八幡side
八幡「っというわけだアルダン、今日からドーベルが一緒にトレーニングをする事になった。今週は天皇賞前という事もあるから本格的なトレーニングは来週からになるが、よろしく。」
アルダン「かしこまりました、兄様。つまり兄様はメジロ家の専属トレーナーになるご決断を?」
八幡「今の時点では前向きに検討って感じだな、まだ決定はしていない。ドーベル、分かってると思うがアルダンは今週の大一番を控えている。悪いが今週は本格的なトレーニングではなく追い切りに付き合ってもらう。」
ドーベル「分かった、今週は早くここの雰囲気に慣れるように頑張る。」
八幡「ん、そうしてくれ。それとアルダンにも一応伝えておく、俺はまだ複数の担当を持つ事を許されていない。だからこうやって2人のトレーニングを見ている事を快く思わない奴が出てくるだろう。そういった手合いが絡んできても気にしないように。」
アルダン「分かりました。まぁ今はそんな事を気にしている場合でもありませんけど。」
八幡「そうだな。今は目の前のレースに集中だ。じゃ、今日も初めて行くぞ。」
そして今日のトレーニングを始めた。まぁ追い切りなのだが、ドーベルは今日初めてのトレーニングにも関わらずよくやっていたと思う。実力が数段上のアルダンの走りにもついて行ってたしな、追い切りとはいえ初めての事を考慮すれば上々だと言っても良いだろう。アルダンの走りも洗練されているし、やっぱドーベルに参加してもらって正解だな。
八幡「よし、追い切りはこれまでだ。2人共ダウンに移れ、ストレッチと柔軟も忘れるなよ。」
ア・ド「はい。」
八幡sideout
アルダンside
アルダン「今日はとても有意義な併走になりました、ありがとうドーベル。」
ドーベル「い、いえそんな……私なんてまだまだです、それに少しでも追いつきたい人が居ますので。」
アルダン「それはエアグルーヴさんの事ですか?」
ドーベル「……はい。人前でも堂々と出来るようになりたいんです、先輩は私の憧れなので。」
アルダン「そうですか……エアグルーヴさんに少しでも追いつけると良いですね。」
ドーベル「はい。ところで、アルダンさんにはそういう人って居ないんですか?」
アルダン「そうですね……私には憧憬と言える存在は居ません。知っての通り、私は長い間病院生活が多かったので。そういった意味では尊敬しているのは姉様ですね。」
ドーベル「ラモーヌさんを?」
アルダン「えぇ。私にとって最初の指標になった方ですから。だからこそ、その背中はとても遠く感じるものです。今でもまだ道半ばといったところですし。」
史上初のトリプルティアラを達成した姉様の背中は、あまりにも眩しく遠い……メジロ家で初めてのダービーウマ娘になったとはいっても、トリプルティアラの偉業に比べると霞んでしまうのは仕方のない事。それだけ姉様の成し遂げたトリプルティアラ……いえ、【完全ティアラ】は素晴らしい功績。
ドーベル「でも、アルダンさんだって凄いじゃないですか!2年連続でGⅠを勝ったのも、メジロ家でダービーを勝ったのもアルダンさんが初めてなんですから!」
アルダン「ありがとうございます。私も負けないように頑張らないといけませんね。」
ダウンのランニングを終えた私達はストレッチと柔軟を実施しています。
八幡「やってるな。」
アルダン「兄様、後片付けありがとうございます。」
八幡「気にするな。それに、騒がしくもなってきたしな。」
っ!気が付きませんでした……
ドーベル「やっぱり……見られてたんだ。」
八幡「やっぱ注目されたな、まぁ少なからず予想はしてたから別に何ともないが。」
アルダン「ですが兄様、まだ始まったばかりのこの状況はいつまで?」
八幡「少なくとも理事長が動くまでは続くだろうな。仮に俺がメジロ専属になってもこの状況は続くだろうしな。間違いなく俺へのやっかみはあると思うぞ。」
ドーベル「何でトレーナーにだけ?」
八幡「考えてもみろ、新人トレーナーがいきなり名家の専属になったと聞いて良い顔をするトレーナーなんて殆ど居ないだろ。居たとしても実力を認めている以外に理由なんて無いだろ。」
アルダン「ですが兄様なら問題無いと思われますが?他のトレーナーとお話する機会はありますが、皆さん兄様への評価はとても高いご様子でしたよ?」
八幡「確かにその通りではあるが、それはお前がメジロ家だからっていうのもある。少しでも大物の担当になれるチャンスがあるのなら、その身内に少しでも接点とか好印象を与えておけば……って考えを持っているかもしれないしな。まぁあくまでも予想だけどな。けど腹の中では何を考えているのか分からないのは人も同じだ。」
アルダン「それは兄様も、なのでしょうか?」
八幡「俺がそんな器用な人間に見えるか?だとしたらアルダン、お前はよっぽど人を見る目が無いぞ。」
アルダン「あら、でしたら私はとてもダメなウマ娘ですねっ♪」
八幡「何で嬉しそうなんだよ……」