英雄のいない世界で生まれた俺は   作:夕映えの戦士

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18話

「パゴスか…。懐かしいな」

 

俺は町へ放たれた分子破壊光線をバリアで防ぐ

 

「ようやく来たか」

 

ウインダムとキングジョーが現場に到着したようだ

 

「パゴスは攻守ともに優れた怪獣だが弱点さえつけばあいつらでも倒せる。俺の出番はないか…」

 

そう考え、戦闘中の彼らに背を向け帰ろうとすると赤い傘を持った昭和風の格好をした女性が建物の陰にたたずんでいた

 

「おい!そこはあぶねぇから避難した方がいいぞ」

 

俺は彼女に近づくすると彼女はパゴスに向かって手をかざし、粘性のある液体を飛ばした。すると暴れていたはずのパゴスがそこから消失した

 

「お前人間じゃねぇな?いや乗っ取ってるって言った方が正しいか?」

 

俺は腕から振動波を生み出し彼女を吹き飛ばす

 

「正体を現したらどうだ?誘拐怪人ケムール人」

 

「お前人間じゃないな?」

 

彼女の顔がケムール人へと変化する

 

「目的はなんだ?どうせ若い人間の肉体なんだろうが」

 

「ほう。我々のことを知っているのか?我々の来訪はこれで2度目だ。1度目は54年前…」

 

「お前たちは高度な科学力を持ち、大幅な寿命の延長を可能にした。しかし体の老化は防げない。だから地球人の若い肉体を狙った」

 

「そうだ。私の同胞は日本に降り立ち多くの人間を誘拐した。そして多くの同胞達が人間との合成手術を受けた。しかし私が合成手術を受けた際、事故が起きた」

 

「事故?」

 

「人間と混じり合い、2つの肉体を得てしまったのだ」

 

「なるほど。2度目はその肉体を使って人間に紛れ、人間を誘拐しようって魂胆か」

 

「理解が早いな。出来れば邪魔をしないでほしい」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「こうするまでだ」

 

彼女の体は完全にケムール人へと変化する。そして頭の先端の突起から液体を撒き散らした。俺はそれをジャンプで回避し、怪人態へと変身した

 

「やはり人間ではなかったか」

 

ケムール人は独特な走り方で俺の方へと向かってくる

 

「肉体改造されてるだけあってかなり早いなだが…」

 

俺は地面を蹴り、一気にケムール人の目の前まで移動する。ケムール人は液体を撒くが、しゃがんで回避し、それをバネに起き上がりながら腹パンする

 

「自動車程度の速度なら亀と大差ない」

 

吹き飛んだケムール人は何とか起き上がり逃走を図る。しかし、突然頭を抱えて苦しみ出した

 

「なんだ?」

 

ケムール人の姿が女性の姿へと変化していく

 

「本来の肉体の持ち主が抵抗しているのか」

 

しばらくすると完全に人間の姿に戻りこちらに近づいてくる。そして俺の肩を掴んで語りだした

 

「お願い!私を殺して!意識がある今のうちに!」

 

「悪いがちょっと事情があってな。俺はこの文明に手を出せない。お前を殺すことは出来ない」

 

「私の体は半分ケムール人!だから!」

 

「だが半分は人間だ。俺にはお前たちを分離する術を持っていない。自殺は出来ないのか?」

 

「何度も試したわ…。でもあいつがそれを許さない」

 

「とりあえずしばらくあんたの傍にいる。ケムール人は普通の人間にとっては脅威だ」

 

「ありがとう」

 

俺たちはしばらく他愛のない事を話しながら歩く。するとボロい観覧車の見える公園に辿り着いた

 

「あれは…ハルキか」

 

そこには武装をしたハルキが何かを探すように歩き回っていた。おそらくパゴス消失の原因を探っているのだろう

 

「懐かしいなぁ…」

 

ハルキが呟く。すると彼女がハルキに近づき話しかける。俺は物陰から様子を伺うことにした

 

「ええ…。本当に懐かしい…」

 

ハルキが声の方向へ振り向く

 

「何故…動いてないのかしら…?」

 

「え?」

 

「観覧車が…動いてない…」

 

「止まってもう10年ですよ。何しろ昭和の大昔に建てられた激渋アトラクションですから」

 

彼女は観覧車を眺め続ける

 

「乗ったことあるんですか?」

 

「ええ。子どもの頃何度も」

 

「俺もです!親戚の家が近くにあってよく連れて来てもらってました」

 

「頂上から見ると街並みがとても綺麗で…」

 

「夜景がまた抜群なんですよね」

 

「まるで王女様になった気分」

 

彼らの思い浮かべる景色はきっと違うものなのだろう。そう考えながら2人の様子を観察する

 

「ここに来れてよかった…。これでもう…思い残すことはないわ」

 

「え?」

 

彼女がハルキに背を向け去ろうとする

 

「ちょっと待ってください!」

 

彼女が振り返る

 

「名前…聞いてもいいですか?」

 

「カオリ」

 

「カオリさん。俺ハルキって言います。ストレイジの隊員です。今任務中ですけど、もし悩みがあるならお話くらい聞きますよ」

 

