八幡side
俺は近日中に開催される模擬レースの出走者のチェックをする為にコース場に来ていた。勿論、周りには多くのトレーナー達が居る。その中でも一際存在感を放っているウマ娘が、コース場を走っていた。青鹿毛の長髪を靡かせながら走るその姿は、同世代のウマ娘の中でもトップクラスの実力を持っていると一目で分かった。
「やはり良い走りをするな、ヴィルシーナ。」
「今の時点であれだけ完成された走りが出来るのだから、鍛え上げればトリプルティアラも夢じゃないわね。」
「あのウマ娘を狙わない手は無いな。」
既に多くの古参トレーナー達から注目されている。新人の俺には出番が無いかもしれないな……良くも悪くもこの世界は実力が物を言う上に、今の時点で武器になる物が何も無い。今年配属されたばかりでいきなりメイントレーナーに抜擢された俺と桐生院はかなり苦労する事になるのは目に見えている。
ヴィルシーナ「……っ!あの方は、確か……」
八幡「………?」
何だ、誰かを見ている?っていうか俺の事か?それとも他の誰か?
ヴィルシーナ「すみません、突然のお声がけ失礼します。」
八幡「誰かを見ているとは思っていたが、俺だったのか……それで、何か用か?」
ヴィルシーナ「いえ、大したご用件では無いのですが、昨日は妹がお世話になりました。」
八幡「……妹?」
ヴィルシーナ「ヴィブロスの事です。あの子は私の妹なんです。優しいトレーナーさんがお買い物に付き合ってくれたと話してくれました。」
ヴィブロスの姉だったのか……そういえばどことなく面影はあるように感じる、性格は全く違うが。
八幡「いいや、気にしなくていい。俺も特に用事は無かったから良い気分転換にもなったしな。それにしても、良い走りをするな。」
ヴィルシーナ「あら……ふふ、ありがとうございます。不熟な走りがお目汚しにならず幸いでした。それでは、予定がありますのでこれで失礼致しますね。」
八幡「あぁ。」
ヴィルシーナはそれだけ言い残してからコース場を後にした。あれだけのトレーニングの後だというのに疲れた様子を窺わせないのは、それだけ普段から厳しいトレーニングを課しているからなんだろう。
ーーー放課後ーーー
特に予定の無い俺は学園の校舎辺りを歩いていた。まぁ今日の予定は模擬レースに出るウマ娘のチェックだからな、それ以外にやる事は……正直に言ってやり尽くしたって感じだ。だから今は暇を持て余している状況だ。
八幡「……ん?あれは昨日の……」
???「………」
何やら落ち込んでいるみたいだな……耳も垂れてるし。
???「……こんな弱虫な僕が……偉大なウマ娘になんか、なれるわけ、無い……」
八幡「どうかしたのか、こんな所で?」
???「っ!?」
八幡「あぁ悪い、驚かせるつもりは無かったんだが、どうにも落ち込んでいるように見えたからな。昨日の事も含めて少し気になってな、悩みがあるのなら聞くぞ?解決には至らなくとも、少しは気が楽になるかもしれないぞ?」
???「………」
彼女はシュヴァルグランという名前で、聞いた話を総合すると、自分に自信が持てないらしい。特に姉と妹にコンプレックスのようなものを感じているらしく、色々と自信喪失気味みたいだ。
八幡「成る程……大体理解した。とりあえず、1本走ってみてくれないか?」
シュヴァル「……え?」
八幡「そこまで自分に自信が持てないのはよく分かった。だがそれは自分の事を理解しているという裏付けでもあるが、逆に自分だけの評価で凝り固まっているという事でもある。そこでだ、俺にお前の走りを見せてくれないか?他人からの目線も欲しいだろ?」
シュヴァル「え、あ、えっと……い、いいん、ですか?」
八幡「寧ろ俺から提案しているんだから、受けるか断る側だと思うぞそっちは?」
そんなやり取りがあって、シュヴァルは俺の提案を受けてくれた。空いているコース場で1周だけ走りを見せてくれた。
八幡「………」
シュヴァル「え、えっと……ど、どうでしたか?やっぱり、全くダメでしたよね………」
八幡「……済まんが、どうしてそこまで自身を無くすのか俺には分からん。」
シュヴァル「………え?」
八幡「走る前に色々足りてないって言ってたな?まず最初のスタートの反応だって出遅れる要素が無い良いスタートだったし、タイプ的には芝の中長距離が適性だからスタミナのおかげで道中も好位に付けられていた。あの走りなら外に回される事もバ群に囲まれる事も無いだろう。そして何より1番良かった点は周りをよく観察している事だな、これは性格の部分もあるとは思う。だがレースってのは1つの判断が結果を大きく左右する事がある。そんな中で常に冷静に周りを観察出来るっていうのは大きな利点だ。トレーナーが付いていない今の時点でこれだけ出来ているのにまだ足りてないのか?」
シュヴァル「………/////」カァァ…
……めっちゃ顔赤いじゃん。コレはアレだな、きっと褒められ慣れてないんだろうな。
シュヴァル「……あ、ありがとう、ございます……///」
八幡「まぁ新人トレーナーの言う事だから、あまり心には響かないかもしれないが、今の時点でも充分に素質や才能は感じられると思うぞ、俺は。」
シュヴァル「っ!」
今はこれだけ言えれば充分だろう。これで少しは自信に繋がると良いんだが、それも本人次第だな。
混合で書くって中々に難しい……でも面白いっ!