八幡side
休憩中にゴタゴタがあったが、時間に遅れる事なく次のレースを観察する準備が出来た。といっても走り方とかを見るだけだが。だが次は長距離だ、長いとはいえ道中の走り方もしっかりと見なければならない。スタミナの温存の仕方と脚の溜め、そして最後まで走り切る根性なんかも必要だ。
だが、やはり………
八幡「見ていても分かるが、ルドルフが頭1つ抜けてるな。いや、1つどころじゃないな………次元が違う、と言った方が正確だな。」
エアグルーヴ「ほう、やはり分かるのか?」
八幡「見た感じはな、アレが本当にウマ娘独自で整えたコンディションか?アイツにトレーナーって要るのか?」
エアグルーヴ「居なければレースにも出られんだろう。」
八幡「トレーナー居るだけでいいんじゃね?あの仕上がりはどのトレーナーでも作り上げるのは難しいぞ、それをアイツは1人でかよ………とんでもないな。」
オグリ「トレーナー、最初のレースが始まるぞ。ルドルフを評価するのもいいが、レースの準備をするべきではないか?」
八幡「おぉ、そうだな………すまんオグリ。じゃあ、また見ますか。」
ガッコン!!
長距離のレースなだけあってどのウマ娘もしっかりペース配分をしていたが、下手な奴は途中でスタミナ切れ、上手い奴は最後まで使える脚を残して余力まで残す、といった感じだ。
1レース1着はメジロマックイーンだ。アイツメジロ家の御令嬢だったのかよ……道理で気品があるわけだ。だがその気品さとは裏腹に走ってる時の闘志やスタミナ、スピードは申し分ない。正直、磨けば伸びる素質なのだが、アレで発展途上だ。今後どれだけのものになるのか………
2レースはハヤヒデ。アイツの事だ、レース前から対戦相手の事を徹底的に調べたのだろう。でなければあんな風に仕組まれたかのようなレース展開にはならない。メジロマックイーンの時と比べても遜色ない程のスピードとスタミナを持ってる上に理論という武器もある。
3レースはルドルフ。正直に言う、欠点らしい欠点が見つからなかったし、良い部分しか目立たなかった。あの走り、どの距離でも応用が効くぞ。エアグルーヴの言ってた通りで本領は長距離みたいだが、それ以外の距離でも難なく走れるオールラウンダータイプのウマ娘だ。正直に言うと、ヤバい。マジで桁が違う。
2着
1レース:クリーク
2レース:ゴールドシップ
3レース:ブライアン
注目
エイシンフラッシュ
セイウンスカイ
マヤノトップガン
どのレースも良い走りをしているウマ娘ばかりだが、やはりルドルフの走りがチラつく。まさかあんなに速いとは思わなかった、道理で1人だけ違う雰囲気を出すわけだ。だが………気になる所もあった。
クリーク「あらら〜2着でした〜。1着じゃなくて残念です………」
ハヤヒデ「計算通りだったが、ゴールドシップがあそこまで追い込んできたのは計算外だった、見直す必要があるな。」
ブライアン「流石はルドルフだ、影すら踏めなかった………」
ルドルフ「ふふっ、まだ負けるわけにはいかないからね。」
………そして何故かさも当然かのように俺の所に帰ってくる長距離の顔見知り面子。何で?
ルドルフ「さて、比企谷トレーナー。どうだったかな、私の走りは?良ければ感想を聞かせて欲しいのだが。」
八幡「………言っていいのか分からんけど、そもそもお前にトレーナーって必要?」
ルドルフ「………ふふふ。そのような評価を貰えるとはな。だが悪い気はしない。だが走りはどうだと言う質問には答えてはくれないのかな?」
エアグルーヴ「私が見る限りでは会長が変な走りをしているようには見えませんでしたが、何かしたのですか?」
ルドルフ「さて、どうだろうね?答えてくれるかな、比企谷トレーナー。」
これ言っていいのか?けど向こうからの要望もあるし………仕方ない、正直に言うか。
八幡「じゃあ1つだけ。お前、何でスパートを逆の脚でかけた?」
「「「「「「!?」」」」」」
八幡「スパートをかけた時、お前の重心がほんの少しだけ外側によれた。それを気付かせないようにする為に外に出したんだろう?だがお前がそんな無駄な事をするような奴にはとても思えないしな。気にはなっていたんだが、どうだ?」
パチパチパチパチ
するとルドルフは下げていた両手を胸の位置まで上げて拍手を始めた。しかも何だか嬉しそうな顔をしながら。
ルドルフ「……素晴らしいよ、比企谷トレーナー。まさかそんな所まで見ていたとは、君の観察力には恐れ入ったよ。」
ライス「じゃ、じゃあ本当に?」
ルドルフ「うむ、意図的に逆脚でスパートをかけた。だが見破られるとは思わなかったよ。他のトレーナーは気付いた様子はなかったから、上手く誤魔化せたと思っていたのだがね………」
ライス「す、凄い、トレーナーさん!………」
オグリ「あぁ、まさかそんな細かい所まで見ていたとは………」
エアグルーヴ「私でも気付けなかったというのに………なんて奴だ。」
クリーク「これは………ひょっとしたらとんでもないトレーナーさんかもしれないですね〜。」
ブライアン「なぁ姉貴、このトレーナー………」
ハヤヒデ「あぁ、我々の予想を遥かに上回っている。とても新人トレーナーとは思えない………その域を凌駕している。」
やめて、そんなに俺を褒めないで………俺褒められ慣れてないから。ポーカーフェイス崩れちゃうからやめて。俺に耳と尻尾が生えてたら間違いなく振りまくりだろうから。
八幡「トレーナーなら気付けて当然だろ?」
ハヤヒデ「それはあり得ないよトレーナー君。担当しているならまだしも、未契約のウマ娘の走りをそこまで理解するのは至難の業だ。いや、契約していたとしても理解するのには短くない時間を要する。」
エアグルーヴ「至極当然な論だな。」
ルドルフ「だが比企谷トレーナーはそれ程までに私の走りを見ていてくれたという事で間違いないのだろう?魅せられる走りが出来たようで何よりだ。」
模擬レース、終了しました!ウマ娘の皆さんお疲れ様でした!