八幡side
八幡「………」
……最後の最後で、アルダンが2度目のスパートをかけた。その瞬間、一瞬だがアルダンの身体から淡い青色の何かが出た気がした。だがしれは本当の一瞬だった……だがその瞬間にアルダンが途轍もない末脚を出して、1番目にゴール版を駆け抜けた。しかもレースレコードまで出すという功績まで出してくれた。
ライアン「凄い凄いっ!!アルダンさんが日本ダービーを制覇したよっ!!」
マックイーン「メジロ家の長い歴史の中でも、未だダービーウマ娘は現れていませんでしたのに、素晴らしい事ですわっ!!」
父「まさか、あんなに身体の弱かったアルダンが………こうしてダービーを制するなんて夢にも思わなかった……」
ヒリュウ「夢を見ているみたいだわ……あの子があんなにも力強い走りを、それもダービーを勝ってしまうなんて………」
ラモーヌ「………」
ラモーヌと併走した時には、あんな走りは出来なかった。勿論、走りは着実に良くなっていたし、走っていく内に差も縮まっていたのは見ていたから分かる。だが、あそこまでの走りはこれまで見た事が無い。
ラモーヌ(凄い……これまでのとは全然違う。こんな目は初めて見る、なんて輝き………)
パーマー「おめでとうトレーナー!これでダービートレーナーって呼ばれちゃうね!」
八幡「………っ!あ、あぁ……イマイチ実感湧かないけどな。」
ヒリュウ「トレーナーさん、娘にGⅠを獲らせていただいただけでなく、このようなダービーの大舞台でも勝利に導いてくださった事、本当に感謝申し上げます。」
父「アルダンの身体の事を考えると、走れるだけでも奇跡だと思っていました……そんな子がこうして、大きな舞台で活躍出来るようになったのもトレーナーさんのおかげです。」
八幡「いえ……自分はアルダンに色々と指示を出していただけです、本当に頑張ったのはアルダンです。今日はアルダンを褒めてやってください。今はまだご家族の時間を取らせる事が出来ませんが、インタビューや写真撮影が終わった時にでもお願いします。自分はこれから、アルダンの元に行きます。」
ヒリュウ「トレーナーさんも、どうぞアルダンの事を褒めて差し上げてください。」
褒める、か……俺に出来るだろうか?
ーーー地下バ道ーーー
八幡「………」
アルダン「っ!兄様っ!」
八幡「おう、お疲れさっ!?」
アルダン「勝ちました……この舞台で、私の目標としていたこの日本ダービーを、勝つ事が出来ました。」ギュ∼!!
八幡「お、おう……そうだな……俺もまだ実感が出来てないんだが、お前のその様子を見ると本当に勝ったんだなって再確認出来た。よく頑張ったな。」
アルダン「はい……はいっ……」
アルダンの声には少しだけではあるが、嗚咽も混じっていた……きっと泣いているんだろう、アルダンの顔が埋まっている俺の右胸辺りに湿り気を感じると共に、身体を小刻みに震わせている。
八幡「この後はインタビューも控えてるんだぞ、こんな顔で出るつもりか?急いで控え室に行かないとな。」
アルダン「もう……少しは余韻に浸らせてはくれないのですか?」
八幡「バカ言うなよ、俺だって余韻に浸りたいんだよ。」
ーーー控え室ーーー
八幡「……少しは落ち着いたか?」ナデナデ
アルダン「はい……とても心地良いです。もっと続けてください……」
八幡「いいのか?人前に出られない顔になっても知らんぞ?」
アルダン「その時は兄様が何とかしてくださると信じていますので。」
八幡「他人任せかよ、俺がどうにか出来るのは尻尾のケアくらいだぞ?」
アルダン「兄様のケアはとても上手ですので、信頼しています。」
八幡「根拠の無い信頼だな。」
アルダンはレースが終わったのと張り詰めた緊張感が無くなったのか、今は落ち着いているというよりもリラックスし過ぎているような感じになってしまっている。控え室のソファに座っているのだが、アルダンは俺の隣で俺の肩に頭を預けながら頭を撫でられているという状況だ。
前にアルダンの頭を撫でた事があったが、確かその時以来だった気がする。担当になる前だったっけ?
八幡「それにしても、最後の100mは驚いたぞ。あんな走り、トレーニングの時には出せなかったからな。」
アルダン「チヨノオーさんのおかげです。チヨノオーさんが全力でぶつかってきてくれたおかげで、私も全力以上の力を出す事が出来ました。勿論、トレーニングをつけてくださった兄様と姉様のおかげでもあります。」
八幡「けど、1番はチヨノオーが全力でぶつかってきてくれたからって事か。」
まぁでも、全力でぶつかってくてくれる相手が居ると、自分の実力以上の力を発揮しやすいのは聞いた事がある。まぁその部分は精神論にもなってくるが、その気持ちが強ければ強い程、思いもしないくらい力が出てくるってのは聞いた事はある。
アルダン「兄様。」
八幡「ん?」
アルダン「今日の写真撮影、一緒に撮りましょうね♪」
八幡「え?俺、カメラ嫌いだから撮らないけど?」
アルダン「いいえ、撮ります。記念すべきダービー制覇なのですからっ♪」