おそらくハルキの目にはカオリは自殺願望者に写ったのだろう。あながち間違いではないが

 

「ストレイジ?」

 

「あれ?知りません?怪獣退治の専門家。怪獣や宇宙人からみんなを守る。それが仕事です」

 

「怪獣や…宇宙人から…」

 

カオリは傘を落とし、ハルキに掴みかかる

 

「じゃあお願い!私を殺して!」

 

「はい!?」

 

「もうすぐ大変なことが起きる!手遅れになる前に今すぐ私を!」

 

「カオリさん!?待って落ち着いて」

 

すると突然カオリが苦しみ出した

 

「カオリさん?大丈夫ですか?」

 

「寄るな!!」

 

そんな時ハルキに通信が入る

 

「聞こえてます!今取り込み中で!」

 

カオリがハルキに手をかざす

 

「不味い!レイキュバス!」

 

俺は物陰から飛び出しレイキュバスの力を纏う。そして放たれた液体を火炎で燃やした。不意打ちに失敗した彼女は自身に液体をかけ、その場から消える

 

「あれ?ん?なんだこれは…」

 

ハルキが地面の液体に気がつく

 

「それに触れるな!」

 

俺は地面に散らばる液体に火炎を放つ。液体は可燃性のため、激しく燃え始めた

 

「うお!?あれ?あんたは!」

 

「よお。元気か?」

 

「俺たちのこと見てたのか?カオリさんは?」

 

彼女について言ってもいいものか…。おそらく言わなくても後々知ることにはなるだろうが…

 

「彼女なら消えたよ。さっきのパゴスと同じようにな」

 

「そんな…」

 

「正確な答えは自分の目で見るといい。彼女はお前にしか助けられない」

 

「答え…?それに俺にしか助けられないって?」

 

「安心しろ俺も手伝ってやる」

 

俺はネロンガに切り替え、透明化で姿を消した

 

「おい!待て!」

 

俺はその場を後にした

 

「へぇ…。ケムール人ねぇ」

 

部屋に戻った俺はグリードに今日あったことを話した

 

「ケムール星は確かメフィラスの支配下にあったはずだろう?」

 

「ええ。なんだったら人とケムールの合成手術の技術はメフィラス星のものだし」

 

「2人を分離させる手段ってのはないのか?」

 

「まず無理ね。合成の技術はかなり高度で細胞レベルで定着させるものなの。そうね…それこそ宇宙の針。ベリアロクみたいな常識から外れたものでゴリ押すしかないんじゃないかしら?話を聞く限り完全な合成をしているわけではないし、希望はあるわ」

 

「なるほどねぇ…。結局今回の件はZに委ねられてるって訳か…」

 

「どの程度かは分からないけど前回の反省を活かして今回はかなり効率よく誘拐するんじゃないかしら。だから私達も早急に対処しないとケムール星に飛ばされちゃうわ」

 

「さて、どうしたもんかねぇ…。ケムール人自体の戦闘力はゴミ同然だが能力も厄介だし、器が人間なせいで見つけづらい」

 

「とりあえず私は監視カメラをハッキングして探すからガイストくんは足で探してちょうだい。監視カメラだけでは限界があるから」

 

「わかった行ってくる」

 

俺は部屋を出て先程の公園へと向かった

 

「やっぱすぐに見つかるわけねぇか」

 

俺は付近を歩き回る。すると…

 

「よお。さっきぶり」

 

ハルキがそこにいた。こいつもカオリを探しているのだろう

 

「おいさっきのはなんだったんだ!?」

 

「あれ?まだ全貌をわかってない感じか?」

 

俺たちが会話をしているとハルキの無線から悲鳴が聞こえ、途切れた。宇宙人の波動を感じる。おそらく無線の相手はケムール人にさらわれたのだろう

 

「行くぞ」

 

「押忍」

 

俺とハルキは現場へと向かう。俺たちは倉庫の中へと入り、床に倒れているカオリを発見した

 

「大丈夫ですか!?カオリさん!」

 

ハルキがカオリに駆け寄る

 

「ハルキくん…」

 

「さっき自分の先輩の悲鳴が聞こえました!一体何があったんですか!?」

 

「私またやってしまったのね…」

 

カオリはおそらくヨウコが被っていたであろうヘルメットを見てそう言った。すると突然ハルキから銃を奪い取り、銃口を自分に向ける

 

「ちょっ何してるんすか!?」

 

ハルキは必死に銃を奪い返そうとする

 

「やめろ!」

 

ハルキはカオリから銃を奪い取った

 

「ハルキくん私を撃って!まだ人間として話せるうちに!お願い!何度も自分から命を絶とうとした。でもあいつがそうさせてくれないの!」

 

「あいつ?あいつって誰っすか!?」

 

カオリがまた苦しみ出す

 

「カオリさん。だっ大丈夫すか?カオリさん?」

 

彼女はハルキを突き飛ばそうとする。俺はハルキの服を引っ張り回避させる

 

「うお!?何するんすか!?」

 

「奴を見ろ」

 

ハルキは彼女の方を見る

 

「お前…。人間じゃないな?半分は人間、半分は…ウルトラマン!」

 

