八幡side
今日最後の芝2,000mの選抜レース……そのレースに出走するウマ娘は僅か5人。その中でも注目視されているのが、ヴィルシーナとジェンティルドンナの2人だった。この2人は入学前から大きく注目を浴びていて、普段からもスカウトがひっきりなしに行われているくらいだ。その2人が選抜レースに出るという情報が出回らないわけも無く、コース場にはとんでもない数の人だった。
ジェンティル「……何だか、周りが騒がしいですわね。」
ヴィルシーナ「当然だと思いますよ。だって……『頂点』が走るのですから。」
ジェンティル「あら、それはもしかして私の事かしら?」
ヴィルシーナ「そうお思いですか?でしたら勘違いです、『頂点』は、この私なのですから。」
……どんな会話をしているのかは分からんが、雰囲気だけでもぶつかり合っているのだけは此処からでも分かる。しかも周りに居るメンバーが委縮してるし……可哀想だなぁ~。
ジェンティル「ふふふ、良い機会ですわ。お互い気になるでしょう……もしや比翼するのでは……なんて。その『力』、是非とも味あわせていただきたいわ。」
ヴィルシーナ「あら、であればとくとご堪能くださいませ。私は今日、示すつもりでおりますから……『頂点』たる女王に相応しいのは、この私なのだと。」
そして大勢の観客が見守る中、5人のメンバーがゲートへと進み、レースがスタートした。展開は予想通り、ヴィルシーナが逃げて、他の4人が追いかける展開だった。そして終盤を迎えた最終直線。このまま行けばヴィルシーナの勝ちだが………
ジェンティル「フンッ!!!!!」ズサァ!!!
………なんつーパワーだ。スパートをかける為だけであの地面の抉れ様……とんでもないな。ヴィルシーナも実力は確かにあるが、今の走りを見る限り、ジェンティルドンナのあの走りには勝てないな。
ジェンティル「はあああぁぁぁぁぁっ!!」
ヴィルシーナ「くっ……あああああぁぁぁぁぁ~っ!!」
結果はジェンティルドンナの1着でヴィルシーナが2着。それも並ぶ間も無くあっさりと抜き去って3バ身の差を作っての圧勝だった。肩で息をしているヴィルシーナに対し、ジェンティルドンナは涼しげな表情だった。
ジェンティル「あらまぁ、あっけない事……もう少し、と期待しておりましたけれど………」
ヴィルシーナ「はぁ……はぁ……はぁ……かはっ。」
ジェンティル「……俯く方とは交わす言葉はありませんわね。では皆様、私はこれで。」
ヴィルシーナ「う………っ。」
まさかこんなにも差を見せつけられる結果になるとはな……本人が1番きているだろうな。
ヴィブロス「お姉ちゃん………」
シュヴァル「………」
八幡「……とりあえず、此処で待っておこうか。」
だが、ヴィルシーナは俺達が10分以上待っても、俺達が居る場所には帰ってこなかった……仕方ないからその場で解散する事にして、俺はその場で今日の選抜レースのまとめをする事にした。そして俺が1番気になっている事を見ている。
八幡「………」
………やっぱりな。確かに今までに見た事の無いくらい強い力だ。この力なら重バ場であっても充分に力を発揮出来るだろう……だが。
八幡「まだ完全には扱いきれてないみたいだな。」
ジェンティル「どうしてそう思うのかしら?」
八幡「っ!?……いきなり話しかけるなよ、驚くだろ。」
ジェンティル「あら、それはごめんなさい。それで話の続きだけれど、私がまだ力を扱いきれていないというのはどういう事か説明してくださる?」
八幡「……お前のスパートをかけた時のこの地面の抉れと身体のブレで判断した。最初見た時はまだ確信半分と疑い半分だったが、この抉れを見て確信した……明らかに力を入れ過ぎた事による外への過剰な進行だ。しかもそれはお前自身も気が付いている。」
ジェンティル「あら、聡明な方ですのね。けれどそれだけ?」
八幡「まさか……ヴィルシーナに見せつける為だろ?自分との差を。」
ジェンティル「……貴方、良い頭脳に加えて良い目もしているのね。」
八幡「光栄だな。まっ、疑問も解けたし俺はこれで失礼する。」
ジェンティル「あら、私をスカウトしないのかしら?貴方も見ていたのでしょう?」
八幡「見てはいたが、誰かをスカウトするつもりで今日の選抜レースを見ていたわけじゃない。見に来てほしいって招待があったのと、今後の後学の為にって言った方が正しいな。」
ジェンティル「あら残念。貴方からのプロポーズでしたら、喜んでお受けしますのに。」
八幡「指を握り潰されそうだから遠慮しておく。」
とりあえずトレーナー室に戻るか。シュヴァルとヴィブロスはレースに勝てたし、これから忙しくなるだろう。ヴィルシーナもレースに負けはしたが内容自体は悪くない。とは言っても今後の事は本人の気持ちの問題だろうしな、こればかりは俺もどうしようも無い。
まぁ俺はいつも通りにするだけでいいだろう。変に気を遣ってもヴィルシーナを追い詰めるだけだしな。