八幡side
実況『ゴールインッ!!勝ったのはトムマックですっ!前走の敗北からの見事な勝利ですっ!』
………やっぱ全然落ち着かないな。
準備は万全、やれる事は全て尽くした。後はアルダンを送り出してやるだけ……だが、準備は尽くしたと言っても今日の日本ダービーは、それだけで勝てるレースではない。この場内の雰囲気や他のライバル達の気迫やトレーナー達の表情だけでも分かる、この1戦に懸ける想いってのは並大抵のそれじゃない。勿論、俺も日本ダービーの重さは理解しているつもりだった……だっただけだ、見るのとその場に実際に立つのとではまるで違う。
ドーベル「……ちょっと。」
八幡「っ!な、何だ?」
ドーベル「アンタ、ちょっと顔怖過ぎ……少しリラックスしたら?」
八幡「……そうしたいのは山々なんだが、そうしようとすると落ち着かなくてな。今もこうしてレースを観ているわけだが、時間が経つのが早く感じる。」
パーマー「へぇ~トレーナーでもそんなときがあるんだ。」
ライアン「何だか少し意外ですね……」
八幡「俺を何だと思ってるんだ?初めての日本ダービーなんだ、緊張の1つくらいして当然だろ。普通にしているつもりでも、どこかざわついて落ち着かない……普段だったら落ち着けているのに、やっぱダービーだからなんだろうな。」
ブライト「トレーナーさま~、こういう時は~深呼吸ですよぉ~。」
それはもうやった。効果は一瞬だけ落ち着けてすぐに逆戻りだ……
ヒリュウ「トレーナーさん、そう緊張されなくても大丈夫ですよ。貴方はアルダンに自身の出来る全てを注いだ筈です、であれば残すはあの子がこの舞台でどれだけ力を発揮出来るのかを見届けてあげるだけです。」
父「妻の言う通りです。後はアルダンの勝利を祈るだけです。」
マックイーン「伯父様達の言う通りですわ、堂々としていればいいのです。」
八幡「………そうだな、なんかお前見てたら落ち着いた。」
マックイーン「あら、それはどうしてですの?」
八幡「だってそのカップ、もう空だぞ。」
マックイーン「………」
うん、俺以上に落ち着いてない奴が居ました。
八幡「それじゃあ、最後の打ち合わせに行ってきます。」
パーマー「行ってらっしゃ~い!」
ーーー控え室ーーー
アルダン「兄様、準備が出来ました。」
八幡「そうか……どうだ、今の感じは。」
アルダン「万全です。充実していますし、この前のNHKマイルCの時よりも良い走りが出来そうです。」
八幡「そうか……じゃあ今日の作戦だが、得意の先行策で行くのは勿論だが、チヨノオーをマークしろ。気付いているとは思うが、今日のアイツは皐月賞の時とは別人になっている。懸ける想いが違うって事なんだと思う。だがその気持ちは俺達だって負けてない。気持ち・実力・運、全部において勝ちに行くぞ。」
アルダン「はい……チヨノオーさんは勿論の事、他の皆さんにも負けません。見ていてください兄様、必ず勝利を掴み獲ります。」
八幡「あぁ、行ってこい。
ーーー観覧席ーーー
実況『青葉賞2着からの参戦ですっ!これまで着外無しと安定した実績!このダービーの舞台でも一発あるでしょう!8枠17番、ガクエンツービートがダービーでも見せますっ!』
ドーベル「……あっ、出てきたっ!」
ヒリュウ「………」
父「………」
実況『ホープフルSでは強さを、NHKマイルCでは速さを証明しましたっ!このダービーでは運と実力を証明しますっ!変則ローテーションは生きてくるのかっ!?大外8枠18番、ここまで無敗でGⅠ2勝のメジロの令嬢、メジロアルダンがダービー制覇に手をかけます!以上、18人による日本ダービーが間もなく発走ですっ!さぁ、今回の1番人気は3冠路線組ではなく、敢えて別路線でダービーまで進んで来たメジロアルダンとなっております。この点はいかがでしょうか?』
解説『皐月賞を回避した時は少々勿体ないとも思いましたが、ホープフルSを最後に見てから青葉賞、NHKマイルCと勝ち進んできましたが、走る度に強くなっていってるんですよね。しかもこのメンバーの中でも仕上がりはこれ以上無いと言っても良いくらいですね。』
実況『成る程、では今回の2番人気のヤエノムテキと3番人気のサクラチヨノオーはどうでしょうか?』
解説『彼女達も今日に向けて仕上げてきているのが分かります、気迫が此処まで伝わってきますからね。ヤエノムテキは2つ目の冠を、サクラチヨノオーは皐月賞の雪辱を果たしたいところでしょうからね。どちらにとってもこの日本ダービーは負けられない舞台となっているでしょう。』
ラモーヌ「………」
八幡「………」
ライアン「うわぁ……これから始まると思うと、何だか緊張してきたよ~。」
ドーベル「うん……あたしも。これがダービー特有の緊張感なんだ……」
ブライト「ヒシヒシと伝わってきますわ……」
マックイーン「流石は伝統ある日本ダービーですわね……」
パーマー「けどさ、アルダンさんはもっと凄いんじゃない?だってこれから走るんだからさ、あたし達が今感じてる緊張なんて、これから走るあの人達に比べたらさ~……」
確かに本当の緊張感なんて走る本人達にしか分からない、俺達に出来るのは少しでもアルダンを応援する事だ。ちょっとでも力を出せるようにな。