アルダンside
4月3週目の中山レース場、この日は多くの人々で溢れています。私もその1人です。この日はクラシッククラスの3冠路線最初のレース、皐月賞の開催日だからです。中山11R……つまりGⅠを走る18人のウマ娘達は自身の勝負服を身に纏ってレースに挑みます。私も何度も見てきました、この大舞台に臨む皆さんの並々ならぬ努力を……だからこそ、この
アルダン「しかし意外です、チヨノオーさんが1番人気ではないなんて。」
八幡「確かにトライアルレースでは危なげない勝利だったが、あれは本来の走りじゃないからな。逃げ打つウマ娘が居なかったから仕方なくって感じだったし、1番人気に推されたモガミナインはこの前のスプリングSで強い勝ち方をしたからそっちに注目してるんだろう。まぁでも、王道路線よりも他の路線が注目されるのは珍しいケースかもな。」
アルダン「ではヤエノさんはどうでしょうか?」
八幡「前走の毎日杯ではオグリ相手に4着だったが、内容的には悪くないと思うんだが、個人的には些か評価が低過ぎると思うんだよなぁ。」
アルダン「では、もっと人気が上でも良いと?」
八幡「あぁ。あのレースだって3バ身離されているとはいえ、バ場状態は重。地方のダートレースを走って来たオグリ相手では分が悪いと言っても良い。それを加味しての4着なら重賞初挑戦でよくやった方だと俺は思うぞ。それに後方から追い込んでの掲示板入線だからな。そこは評価してもいいと思うんだがなぁ。」
アルダン「やはり、オグリさんに引っ張られたからでしょうか?」
八幡「まぁそれもあるだろうな、何せ初の中央戦で重賞制覇だからな。それを評価しない奴の方がおかしい。」
アルダン「ところで、今回の皐月賞はどう見ますか?」
八幡「ハッキリ言えば混戦だな。誰が勝つってのが予想出来ない。そのくらいどのウマ娘にも可能性があるって感じだな。群雄割拠って言い方の方が伝わりやすいな。」
アルダン「そうですか……」
兄様はチヨノオーさんが勝つとは言いませんでした。という事はチヨノオーさんにはまだ何か足りない部分があるという事でしょうか?
アルダン「あの、兄様。このメンバーの中で唯一GⅠを勝っているチヨノオーさんでも勝利は確実ではない、のでしょうか?」
八幡「そうだな。確かにあの中では実力上位に居るのは間違い無い。だがそれは能力だけの話で個人で持ち合わせているものは含まれない。」
アルダン「個人で、持ち合わせているもの?」
八幡「まぁでもこれはお前にも言える事だけどな……じゃあ1つクイズ……っていうよりも質問だな。教科書通りの作戦をする奴と何をするか分からない奴、どっちの方が恐ろしい?」
アルダン「それは勿論後者です。」
八幡「そうだろうな。今回のレースでその作戦をする奴が居るかどうかは分からないが、お前やチヨノオーは紛れも無く前者のタイプだ。だから奇想天外の一手を打たれた時に弱い。逆に後者は自分の持ち味を生かす走りをするから、どのタイミングで仕掛けるのかも自分で選べるから、相手にプレッシャーをかけ放題……そうする内にプレッシャーを与えられる側は徐々に自分の走りを見失って、ソイツに呑まれる。まぁ、変幻自在な脚質や唯我独尊な奴でない限りはこの作戦はまず出来ないだろう。」
そんな大胆な事をするウマ娘が本当に居るのでしょうか?だとすれば考えられません……自分の得意な走りを捨ててまで一発勝負に出るなんて。
八幡「まぁ、とりあえずこの皐月賞を見れば分かるだろう。話を戻すが、チヨノオーを出し抜く隙があるとすればそこだろうな。そして運悪く、チヨノオーはそれに弱い。」
八幡(アルダンには濁したが、要は泥臭い走りが出来るかどうかだ。これまでのレースを見る限り、チヨノオーにはそういう走りがあまり見えない。懸命さは伝わるが、『何が何でも勝ってやる。』とか『このレースだけは絶対に。』とかそういうものがあまり感じられない……突くとすれば、そこだろう。)
アルダン「では兄様、パドックで皆さんの様子を見ながらセルフ解説をお願いしますっ♪」
八幡「え、セルフで解説すんの?」
ーーー数分後ーーー
実況『………』
解説『………』
『あ、あのぉ~……もう何人かパドック入ってるんですけどぉ………』
解説『いや、なんか隣の部屋から凄い正確に解説してる人が居るから逆に解説がしづらいといいますか……』
『え?』
アルダン「では兄様、次は8枠16番のディクターランドさんです。14番人気ですが、どう思われますか?」
八幡「ディクターランドだな。前走の毎日杯では不運の連続だったからあの結果は仕方ないと言うべきだな。重バ場に加えてそれなりのペースだったから先団に居た彼女にとっては不利に不利が重なったようなレースだった。今日の展開次第では一発あるかもしれないウマ娘の1人だな。」
『………確かに上手い解説ですね。それにもう1人の女性も。』
実況『職務を放棄しているわけではありませんが、私達中年男性2人の声と若い男女の声、どちらの方が世間受けが良いのかと考えると……』
解説『自信消失してしまいまして……』
『……い、一応は進行をお願いします。きっとここだけだと思いますので!』
後にこの3人のやり取りが新聞に取り上げられるのだが、世間からは『ゲストの方よりも面白い。』『素人相手に自信無くしてて草』『次から隣の人達とコラボ望むっ!』『生でその解説を聞いてみたい』といった反応があり、番組の裏ではボケありの方針で解説と進行する事も検討されている事になるのは、この番組内だけの話。