世界観を楽しんでいただけたら幸いです。
「オヤジさん、この猪肉の串3本ください!!!」
「あいよ〜っ!!嬢ちゃんおつかいか?偉いな〜」
「いや、旅で来てて。早いうちに宿屋をとっておきたいんですが良いところ知ってますか?」
「小さいのにひとり旅かい?ここらは造船所があるから海賊もウロついてるが、嬢ちゃん一人で大丈夫か?」
「あ、私強いんで大丈夫ですよ?見た目をちょっと変えてて」
本当はそのままの姿だが、こう言った方が物分かりが早い。私だって変化する技が欲しい。そうすれば成人女性を演じてこれ以上舐められることはないだろうに。まぁ悪魔の取引を持ちかけるときはこれ以上ない見た目だ。
私は悪魔の実の副作用で見た目が幼女のままであるとされている。実際は違う。おそらく悪魔は年を取らないのであろう。しかしなぜ幼女体型に落ち着いたのだろうか。まぁ戦闘において小さな身体は小回りの利く大変便利な肉体と言えるが、その思考が反映されたとしたら私は性格までも軍人だと言うことに他ならない。なんだか不快だ。そもそも金を稼げれば仕事なんてなんでもよかったし、人並みの幸せも欲しいから結婚したら辞めるつもりだった。なのにこの見た目じゃロリコンにしか好かれないじゃねぇか。
そんなことを考えながら屋台で買った肉を貪る。ウォーターセブンに来たことで目標は達成されたが、海列車に乗って隣町まで観光するつもりだ。そういえば、まだエニエスロビー事件は起こってなかったか。あれ?じゃあルフィがガープの孫だってまだ知られちゃいけないんじゃ?やべ、前世の記憶もあってつい朝礼で口走ってしまったが、あれ話しちゃいけないことだったんじゃ?
私はすぐさまカルモネに連絡する。
「と言うわけで、つい、うっかりガープ中将の孫がモンキー・D・ルフィと言ってしまったが、思えばまだ口外されていなかった。すまん、お前からみんなに伝えといてくれ。」
「わかりました。さらっと驚きの情報を聞かされたのでてっきりそう言うものだと思っていました。それにしても末恐ろしい能力ですね。人の記憶が見えるんでしたっけ?」
「あぁ。見ようと思えば見れる。初対面の人間の記憶はほとんど見てる。あ、でもお前が夜な夜な私で抜いてることはお前の部屋が空いていたから見えただけだぞ?」
「おーーーっとっ!!!!やめてくださいっ!!!中将はまたそうやって僕を脅して!!もう勘弁してください!!!」
「まぁそうだなこれ以上畳み掛けると私がセクハラで訴えられるな。でも鍵は閉めろよ?見られるのが好きなのか?っていかんいかん、カルモネの反応がいじらしくてつい苛めてしまう。」
勘弁してください、と言う声からしてカルモネは今赤面状態だろう。人の魂以外ではこうやって恥を使って辱めることが悪魔にとっての快感であった。
カルモネは私の空襲部隊で右腕として働いてもらっている。私が自らメンバーを選び、鍛錬させた部隊は、海軍唯一の空から奇襲をかけられる部隊として有名だ。私をはじめとしたメンバーは全て能力で空が飛べる。10名の精鋭部隊だが、ほとんどの場合5人以下で任務を行っている。私は週7勤務で毎日働いているため、毎回引率するがそのほかのメンバーは事務作業で海軍本部にお勤めをしている。
さながら勤務状況だけはブラック企業にいた時と変わらないが、任務自体が早く終わればそのあとは休みなのでほぼ半日は惰眠を貪っている。その噂が伝わったのか、私の部隊に入りたいと言う海兵が増えているが私の地獄の試練を乗り越えられるヤツなんて早々いない。死んだほうがマシだと言われるぐらいだ。
私は連絡を終え、オヤジさんに教えてもらった宿屋に部屋をとった。それから街を探索し果物を買い込んで一日を終えた。綺麗な街並みもそうだが、ここの人は気さくで親しみやすい。
前世ではアニメや漫画に夢中でほとんど家に引きこもっていたからこの世界では世界を見て回りたい。それに多くの人間と取引して悪魔としての力をつけておきたいのだ。悪魔は魂を食べた数だけ強くなる。使える技(スキル)が増えるのだ。魂が一定数に達すると一つ特殊能力を使えるようになる。といっても最初はほとんど使い物にならないが、スキルを使いまくって成長させていくのだ。ゲームみたいだなんて我ながらに笑える話だ。
ステータス画面はないが、私が魂で得た能力は
火・水・土・木・風・雷・光・闇などの属性魔法
目を合わせることで相手を支配できる洗脳能力
景色を自由自在に透視できる千里眼
この3つだ。
魔法で怪我も治せるが、そもそも怪我することはほとんどないし、したとしても傷跡すら半日で治る。悪魔は基礎ステータスが高いのである。
そして悪魔の特性か『取引』という能力がある。それは悪魔と人間との間で交わされたやり取りを終えると悪魔である私の存在を忘れてしまうことである。つまり私が悪魔であることを取引相手の記憶から消すことができるのだ。ちなみに知り合いと取引をすると悪魔であること以外は覚えているし、取引の時自分を悪魔だと打ち明ける必要はないためほとんどの場合この能力は使っていない。逆にいえば私を悪魔だと気付いた人には何がなんでも取引を行い忘れさせなければならないのだ。それに私が欲しがるのは魂だけじゃない。まぁそれは追い追い話すことにしよう。
