八幡side
天皇賞から3日が経過して、俺達は普通にトレーニングを再開している。今週からはドーベルも通常のトレーニングになっているのだが、最初だからまだ順応は出来ていないものの、飲み込みは早い。このまま行けばすぐにでもアルの良い併走相手になれるだろう。因みにアルは年内のレースには出走せず、来年の大阪杯に向けての準備を進めている。トライアルに出るかどうかはまだ検討の段階だが、出走しておいた方が自信にも繋がるからする方向ではいる。
そして今はというと………
タマ「済まんな、急にお邪魔して。ちょいと話したい事があったんや。」
八幡「それは別に構わないんだが、小宮山さんは?一緒じゃないのか?」
タマ「コミちゃんなら今頃、美味い粉物の焼き方でも教わってるんとちゃうか。まっ、ウチの舌を唸らすには10年以上はかかるけどなっ!」
八幡「よく分からんが、話ってのは?」
タマ「あぁせや、この前のレースのアルダンの事や。アンタ、どんなトレーニングしたらあんだけの末脚を使えるように出来るんや?」
八幡「……タイム、見たんだな。」
タマ「ウチ、負けた気分やった。せやから写真撮る時なんて本気で喜ぶ事が出来んかった……なぁ教えてくれや、どうやったらあんな末脚が使えるんやっ!?」
八幡「大前提として、道中で脚を溜める事は必須になるっていうのはお前も分かってると思う。次に必要なのはロス無く展開を作る事だ。アルダンは中団やや前目の位置だったのは確認したと思うが、前にはウマ娘が居たからスタミナを温存しながら進められた。だがお前は途中から単独2番手だったからどうしても自分でペースを作らなきゃならなかった、そこが大きい。」
タマ「成る程なぁ~だからアルダンはあんだけの脚を使えたんか……」
八幡「本来のお前の脚質は追込だからロス無く進む方法があるとすれば、道中はジッと後方待機。何があってもだ。3~4コーナー中間で誰にも邪魔されない位置から追い出しをして一気に加速……ってところだな。」
タマ「なんか、普通に聞こえるんやけど?」
まぁそうだろうな。
八幡「けどその普通の事をさせてくれないのがライバル達だろ?だから途中で余計に脚を使わせられる、そうしないように直線までの駆け引きとかが必要だと俺は思うぞ。」
タマ「……ちゅう事はウチに今足りないんは、その駆け引きって事か。」
八幡「どうやったらスムーズに直線を迎えられるか、どうやったら相手を出し抜けるかが必要になると思うぞ。追込を得意とする脚質の奴はな。」
タマ「そうかぁ……ありがとうなトレーナー、ええ事聞けたわ!」
八幡「次はジャパンCだろ?オグリも出るみたいだし、それまでには形にしてみせろよ。」
タマ「おう、任しときっ……?アルダンは出ぇへんの?」
八幡「大阪杯を目標にしてる、だから今年はもうレースに出ない。」
タマ「何やそうやったんかぁ~リベンジしたろ思ってたのに……」
八幡「普通逆だろ、こっちが負けてんだから。っていうか気になったんだけど、何で小宮山さんが粉物の焼き方を教わってんの?」
タマ「ん?この前お好み焼き食いに行ったんやけど、ウチの焼いたお好み焼きが美味過ぎて腰抜かしてん!そしたらコミちゃん『あたしも上手く焼けるようになるからっ!』とか言って練習しとるんよ。」
………小学生みたいな事してるんだな、小宮山さん。
八幡「そういう事か……そういえば最近粉物って食べてないな。麺類すら食ってなかった。ちょうどその話にもなったから今日は粉物にするか。」
タマ「ええやん!じゃあ今日は何にしようかなぁ~学園の学食むっちゃ美味いからなぁ~♪」
八幡「いや、自分で作るから。」
ーーーカフェテリアーーー
八幡「うん、まぁお好み焼きだよな。さっきタマモクロスもお好み焼き食べに行ったって言ってたし。それよりも、頼まないのか?」
タマ「だって気になるやん、トレーナーの焼き方。」
八幡「見ても別に面白い事なんて無いと思うけどな。まぁ別にいいけど。」
とりあえず頭の中からレシピ引っ張り出すところから始めるか。えっと……作り方は~………
ーーー数十分後ーーー
八幡「ド~は土手煮のド~。レ~はレバーのレ~。ミ~は味噌焼きのミ~。ファ~はファヒータのファ~。ソ~はそぼろ丼~。ラ~はラーメンのラ~。シ~は生姜焼き~。さぁ食べましょう~。」
タマ「油っこ!!何やその替え歌!ちゅうかアンタそんなキャラやったんかいな!?」
八幡「いや、今のは思いついた料理名で替え歌しただけ。普段はこんな事しない。」
タマ「じゃあ何でやったんっ!?後ファヒータって何!?」
メキシコ風のアメリカ料理だ。調べたから知ってるが食った事は無い。
八幡「よし、出来た。」
タマ「おし、じゃあお手並み拝見やな。」
八幡「え、食べるの?」
タマ「当たり前やん!」
八幡「自分のは?注文してないのか?」
タマ「………ウチ、貧乏やから。」
………
八幡「………どんどん焼くから冷めない内に食えよ。」
タマ「済まん、トレーナーってホンマにええ人やな。ほんならいただくわ、あむっ………うんまあああぁぁぁぁぁいっ!!!」
八幡「(でっけぇ声………)それは何より。」
タマ「トレーナーッ!!これどうやって作ったんやっ!!?むっちゃ美味い!!頬と口と顎が落ちるくらい美味いっ!!!」
八幡「顔半分落っこちてるぞ~。っていうか普通に作ってるだけだから作り方も何も無いぞ~。」
自分用にと作ったお好み焼きは殆どタマモクロスの胃袋に収まったが、食べる度に大声で『美味い。』って叫ぶからたらふく食わせてやった。
そして小宮山さんが『焼き方教えてっ!』と言ってきたのはまた別の話だ。