エアグルーヴside
奴との距離を置いてから既に1ヶ月が経過していた。後数週間したら、大阪杯だ。だというのに………思うような動きが出来ない。それだけではない、生徒会でも些細なミスをするようになってしまった。それに最近ではミーティングらしいミーティングを行った記憶も無い。だがそれはいい、距離を置くという提案を飲んだのは私だ。今更どうこう言うつもりは無い。だが………前よりも明らかに動きが悪い。これもトレーナーの影響か?
フジ「エアグルーヴ、もうそろそろいいと思うよ?」
エアグルーヴ「……何がだ?」
フジ「惚けなくていいよ、八幡トレーナーさんの事。私は君と八幡トレーナーさんの両方から事情は聞いてる。個人の見解だけど、私は彼が嘘をつくような人にも、ノリで君を怒らせるような人にも見えない。もう1度よく話し合ったらどうだい?」
エアグルーヴ「………」
フジ「君も本当は分かってる筈だよ?」
………分かったような事をっ!
エアグルーヴ「………あぁ分かってる、分かってるさ!だが頭では分かってはいてもどうにもならんのだ!奴があの女と一緒に居たというだけでイライラが収まらん!!それにあんな提案を受け入れてしまったのだぞ、私にどうしろと言うのだっ!?」
フジ「………エアグルーヴ、君は八幡トレーナーさんの言い分を最後まで聞いたかい?」
エアグルーヴ「……あぁ。」
フジ「ならどうして今君はそんな風に悩まされてるのかな?八幡トレーナーさんの話を最後まで聞いていたのなら、こんな事にはなってない筈だよ?仮に聞いていたとしても、こうなる理由は1つ………君が納得しなかった、違うかい?」
エアグルーヴ「お前は奴を信じるのか?」
フジ「そういう問題じゃないよ。私は2人共信じてる……でも今の君には怒りしか感じない。そんな人の言い分をどうやっていうのかな?」
エアグルーヴ「………」
フジ「それに今の君にだったら、例え走りであっても負ける気はしないよ。」
………何だと?
エアグルーヴ「ならば勝負だ!!」
フジ「うん、いいよ。」
ーーー数十分後ーーー
エアグルーヴ「はぁ……はぁ……はぁ……」
フジ「ふぅ……もう終わりかな?」
私はフジと勝負をしてから1度も勝てていなかった。4本走って4本とも負けだった………
エアグルーヴ「何故だ……何故だ!!どうしてなんだ!?何が悪いのだっ!?」
フジ「………エアグルーヴ、1つ質問をするよ。君は八幡トレーナーさんの事を信じてるかい?」
エアグルーヴ「な、何?」
フジ「どうなの?」
エアグルーヴ「そんなの……「私は八幡トレーナーさんの事を信用してるし、信頼してるよ。」っ!」
フジ「あんなに尽くしてくれるトレーナーは他に居ないと思ってる。君だって知ってるでしょ?2年前のブルボンや去年のバブル、ケガをしたポニーちゃん達のリハビリに付き合ったりしているんだ……知らない?このグラウンドだってそうさ、用務員の方々が点検をしてくれているけど、八幡トレーナーさんはそれも率先して手伝ってる。このコース場だってそうさ。彼はとても優しい人だよ、人の話も聞かない自分勝手なウマ娘とは違ってね。」
エアグルーヴ「っ!!」
フジ「これはあまり言いたくはないけど、そんなに八幡トレーナーさんの事が信じられないのなら、契約を破棄すればいいよ。あの人は優しいから言わないと思うけど、今の君が八幡トレーナーさんと上手くやっていけるとは思えない。」
エアグルーヴ「っ!!?」
待て、今の言葉は何処かで………っ!!
『相手の事を信じられないのであれば当然だろう?前者の答えはまだ面白いと思ったが、後者の答えがあれならば答えなんて1つしか無い。信頼を置けない相手にトレーニングをつけてもらうなんて不安しかないだろう?ならば無理につけてもらう必要なんて無い。違うトレーナーに、それこそ自分が信頼に足る人物にトレーニングを見て貰えばいい、違うか?』
………そうだ、あの河川敷で会ったウマ娘だ。フジはあのウマ娘と同じ事を思っているのか?
フジ「君は友人だし、傷付けたくはないからこれ以上は言わないよ。ただ、八幡トレーナーさんとこれからも契約を続けるつもりであるのなら、今すぐその考え方を改めた方がいい。」
エアグルーヴ「………」
フジ「……私は寮に戻るよ、君も遅くならない内に戻るんだよ。それに今日は休みなんだ、本当はこんな事してはいけないんだからね。」
………私は、トレーナーを……信じていないから、契約を破棄して方がいい?だが………
エアグルーヴ「………どうすれば、いいのだ?」
エアグルーヴsideout
八幡side
『彼女、雪ノ下の長女の事だがもう1ヶ月経つ。どうするつもりなんだ?』
八幡「正直に言うと、関わりを持ちたくないのでこのままでも良いと思ってます。」
『お前の担当がある意味被害を受けたようなものだ、それなのにお前はこの件を放置すると?』
八幡「向こうから来ないのであればそれで良いですよ。それ以上の事は望みません。エアグルーヴも相手の顔なんて見たくないでしょうしね。」
『そのエアグルーヴはどうしてるのだ?』
八幡「……距離を置いてます。」
『………まぁ妥当な判断と言っておこう、人としては。だがトレーナーとしては「分かってますよ、最低だって。」………最後まで言わせてくれ、君にはそうするしか無かったのだろう?少しでも彼女の精神を落ち着かせたかった、違うか?』
八幡「………」
『八幡。もしもだ、彼女から変わる気が無いのだと判断したら、契約を切る事も視野に入れておけ。』
八幡「ですが『君のプライドがどうこうという事では無い。君はその才がありながらそれをドブに捨てるつもりなのか?時間を無駄にする気か?エアグルーヴだけが特別ではない、お前に教えを請いたいというウマ娘はまだまだ居る筈だ。そんな意欲を持っている子の担当をした方が、私はお前自身の為になると思うが?』………」
『まぁ、決めるのはお前自身だ。好きにするといい。だがその時の責任も自分に降り掛かってくる事を忘れるな。』
八幡「………はい。」
『よろしい。近々そちらに行くとしよう。彼女とも話がしたい。』
………契約の破棄、か。エアグルーヴにとってそれが1番であるのならそうするべきなのかもしれないが………俺は、どうなんだ?