フジキセキside
やぁ、こうしてお話するのは初めましてかな?私は栗東寮の寮長をやっているフジキセキだよ。先月、トレーナーさんのスカウトで念願の専属になったんだ。まだ1ヶ月も経ってない新米だけど、彼の指導はとても凄いと感嘆したよ。彼のトレーニングを知ってしまった私としては、見放されないように頑張っていこうと思っているよ。
さて、今は東京レース場に来ているんだけど、理由は応援みたいなんだ。トレーナーさんが気にかけているバブルガムフェローの復帰戦だから観に行くという事になったんだ。隣にはトレーナーさんとバブルガムフェローの担当トレーナーとサブトレーナーが居る。サブトレーナーさんは心做しか落ち着きが無いように見えるね。
後輩「………」
メインT「……お前、少しは落ち着いたらどうだ?気持ちは分からなくもないが、緊張し過ぎだ。」
後輩「で、でもバブルの復帰戦ですし……それにもし、着外にでもなったりしたらって思うと、なんか合わせる顔が無くなりますよ。」
八幡「今からそんなんでどうすんだよ……フジ、お前からも何か言ってやれ。ウマ娘視点で。」
フジ「やれやれ、トレーナーさんはウマ娘使いが荒いなぁ。そうだね、私はまだレースには出た事はないけど、そんな不安そうな顔をしてたら、彼女にも届いてしまうから顔だけでも堂々とするべきだと思うよ。」
後輩「う、うぅ……」
八幡「ほら少しは背筋伸ばせ。何ならもっかい背中に喝入れてやっても良いんだぞ?」
後輩「い、いえ!大丈夫です!」
あはは、背筋が伸びたね。バブルガムフェローは今回2番人気みたいだけど、復帰戦だと考えると高い方だと思う。けど今回は海外から参戦しに来たウマ娘も居るから油断は出来ないね。
実況『さぁ、東京メインレース毎日王冠が間も無く発走となりますが、いかがでしょうか?』
解説『そうですね、やはり注目するのはクラシック級の2人でしょうね。タイキフォーチュンはNHKマイルCを制したそのままの勢いでここも制したいところでしょう。同じ東京のマイル戦ですからね、期待は充分です。バブルガムフェローも骨折して約半年経って久しぶりのレースという事ですが、このウマ娘もマイルの適性は充分でしょうから良い走りが出来ると思いますよ。』
実況『成る程。しかし今回は海外からの参戦、アヌスミラビリスがいます。人気はそこまで高くないようですが、侮れない存在です。他にもシニア級のベテランウマ娘が揃っています。さぁ各ウマ娘がゲートに収まりました!第47回GⅡ毎日王冠……スタートしました!!流石一戦級、出遅れはいませんでした!9番アプローズシチーがスルスルと後方へと下がっていきます!』
メインT「スタートは上手くいったな。さて道中はどうやって過ごす?」
八幡「………」
後輩「………」ソワソワ
フジ「………」
実況『先頭に行ったのは去年の覇者スガノオージです!そして内から2番トーヨーリファール、少し離れて英国からの参戦アヌスミラビリスが3番手!その斜め後ろにバブルガムフェローとタイキフォーチュン、クラシック級ウマ娘が並ぶように4、5番手を追走!』
八幡「良い位置だな、アレなら前を見て後ろも警戒出来る。バブルの得意位置だな。」
後輩「はい、作戦でもなるべく前目の位置につけるように言ったんです。その方がバブルの脚質に合ってるので。」
フジ「トレーナーさん、私が走るとしたらどの辺りのポジションになるのかな?」
八幡「フジもちょうどバブルと同じ位置だな。あそこからなら直線を向いても良い足を使える。それにフジならカーブの時点で先頭に食って掛かっても問題は無さそうだしな。」
実況『さぁ3、4コーナー中間!先頭はトーヨーリファール、休み明け快調に逃げている!その後ろピッタリとアヌスミラビリスが続いて、その後ろ外から12番のタイキフォーチュンも良い脚で上がって来ているぞ!そしてその内からスガノオージとバブルガムフェローが居て4コーナー曲がり切って直線勝負!!』
メインT「予想外にトーヨーが逃げてるな、逃げバテすると踏んでたんだが………」
後輩「それにアヌスミラビリスもまだ脚を残してる、まだ余裕がある感じですね。」
八幡「………」
フジ「……トレーナーさん?」
『先頭トーヨーリファールのままだ!アヌスミラビリスも懸命に前を追っている!内からカネツクロスも上がって来た!そして外からバブルガムフェローも良い脚だ!!残り200m、ここで先頭イギリスのアヌスミラビリスに変わった!!後ろからはカネツクロスとバブルガムフェローが追い込んできている!!抜けたのはイギリスからの刺客、アヌスミラビリス!先頭で今ゴールイン!!』
アヌス「イッエェーイ!!!」
後輩「3着………」
メインT「結果は充分だと思うぞ。シニア相手にこれだけ善戦したんだ、次は勝てる。」
八幡「………」
フジ「トレーナーさん、どうかしたのかい?ストップウォッチを見つめて。」
八幡「いや、かなりの脅威になると思ってな。」
フジ「あのイギリスのウマ娘がかい?」
八幡「いや、バブルがだ。」
?どういう意味だろう?
後輩「えっと、それってどういう事ですか?」
メインT「比企谷、俺にも教えてくれ。」
八幡「今のレースのタイムを測ってました。勿論4ハロンから3ハロンも全て。その中でもバブルの上がり3ハロンは34.7でした。誤差もあるかもしれませんけど、後ろから伸びていたベストタイアップが1番だとしたら、これは2番目に速いタイムです。」
後輩「つ、つまり?」
八幡「バブルの追い出しをもっと早めれば、勝てる見込みは格段に上がる。見てたらバブルは上がり切ってからの脚は衰えてなかった。そう考えればもう少しだけ長い距離の方が走りやすいかもしれない。例えば………天皇賞・秋とかな。」
後輩「て、天皇賞っ!?」
メインT「つまり今回は追い出しの遅さが敗因になったから、それを克服、改善させる為にも同じ舞台の中距離である天皇賞・秋を選んだってわけか。」
八幡「まぁ俺の考えですけどね。決めるのは先輩ですから口出しはしませんよ。」
フジ「………」
まさかそこまで見ていたなんて………たった数十秒の直線なのに、どれだけの事を考えているんだろう?もし私がレースに出たとしたら、たくさん言われるんだろうなぁ。
フジ「……ねぇトレーナーさん?」
八幡「ん、何だ?」
フジ「私とのトレーニング、普段からもっと指摘をくれないかい?細かいところでも何でも良いから。」
八幡「そうか?お前がいいならそうするが……」
私も負けていられないからね!!