八幡side
……此処の桜を見るのはいつ振りだろうか、俺がまだ新人の頃はあの場所で新入生達を眺めてたっけ?しかしこの時期だけはどうにも慣れない、これまでの時代を築き上げてきたウマ娘達が学園を去っていく代わりに、新しい時代を築くウマ娘達が新たにこの門に入ってくる。もう15年以上もこの学園の桜を見てるのになぁ………
???「先生、どうかしたのですか?」
八幡「ん?あぁいや、此処に来るのは随分と久しぶりに感じてな。」
???「あぁ、先生はこの学園の元トレーナーでしたからね。それも凄い成績を収めた凄腕の。」
八幡「やめろ、持ち上げても意味の無い事をするな。それに俺が凄いんじゃない、担当していたウマ娘達の力が凄かったんだよ。」
エアグルーヴ「お前はまたそんな事を言う、いい加減自分の実力を認識しろ。八幡、お前は素晴らしいトレーナーだったのだぞ。」
???「グルーヴ先生の仰る通りです、それにドゥラ姉様だって先生の事をお認めになられていたんです。先生のお力は本物だと私も思います。」
八幡「あぁ〜止め止め!今日はお前の入学式なんだ、俺の事は今どうでもいいんだよ………いよいよだな。」
???「はい。」
エアグルーヴ「お前ならきっと、このトレセン学園でもやっていけるだろう。我々が力を貸してやれるのはここまでだ、後はお前自身の力で未来を切り拓け。」
???「はい。」
八幡「じゃ、行ってこい。」
???「はいっ!」
グルーヴと結婚をしてから数年が経ち、俺達の娘であるルーラーシップがトゥインクルシリーズを引退した段階で、俺はトレーナーを退職した。今はエアグルーヴが立ち上げたクラブでコーチを務めている。これがまたかなりの評判を集めている。現役時代にトリプルティアラと秋シニア3冠を達成したネームバリューが効いているんだろう。
後輩達に教えていた頃の指導力は今も健在で、細かいところまで見ているし、親御さんとも頻繁に話しているから信頼も厚い。俺もトレーナー現役時代の実績をデカデカと出されたもんだから、最初は大変だった……次々と入団希望者が来るもんだからてんてこ舞いだった。
さっき送り出したウマ娘は、俺とグルーヴが1番期待しているウマ娘で、今日はその見送りだ。
エアグルーヴ「……楽しみだな、あの子がどんな走りを見せてくれるのか。」
八幡「……そうだな。」
そして、早くも2年の歳月が経った。
ーーー2年後・秋ーーー
実況『簡単には行かないぞ、トリプルティアラ最後の舞台秋華賞!豪脚一閃、ライバル捩じ伏せた桜舞台!格の違いを見せつけた樫の舞台!そして迎えた3冠の舞台っ!!史上7人目の栄光にリバティアイランドは既にゲートの中っ!!』
八幡「………いよいよだな。」
エアグルーヴ「あぁ、いよいよだ。」
リバディ「っ!」
実況『新しくなった京都レース場、3年ぶりに行うはティアラ最後の舞台!新たな時代の鼓動を感じる……秋華賞!!』
ガッコン!!
実況『飛び出しました!さぁ早速、正面スタンド前での先行争いです!』
リバティ(大丈夫、いつも通りに走れば……トレーナーも言っていた、常に冷静を心掛けろと。)
八幡「……落ち着いてるな、普通あんな風に四方に囲まれたら慌てるものだが。どうやら担当しているトレーナーの腕が良いんだろうな。」
エアグルーヴ「お前の教えも良かったんだろう、冷静に走れと最初に教えたのはお前だっただろう。リバティはそれを忠実に守っている。それがあの子の動じない胆力に繋がっているのだろう。」
実況『さぁ3〜4コーナー中間でリバティアイランドは何処から動くか?いつの間にか外に持ち出している!コナコーストが先頭でミシシッピテソーロが2番手でラヴェル3番手。その後ろリバティアイランドが動いた、動いた!外から上がっていくっ!!耳へと響く風切り音の高なりに大歓声が呼応する直前コース!!リバティアイランドもう先頭だぁ〜!!!』
リバティ「はあああぁぁぁぁぁ!!!」
実況『リバティアイランドだ、リバティアイランド!!トリプルティアラは見据える夢の途中!!これは強い、圧巻のトリプルティアラッ!!!天井知らずのポテンシャル!!』
エアグルーヴ「……良い走りだったな。」
八幡「あぁ、本当にな……ん?」
「よしっ!」グッ!
彼は確か……リバティのトレーナーだったな。ああいう顔もするんだな。テレビとかではあまり笑ったところを見なかったが……
八幡「せっかくだ、挨拶でもしに行くか。」
エアグルーヴ「?八幡、どうした?」
八幡「リバティのトレーナーを見つけた。ちょっくら挨拶にな。」
エアグルーヴ「ならば私も行こう、娘同然のリバティが世話になっているのだからな。」
八幡「済まない、少しいいか?」
「はい、何で……えぇ!?」
八幡「初めまして、だな。リバティが世話になっている、あの子のクラブ時代のコーチをしていた比企谷だ。隣はエアグルーヴ、俺の妻だ。」
「い、いえ……初めまして、リバティのトレーナーです!伝説のトレーナーとチーム・ポラリスの初代リーダーにお会い出来て光栄です!」
八幡「伝説って……まぁいいや。それよりも、よくリバティを勝たせてくれた。コーチとして感謝する、あの子は俺達も期待していたんだ。それを叶えるどころかグルーヴと同じトリプルティアラを達成させるなんてな。」
エアグルーヴ「あぁ。同じウマ娘として、先輩トリプルティアラウマ娘として、誇り高く思う……感謝する。」
「……いえ、自分はやれるだけの事をやっただけです。本当に凄いのはリバティですよ。」
エアグルーヴ「……貴様も八幡と似たような事を言うのだな。もっと自分に自信を持て、トリプルティアラを達成させたのだぞ、その実力は本物だ。私のトレーナーがそうだからな、それについては保証する。」
リバティ「トレーナー、勝ちまし……えっ、どうして此処に先生達がっ!!?」
その後は2代目トリプルティアラがお祝いに来たと大騒ぎになり、俺とエアグルーヴがクラブで教えていたという事実が知れると周囲は更に大盛り上がりだった。そして何故か、2代目と7代目のトリプルティアラウマ娘とそのトレーナーが記念撮影するという変な事態にまで発展した。
以前の閑話でその後のお話みたいなのを書いてほしい……っていう声がウマ娘達と読者の皆様から聞こえた気がしましたので。