八幡side
4月17日の日曜日、今日はシービー初の大舞台である皐月賞の本番なのだが……朝から土砂降りだ。もうこんなに降るのかってくらい降ってる。この雨じゃ流石に先生も来るのは躊躇するんじゃないか?まぁそれは置いといて、俺とシービーは既に現地の中山レース場に到着していて、本場のレースを観戦している。
シービー「わぁ~見てよ八幡、ラチ沿いの芝が完全にめくれ上がっちゃってるよ~。これじゃ追込のウマ娘届かないんじゃない?」
八幡「あぁ……それに予報でもこの雨は1日続く予報だったからな、お前の得意な追込を直線まで待ってたら届かない可能性があるな。」
シービー「じゃあ作戦変える?」
八幡「いいや、出来れば作戦はこのままで行きたい。けどそうだな……もう少しレースを見て研究してもいいか?お前には不安を募らせちまうが。」
シービー「ん、全然いいよ。」
さて、パドックまでには作戦はある程度固めておきたい……が、どうしたもんか。やっぱ大外一気か?それともリスクを考えて作戦変更?柄にも無く色々と考えちまうな………
コンコンコンッ
八幡「?どうぞ。」
タリアト「入るぞ八幡。やれやれ、今日に限ってこんな悪天候とはな。」
八幡「先生!ご無沙汰しています。この雨ですからてっきり来ないものかと。」
タリアト「私は交わした約束は緊急ではない限り守る。そこに居るのがお前の担当か?」
八幡「はい、紹介します。ミスターシービーです。シービー、この人は俺にトレーナーのイロハを叩き込んでくれた大学時代の恩師だ。」
シービー「へぇ~八幡にトレーナーの事を色々教えたのってこの人だったんだ。どうも、あたしはミスターシービー。」
タリアト「ミスターシービーか……よろしく頼む。自己紹介をしてくれて申しわけ無いが、私は名を伏せていてな。済まないが八幡の師という事で納得してほしい。」
シービー「別にいいよ、まぁ言ってくれれば誰かに正体を言うなんて事はしないけど。」
タリアト「済まないな。今日のメインの皐月賞に出るとは聞いていたが、大本命に推されているみたいだな。」
八幡「えぇ、おかげさまで。まぁ前走と前々走の内容が良かったからだと思いますが、今日のこの天気だと不安も出てきます。」
タリアト「そうか……確か君の脚質は追込だったな。この雨ではそれも不利か。」
シービー「………じゃあさ八幡、このレースあたしに任せてくれない?」
………はい?
シービー「難しいっていうのは八幡達見れば充分伝わったよ。でもこのまま悩んでてもしょうがないからさ、ひと思いにあたしに全部やらせてよ。」
八幡「………だがなぁ。」
シービー「大丈夫、あたし絶対に勝つから。」
タリアト「であれば、お手並み拝見といこうか。」
八幡「っ!先生……」
タリアト「八幡、本来であれば担当トレーナー以外の者がこれから走るウマ娘に口を出すのは言語道断。だが……この目を見てしまってはな。」
シービーの目はいつもの目とは違い真剣そのものだった。本気で勝ちに行くつもりなのがハッキリと見える。
タリアト「ミスターシービー、分かっているとは思うが、負けた時の言い訳に八幡を使う事は私が許さん。もし仮にお前がレースに負けたとして八幡を責めるような事があれば、私がお前を八幡の担当から外す……そのつもりでいろ。」
シービー「そんな事するわけ無いじゃん。八幡が悪いわけ無いんだから。あたしが八幡にお願いしてあたしが全部責任を持つって今言ったんだから。それに勝った時も八幡の事を言うしねっ!」
タリアト「?それはどういう事だ?」
シービー「八幡が朝から現地入りしてあたしの為に色々と作戦練ってたって言えば、取材の人達だって変な事聞いて来ないでしょ。」
タリアト「………ふっ、そうか。八幡、お前は良い担当と出会えたみたいだな。」
八幡「……はい、そう思います。」
タリアト「ではミスターシービー、作戦内容くらいは控え室で八幡に伝えておくように。お前のトレーナーでもあるのだ、その辺りはしっかりしておけ。」
シービー「うん、分かった。じゃあさ八幡、あたしの勝負服見てよ!この前は採寸とかあたしとお手伝いさんだけでやったから八幡見てないでしょ?初お披露目だよ~♪」
八幡「いや、パドックの時でよくないか?」
シービー「良くない良くないっ!パドックじゃ濡れちゃってホントの姿が見れないじゃん!だから此処で濡れてない勝負服を見せるのっ!」
こうやって言い出したらシービーは聞かないっていうのは学習済だ。だから俺はこういう時こうする事にしている………
八幡「好きにしなさい。」
シービー「オッケー♪じゃあ八幡、着替えるから少しの間この部屋から出てねっ♪」
八幡「はいはい、分かってるよ。」
タリアト「……八幡、お前の担当はお前にはこんな感じなのか?」
八幡「いえ、これはまだ序の口です。普段はもっとベッタリしてきます。」
タリアト「そうか………分かっているとは思うが、問題にならない程度にな。」
勿論ですよ先生……俺だってそんな事、起こしたくありませんし。
シービー「ほら八幡、早く出てよ~!」
八幡「分かった、今行くから。」
シービー「すぐそこの扉で待っててね!!」
クソ、少し暇を潰そうと思ってたが先手を打たれたか………
次回、いよいよ皐月賞!