八幡side
アルダンと担当契約を交わしてから数日後の週末。俺は約束通り学園の校門前でアルダンを待っていたところ、目の前に黒塗りの高級車が現れたと思ったら、窓からアルダンが現れてそのまま同乗した。車に揺られる事数十分、着いた場所は美術館だった。
ばあや「では……アルダンお嬢様、お気を付けて行ってらっしゃいませ。トレーナー様、お嬢様の事、何卒よろしくお願いいたしします。」
八幡「はい、分かりました……」
アルダン「ふふっ、比企谷さん。どうぞそう硬くならずに。ばあや、お見送りありがとう。行って参りますね。」
……しかし、何だって美術館なんだ?趣味が美術館鑑賞なのか?それだったらどうしてわざわざ俺を?
八幡「なぁ、聞いてもいいか?何で俺を此処に?」
アルダン「……あちらをご覧ください。」
八幡「……【刹那展】?」
アルダン「はい……元々興味があり、足を運ぶつもりでいましたが、是非比企谷さんにもお付き合いいただきたいと思いまして。」
八幡「ほぉ~……済まん、芸術の事はサッパリでな。【刹那展】っていうのはどういう展示物なんだ?」
アルダン「……種別は多岐にわたります。絵画、彫刻、写真、映像、工芸……しかしそれらには、ただ1つの共通項を持っています。全てが、『遺作』であるという事です。」
八幡「………」
遺作……つまりは作者が亡くなる前に最後に作った作品という事になる。
俺とアルダンに付き添いながら場内の作品を見て回った。作品は本当に多種多様ではあったが、『コレすげぇ!』ってなるような作品は特には無かった。亡くなった作者さん達には悪いが、言ってしまえば普通に感じる。
八幡「名作……なのか?」
アルダン「いいえ。ですが……そうですね。受け取り手にとっては、得てしてそういうものだと思います。」
八幡「そうか……一通り全て見終わったが、これがお前の見たかったものなのか?」
アルダン「……比企谷さん、後もう1ヵ所だけ。美術館裏手の森へ、行ってもよろしいでしょうか?実はそこに最後の作品が展示されているのです……どうしても、それだけは見ておきたくて。もう少しだけ、お付き合い願います。」
ーーー美術館裏手の森ーーー
……こんな所に作品が?他のは館内や場内近くに展示されてたのに、何で最後の作品だけこんな所に?
八幡「ん?絵画?」
アルダン「あぁ……そうです。これが……これが、見たかったのです。」
そこにあったのは、たった1枚の絵画だった。のだが、日に焼けていて雨ざらしになって、本来の姿の見る影もなく色褪せていた。
八幡「………これが?」
アルダン「はい……作者の方は、この絵の展示を『外に限り』許す、と言い遺されていたそうです。」
八幡「………」
アルダン「………」
八幡「もう少し、近くで見てもいいか?」
アルダン「?はい、構いませんが……」
………何でだろうな、これだけ他の遺作とは段違いに違うって事だけは分かる気がする。
絵師「おや、珍しいですね。こんな所にまで見物人が。」
アルダン「っ!どうもこんにちは。」
八幡「………」
アルダン「……あ、あのひk「いえいえ、そのままで結構ですよ。彼はどうやら感じているみたいですからね。」……え?」
絵師「あの絵は私の友人が最後の力を振り絞って描いた最期の絵………それをあんな風に真剣な目で見てくれているだけで、救われるような気持ちです。」
八幡「……この絵を描いた人、多分だが最期は笑っていたんだろうな。」
絵師「っ!」
八幡「何となくだが、伝わる………ような気がする。」
アルダン「………」
八幡「今はこんな姿だけどよ、本当の姿はきっと……良い絵だったんだろうな。それも分かる人にしか分からないような、そんな絵だったと思う。」
絵師「………」
八幡「なぁ、アルダンもそう思………」
………ヤバッ!!俺アルダンに語りかけてたつもりだったのに他人にまで聞かれてたのかよっ!?恥ずかしっ!!
八幡「……すみません、独占しちゃって。行くぞアルダン///」
絵師「少し、お待ちいただいても?」
八幡「な、何ですか?」
絵師「あの絵を見て、どうしてそこまで分かるのですか?アレはただの遺作、違いますか?」
八幡「……彼女にも言われました。受け取り手にとっては、得てしてそういうものだと。でも俺にはあの絵がただの遺作とは思えませんでした。特に絵の右上の部分……あそこにだけ力強さを感じます、どんな意図があったのかまでは分かりませんけどね。でも、絵はあそこで終わって完成した。そして作者は満足して笑ったんじゃないかなって思っただけです。」
絵師「………」
八幡「……すみません、変な事言って。ほら行くぞアルダン。」
アルダン「ひ、比企谷さん!お待ちくださいっ!」
はあああぁぁぁ恥っず!!!担当以外の人に聞かれるとかっ!!
八幡sideout
絵師side
絵師「………」
あの男性の方、きっとこの絵を見るのは初めての筈。それなのに、まるで見てきたかのように………
絵師「……もう私だけかと思っていたけど、長生きはしてみるものだね。君の絵を理解してくれる人が増えたんだから。なぁ?」
最期の絵師さん、どなたでしょうかねぇ~?