エアグルーヴside
……今年も残り数週間で終わりというところまで来た。私はもう出走予定のレースは無いが、来年は京都記念からの始動だ。2ヶ月なんてあっという間だ、うかうかはしていられんからな。今でもそれに向けたトレーニングは怠ってはいない。順調そのものだ。
しかし……しかしだ、最近はどうも心が騒つく時がある。その要因は………
「ねぇねぇトレーナーさん!次のメニューってどんなのがあるの?」
「私も気になる!見せて見せて〜!!」
「ちょっと皆、トレーナーは作業中でしょ!」
「「けど本当は?」」
「私も見たい……って何言わせんのよ!!」
八幡「ちょっと?騒がしいんだけど?これ以上うるさくすんのならメニュー書かないよ?」
「「「………」」」
八幡「……そこは素直なのな。」
「だってトレーナーのおかげで私達、良いトレーニングが出来てるんだもん!」
………あれだ、トレーナーが他のウマ娘と親しくしているところを見ると、妙にイライラする。奴も奴だ、鼻の下を伸ばしおって、あのたわけが!少しは私のトレーナーという事を自覚して欲しいものだ。
スズカ「どうかしたの、エアグルーヴ?」
エアグルーヴ「むっ、スズカか?別に何でもない。」
スズカ「そう?何だか不機嫌そうな顔をしていたけど………何かあったんじゃないの?」
エアグルーヴ「私に何かがあったわけではない。ただ、私のトレーナーがな………」
スズカ「あぁ……最近になって人気が出てきているものね。それにトレセン学園だけじゃないみたいよ、トレーナーさんの人気。」
エアグルーヴ「………何?」
スズカ「……このウマスタなのだけれど、トレーナーさんが喫茶店で1人お茶してるところを誰かがウマスタに上げたみたいなのよ。それがこの学園のトレーナーだって事で一気に世間でも注目を浴びてるみたいよ。」
………確かに奴は今眼鏡をかけて印象は大分良くなったと言っても過言では無いだろう。姿勢に関してはもう何も言うまい。だがだからといって奴のあの周りは何だっ!?けしからん!!ここは学舎だ、風紀を乱すような事は看過出来ん!!
アルダン「ふふふっ、兄様の名声が上がるのは喜ばしい事です。」
スズカ「アルダンさん……」
アルダン「先日、兄様はこの事で頭を抱えていたようなのです。『俺が有名になっても意味なんて無いのに。』っと。」
エアグルーヴ「だが奴が眼鏡をかけた事で容姿が良くなった事は否定出来ません。現に多くの生徒から好意的な意見を貰っているのですから。」
アルダン「ふふふっ、だから兄様は雑誌のインタビューにもオファーが来るようになったのでしょう。」
……何だと?
エアグルーヴ「それはどういう事か詳しくご存知なのですか?」
アルダン「いえ、私も詳しくは。ただ兄様が『こういうのはエアグルーヴにしてくれ。』と言っていましたので。兄様にお聞きして書類を拝見しただけです。出るつもりも無いから好きにしろと。それがインタビューだったというだけの事です。」
エアグルーヴ「………成る程。」
スズカ「エアグルーヴは嬉しくないの?前はトレーナーさんの悪い噂をどうにかしたいって言ってたじゃない。」
エアグルーヴ「いや、それは確かにそうなのだが………」
寧ろそれは良い兆しになったと言ってもいい。だが今度は好意を持つ者が多くなり過ぎて困っているのだ!
ーーー部室ーーー
フジ「……八幡トレーナーさん遅いね。」
エアグルーヴ「何処をほっつき歩いているのやら。」
ガチャっ
八幡「遅れて済まない、駿川さんから手紙を預かってな。そんじゃトレーニングを「少し待て。」はじ…何だ?」
エアグルーヴ「お前に届けられる手紙の内容はどんなものがあるんだ?」
八幡「色々だな。前まではエアグルーヴのファンレターとかが殆どだったんだが、今ではお前のファンレターを含めて俺のも届くようになってる。ったく、俺へのファンレターなんて、物好きだよな。レースで走るわけでもないのによ。」
フジ「けどさ八幡トレーナーさん、それって前までは逆のがあったって事じゃないのかい?」
八幡「まぁな。お前達も俺がこの間までどういう風に呼ばれていたのかは知ってんだろ?無くなったってわけじゃないが、前に比べたら少なくなった。」
確かに、今ではトレーナーの悪評については聞かなくなった。だがその一方で『トレセン学園にはイケメンなトレーナーが働いている。』という噂が立てられているのだ。それに誰かしらはトレーナーの近くに居る。スッキリせん……何なのだこれは?
フジ「う~んこの際だから、1度インタビューや取材に応じてみたらどうだい?八幡トレーナーさんの事で記事になったのはもう2年も前の事だから、今ならもう大丈夫だと思うよ?」
八幡「いや、もう今更だろ。俺が出ても出なくても変わらないって。」
フジ「けど今の八幡トレーナーさんなら問題無いんじゃない?ほら、眼鏡のおかげで容姿も大分改善されたんだし、文句を言う人は居ないと思うけどなぁ。」
八幡「まぁ確かにそうかもしれない。けど俺はもうこのままでいい、それにエアグルーヴもそれで1年間通してやってきてるわけだしな、変えなくてもいいだろ。」
エアグルーヴ「む、むぅ………」
八幡「じゃあこの話はもう終わり。ほら、トレーニング開始するぞ。」
エアグルーヴさん、何処か微妙そうな感じでしたね。