先程からそちらの男はなぜ黙っているのだ?怖くて震えているのならば悪感情を出さんか」
「そうだよ!サクマも黙ってないでなんかいいなよ!」
すると2人の視線の先から俺の姿は消え...
「悪かったな。これで許してくれ。」
悪魔の後ろから声が発せられた。
驚いた様子の悪魔が振り返るがもう遅い。俺の剣先は既に悪魔の首に触れている。
「きさまっ...」
そのまま勢いに乗せて悪魔の首を飛ばす。悪魔は魔力体であるため骨がなく、なんの抵抗もないまま首が飛んで行った。
念の為残った胴体の四肢を落としてクリスの方を見る。
案の定口を開けてポカンとしていた。
「...目覚める時期を間違えたジャイアントトードみたいだな。」
「ええっ!?今のなに?何をしたの!?」
わかりやすく慌てるクリスをよそに冒険者カードを確認すると悪魔の名が記載されていた。名乗りすら出来ないまま一瞬で退場となった哀れな悪魔よ。
「今のは俺の必殺技デス。必殺技につき詳細は伏せさせていただきマス。」
「えええ.....そんなのありなの??」
「いいから早くお宝を回収するぞあわてんぼうのジャイアントトード」
「何その不名誉で長いあだ名は!!」
◆◆◆◆◆
ギルドに戻ると報酬を分配された。俺の取り分は50万エリスとなかなかの儲けである。ちなみにあの悪魔は指名手配もされていなかったため報奨金は出なかった。
...クリスはなぜギルドに着いてから目の前でこちらを睨んで来るのだろうか。
「で、説明してくれる?さっきのスキル。仕事柄情報は入ってくるけどあんなの見たことないよ。魔力の消費もなく狙った位置にテレポートするなんて。それによく考えたらあの鎖だって...ロープ持ち歩かないでいいなんてずるい!!」
「うるさいなー...エリス様がくれたんだよ。」
「そんなのあげた覚えはないよ!!」
「は?」
「あ!....」
「なんか今妙なこと..」
「それじゃ!私用事あるから!しばらくアクセルに戻らないから!!」
...行ってしまった。あんまり急ぐものだから引き戸を押して出ようとして頭をぶつけてら。たまにはこうゆう騒がしいのもいいかもしれない。
「さて、俺もそろそろ宿にもどろうかね...」
『タイムラグ』はその名の通りラグを作り出すスキルです。
主に透明化して移動し、瞬間移動に見えるものと、残像が着いてくるものの2種類です。
オンラインゲームでイライラするやつです。