元々悪魔は神様と同じ位置にいたと言うが、神は無条件で力を与えるのに対し悪魔は力と同等のものを奪うことが条件だ。だから悪魔が善意で人を助けたりはしない。そこに面白さがあるかどうかが重要なのだ。
だから海兵とはいえ、面白い海賊や人材とはなるべく取引をしたい。モンキー・D・ルフィにも取引相手になってもらいたいものだ。
だって彼は、、、
「んで、変装もなしに何しにきた。エブリード。」
「つれないなぁロブ・ルッチ。せっかく見にきてやったのにさ。それに私がこの街に来たのは観光だよ、観光。」
「観光だと?冗談も見た目だけにしておけ。あと少しで長期任務を終えることができる。お前が邪魔をするならここで排除する。」
「あははっ〜!!!お前に負ける気がしない。それに、忠告しに来たんだ。お前は神に好かれてはいるが、運がない。敵を間違えると痛い目に合うぞ、昇進したいならもっと慎重になれ。」
ルッチは私の言葉の真意を確かめるように睨みつける。私とルッチは7年前からの知り合いだ。ある任務で配属されていたルッチと私の任務がダブルブッキングになっていて鉢合わせになる形で対面したのだが、私が既に処分対象を殺害していたことで少し恨みを買ったのだ。私の実力は処分対象との戦闘でルッチにバレているし、流石に格上だと思ったのか喧嘩は吹っ掛けられなかった。
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だよ。私は君の任務が失敗に終わることに賭ける。君が勝ったら私は君の下僕になっていい。どうだ?賭けに乗らないか?」
「ふっ、意味がわからん。お前が私の下僕になるだと?それは俺になんのメリットがあるんだ?それに、俺はグランドライン前半の海にいる海賊どもに負ける気はしない。」
「だったら、賭けて損はないだろ?お前が負けたら私はお前の下僕として、なんでも命令を聞く。金を稼げと言われたら金脈を掘り当てるし、お前好みの容姿に変化して性欲処理もしてやろう。お前に死ねと言われれば死ぬし、戦えと言われれば命ある限り私の力を発揮すると誓う。これは一種の挑発だよ。5年もかけて行って来た任務が一日でおじゃんになってしまう人間の泣きっ面を拝みたいんだよ。」
「お前、やっぱり何かするつもりだな?」
「いいや、私じゃない。ある海賊さ。私には未来が視えるのですぅ〜〜」
私は人差し指と親指で輪っかを作りそれを目に当てポーズを決める。
分かりやすいほどに相手をおちょくり取引を持ちかける。大体の人間は冗談のつもりで取引に応じるが、ルッチは堅物であるために勝てる見込みのある勝負にしか乗ってこない。だから今回、私は一見するとルッチが勝って当たり前の勝負を持ちかけたのだ。
原作を知っている人間からすれば勝負に乗ることはないだろうが、ルッチはこの世界の人間だ。
「ムカつく表情はやめろ。それにお前とは賭け事はしない。それに万が一、私が負けるようなことがあればその代償はなんになる?」
「あ?あぁ、お前が負けたら、冷酷な心を貰おう。」
「こころ、だと?」
ルッチは眉を顰め、そんなものどうやって奪うのだと聞いてきた。私は自分の悪魔の実の能力の一つだと説明をつける。そして「そんなことをしてどうなる?」と聞かれた私は答える。
「お前が何故、サイファーポールの人間になったか分かるか?それはお前が冷酷な人間だからだよ。人を殺しても何も感じない、正義のためなら自分の手を汚すことを厭わないからだ。だからお前は政府の諜報機関に配属された。そして私はお前のその冷たい心を奪いたい。奪ったあとのお前を見てみたいのさ。」
「冗談は見た目だけにしろと言っている。俺はお前を信用していない。だが、任務は完遂させる。賭けるまでもない。」
「ということは勝手に賭けてもいいってことだね?了解っ!!とにかく頑張ってね〜?もしCP9クビになったら私の部下にしてやんよ。じゃあね〜っ!!!」
「おい、勝手なことをっ!!!それにお前の下になど付かんっ!!!おい、待て話は終わってない!!!」
呼び止める声を背に私はルッチの部屋を後にする。千里眼でルッチの住む建物を見つけて夜中に凸ったのだ。再会した私を見たルッチは分かりやすく嫌悪感に塗れた表情になったが、天竜人と貴族にしか回らないブランデーを渡すと渋々部屋に入れてくれたのだった。
私が交渉したのは全て私の為だ。心は魂には劣るが美味い。それに心を奪った人間は性格が変わる。どう変わるかは本人次第だ。それにルッチの強さに冷酷は似合わない。心がある方が強くなれる人間の方が多いからだ。
彼にはもっと強くなってもらってあわよくば、本当の正義を見つけられる人間になって欲しいと思う。余談だが、私はここ5年以内に世界政府と海軍が戦う戦争がやってくると思っている。どんな形であれ、そうなる仕組みになるはずだ。海軍と海賊は手を組んで世界政府を潰しにかかる、そう予想している。
その時ルッチくんには私達の味方になってもらいたい。そう密かに思考を巡らせた取引だったのだ。
神様に好かれないならば、悪魔に好かれればいい。
そう囁いて悪魔の力を人間に授けたのが、私の祖先の悪魔なのだから。
悪魔は勝敗にこだわらない。しかし退屈な世界は耐えられない。
私は私の娯楽のために、人間と取引をする。