比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!   作:生焼け肉

1228 / 1583
抜け出せた長女

 

 

ヴィルシーナside

 

 

トレーナーさんは一体何を言って………私が怖がっている?一体何に?

 

 

八幡「俺もお前の走りを見ただけに過ぎないが、その中に悔しさも確かにあるように見えた。だがそれとは別に恐怖の色も見えた気がする。ジェンティルドンナにっていうよりも、別の何かにって感じがするな。」

 

ヴィルシーナ「ジェンティルさんじゃない誰かに……恐怖を?」

 

八幡「それが何かまでは分からないけどな。俺がお前の走りを見た感想は今言った通りだ。」

 

ヴィルシーナ「……あの、トレーナーさん。もう少しだけ私の走りを見てはもらえませんか?」

 

八幡「……さっきのような無茶な走りじゃなければ構わない。そうだな……距離は1,600m、スパートのタイミングは直線を向いてからだ。それまでは後方を牽制しながら先頭を走るイメージで走れ。」

 

ヴィルシーナ「分かりました。」

 

八幡「後はそうだな……これも言っておこう、直線を向くまでは自分の5バ身後ろにジェンティルドンナが追走していると思え。」

 

ヴィルシーナ「っ……はい。」

 

 

トレーナーさんに指示を受けた私は1,600mのスタート地点まで移動して、トレーナーさんに合図を送ってからスタートした。

 

 

ヴィルシーナ「まずは先頭を走るようにイメージをする……ペースは平均で行きましょう。」

 

 

けれどこれで何かが変わるのかしら?

 

 

ヴィルシーナ「最終直線……ここから、フッ!!」

 

 

ジェンティル『フンッ!!!!!ズサァ!!!

 

 

ヴィルシーナ「っ!?」

 

 

また、またあの音が……やっぱり、私には………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「追い抜かさせるなっ!!

 

ヴィルシーナ「っ!!」

 

八幡「そのまま競り合いながら粘り込めっ!!絶対に前に行かせるなっ!!

 

ヴィルシーナ「っ~~あああぁぁぁぁぁ~っ!!!」

 

 

そして私はゴール板を駆け抜けた……トレーナーさんの言葉があったおかげなのか、さっきまでの走りとは全然違った。

 

 

ヴィルシーナ「はぁ……はぁ……」

 

八幡「……どうだ、今の気分は?」

 

ヴィルシーナ「はぁ……はぁ……不思議な気分です。何だか今までで1番力を出し切れたように思います。」

 

八幡「まっ、そうだろうな。」

 

ヴィルシーナ「トレーナーさん、これは一体どういう事なのでしょう?」

 

八幡「さっきも垣間見えてたが、お前は今日のトレーニングはジェンティルドンナを意識しながらトレーニングをしていたと思う。本トレーニングに入ってからの全ての走りでは無意識にジェンティルドンナに追い抜かされた前提の走りになっていた、特に最終直線ではな。明らかに動きが悪くなっていたからな。」

 

 

……確かに私、最終直線でジェンティルさんに追い抜かされてからは諦めていたわ。

 

 

八幡「だから俺はその諦めを少しだけ先延ばしにして、粘り込みを引き出したに過ぎない。ヴィルシーナ、お前の今の欠点は1度抜かれたらもう終わりだと思ってしまうその思い込みだ。このレースの世界には差し返しって言葉がある事くらい知ってるだろ?1度抜かれても諦めるな、並ばれてからが逃げの本当の勝負だと思え。」

 

ヴィルシーナ「並ばれてからが、本当の勝負………」

 

八幡「……このレース、見てみろ。」

 

 

トレーナーさんから受け取ったタブレットを見てみると、それは過去のレース映像だった。でもそれらの全てが逃げのウマ娘が1度は抜かれて先頭を譲りはしたものの、最後の最後で相手を差し返して勝利を収めていた。

 

 

ヴィルシーナ「凄い……」

 

八幡「今のお前とこの映像に出てた逃げウマ娘達の違い、何か分かるか?」

 

ヴィルシーナ「……彼女達は最後まで諦めなかった。並ばれても、追い抜かれても、最後まで相手に食らい付いていました。」

 

八幡「そうだ、今のお前に必要なのはまさにそれだ。泥臭さと言っても過言じゃない。逃げともなれば最後に待ち受けているのは他のウマ娘との勝負だろうが、俺はそうは思わない。」

 

ヴィルシーナ「え?」

 

八幡「確かに抜かれないようにするのは勿論の事だが、逃げで1番の勝負は自分自身だと俺は思うぞ。」

 

ヴィルシーナ「自分自身との、勝負……」

 

八幡「だってそうだろ?逃げた奴が先頭を奪われたとしよう、今の映像のように諦めなければ最後まで可能性はあるだろう。けど逆に諦めたら?その時点で終わりだと思わないか?諦めて2着になったとしてお前は嬉しいか?」

 

 

そんなの決まってる……私達が欲しいのは1着だけ。それ以外は負けの数字だもの。

 

 

八幡「けど、これでお前がジェンティルドンナに怖がっていないのは分かっただろ?」

 

ヴィルシーナ「あっ!」

 

八幡「次はそれを見つけてやればいいと思うぞ。そしたら今よりもっと良い走りが出来るようになると思うぞ。」

 

ヴィルシーナ「ありがとうございます、トレーナーさん!トレーナーさんのおかげで大きな光明が見えた気がします!」

 

八幡「あぁ。それと、明日くらいは妹達の面倒を見てやれ。今日のトレーニングは少し負荷が大き過ぎるからな。」

 

ヴィルシーナ「ふふふ、分かりました。あの子達のおかげでスランプから抜け出せたのも事実ですからね。」

 

 

明日はきっとショッピングに釣りに野球かしらね?

 

 

 




スランプから抜け出せたヴィルシーナ、良かったです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。