彼女の顔が一瞬ケムール人へと変わる

 

「私と同類だ」

 

ケムール人は先程の説明をハルキに話し出した

 

「時を経て、再び地球人誘拐が計画され、私は実行役に志願した。この姿なら、人間達に怪しまれないからだ。おかげでスムーズに計画のテストを行うことができた」

 

「それじゃあ…さっき自分を撃とうとした…。あれは…」

 

「地球に戻った途端、制御したはずのカオリの精神が時折主導権を奪うようになったのだ。故郷を思う人間の気持ちは実に強いものらしい。だが、そんな抵抗は無意味だ」

 

カオリは完全にケムール人へと姿を変える。そして突起からハルキに向けて液体を発射する

 

「危ねぇ!」

 

俺はバリアで液体からハルキを守る。弾かれた液体が地面に落ちている銃に当たり、消滅した。ハルキがそれに驚いている隙にケムール人は独特な走り方でその場から逃げ出す

 

「待てぇ!」

 

俺とハルキはケムール人を追いかけ外に出た。ケムール人は観覧車の前に辿り着くと、怪光線を腕から放ち、装置を取り付けた。ハルキが銃口を向ける。するとケムール人からカオリの人格が現れた

 

「ハルキくん!ケムール人は観覧車の頂上で爆弾を爆発させるつもりよ!」

 

「カオリさん!」

 

「あの中には人間を転送させる液体が詰まってる。爆発したら雨雲と混じりあって東京中に降り注ぐわ!」

 

「なるほど。そいつは効率がいいな」

 

「人間め!邪魔をするな!」

 

俺が感心しているとケムール人がカオリから主導権を奪い返す。そして観覧車を起動させる。ハルキはZライザーを構え、インナースペースへと入っていった。ケムール人も巨大化する

 

「俺も行くか…」

 

俺は怪人態へと姿を変え、巨大化する

 

「おいZ!あいつらを分離するにはお前のベリアロクしか方法はない。街への被害はできるだけ俺が守ってお前をサポートする。お前はそいつで叩き切れ」

 

Zは頷きケムール人の元へと駆け出す。ケムール人もZに向かって走り出しお互いに戦闘を開始する

 

「やはりケムール人の戦闘力は低いな」

 

Zはケムール人を圧倒的する。しかし、カオリのことを心配してか上手く攻撃できていない。ついにはケムール人のタックルによって吹き飛ばさされてしまった。するとケムール人が苦しみ出し、カオリの人格が現れる

 

「ハルキくん!私に構わずこいつを倒して!転送された人達を助けるにはそうするしか!」

 

彼女に諭されるがZは躊躇してしまう

 

「ハルキくん!」

 

ケムール人の人格が戻り、液体で攻撃し始める

 

「ギャラクトロン」

 

俺はギャラクトロンmk2の力を纏い、魔法陣状のバリアでケムール人の攻撃を全て防ぐ

 

「早くしろ!」

 

Zは地面に刺さったベリアロクを引き抜くとケムール人に向かってそれをかざした。ベリアルの目から怪光線が放たれケムール人に命中する。おそらく分離光線なのだろう。しかし…

 

「ダメだその程度の力ではあいつらを分離しきれない!」

 

「ハルキくん!」

 

カオリの人格が現れる

 

「ハルキくん!」

 

先程の分離光線の影響か、カオリはケムール人から上半身を抜け出し、ケムール人を抑えつつ観覧車の動きを止めた

 

「俺も手伝うか」

 

俺は腕にエネルギーを集中させ、輪っかを作り出しケムール人の動きを封じる

 

「ハルキくん!」

 

カオリの叫びに決心したZはデスシウムスラッシュで2人を引き裂きく

 

「ガイスティウム光線!」

 

俺はケムール人に光線を放って撃破し、Zはデルタクロスショットで爆弾を観覧車から離した。爆弾はデスシウムスラッシュによって生まれた異次元の穴に吸い込まれ、そのまま爆発した

 

「終わったか」

 

ケムール人が倒されたことで消滅した人々とパゴスは元の場所へと帰っていった

 

数日後俺はとある施設に忍び込んだ

 

「調子はどうだ?」

 

「私は元気よ。センターの人にも良くしてもらってるし」

 

「悪かったな。俺はお前を助けることが出来なかった」

 

「そんなことないわ。あなたがいなければ街にもっと被害が及んでいたかもしれないし、ケムール人を抑えることも出来なかったかもしれない」

 

「そう言われると少し報われる。お詫びと言っちゃなんだがお菓子を持ってきた」

 

「ありがとう。開けてもいい?」

 

「どうぞ」

 

「これは?」

 

彼女は箱からお菓子を取り出す

 

「そういえばそれが流行し始めたのは比較的最近だったな。それはマカロン。卵白を使った焼き菓子だ。食べて見てくれ」

 

「美味しい!」

 

カオリの顔から笑みがこぼれる

 

「そいつはよかった」

 

俺たちはマカロンを食べながら談笑を楽しんだ。54年の空白。俺には計り知れないものだが彼女ならきっと大丈夫だろう。そう思いながら小さなお茶会を楽しんだのだった

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