八幡side
アサマ「八幡さん、トレーナー活動は順調ですか?」
八幡「はい、良い事も悪い事も含めて充実しております。」
アサマ「それは何よりです。アルダンも忙しいとは思いますが、しっかりと彼を支えるのですよ。」
アルダン「勿論です、お婆様。」
俺は今、メジロ本家に報告の為、一時的に超豪華な屋敷の書斎、つまりはさっきまでお婆様の部屋に居た。んで今は移動して中庭のテラスでお茶をしている。
アサマ「それにしても、貴方をメジロお抱えのトレーナーにしたのは間違いではありませんでした。貴方の評判はよく聞きますよ、腕の立つ良いトレーナーだと。先月も是非八幡さんの元でとご丁寧なお電話もいただきましたよ。」
八幡「そうですか……まぁでも自分はウマ娘を見て判断すると決めているので。これまでもそうしてきましたから。」
アサマ「その英断もあって、我がメジロ家は多くの盾に加えて素晴らしい栄誉を多く得ました。ラモーヌ以上のティアラをまさかドーベルが獲るなんて、誰が予想したか……他の子達もよく頑張りましたからね。」
最初の頃のチームはメジロばかりだったが、確かに全員目を見張る実績を残した。お婆様が言ったドーベルはラモーヌ以来のトリプルティアラを達成しただけでなく、無敗で達成したからだ。その後のエリザベス女王杯も制覇した事から【無欠女王】と呼ばれるようになった。ラモーヌの【完全ティアラ】が少し皮肉っぽく聞こえるが、それは仕方のない事だろう。阪神JF、トリプルティアラ、エリザベス女王杯連覇、ヴィクトリアマイル、全部で7勝とルドルフと並ぶ勝利記録だ。他にもライアンがダービー制覇に加えて宝塚記念のGⅠ2勝、パーマーはホープフルSと宝塚記念と有マ記念、海外の香港ヴァーズを逃げ切り勝ちでGⅠ4勝、ブライトが天皇賞を3連覇(春・秋・春)と全員が複数の実績を得ている。1番以外なのはブライトだろうな、あののんびりさんが天皇賞を3連覇だからな。
アルダン「夫は当時も大変お忙しくされていましたけど、その忙しさと努力のおかげで私達が活躍出来ましたから。」
八幡「買い被り過ぎだ。お前達の才能あっての成果だ、俺は少し手伝いをしたに過ぎない……って言ってもお前は信じないだろうから、少しは俺の力もあるって言わないとな。」
アルダン「八幡さんのおかげで、私のガラスと呼ばれたこの脚は1度も砕けずに走り終える事が出来たのですから、そのくらいの自信は当然です。」
アサマ「今後も期待していますよ、八幡さん。」
八幡「はい。」
……流石は爺やだな、紅茶を淹れるのが上手い。
アサマ「時に八幡さん、1つお尋ねしてもよろしいですか?」
八幡「はい、何でしょうか?」
アサマ「以前、偶々トレーニングを見る機会がありましたが、ヒトである貴方が常人とは思えないくらいの速度で走っているのを拝見しました。」
八幡「そうですね、簡単に言えば自分にもウマ娘の血が入っているからだと思います。珍しくもない事ですけど、自分は色濃くウマ娘の能力を受け継いでいるみたいですね。」
アサマ「しかし、八幡さんのご家族は皆さんヒトでしたが?」
八幡「自分の祖母がウマ娘なんです。隠していたわけではありませんが、お話する事でもありませんでしたので。」
アルダン「八幡さんのお婆様がウマ娘だったのですか、それならはその身体能力も合点がいきますね。」
アサマ「しかし、いくら直系の血筋とはいえ、このような形で遺伝するとは聞いた事がありません。それどころか男性にウマ娘の走力が受け継いだという事も……それだけ八幡さんのお婆様が素晴らしいウマ娘だったという事でしょう。」
八幡「確かに自分の祖母は実績のあるウマ娘です、それは間違いないとだけは言っておきましょう。」
アルダン「どのようなお名前なのですか?」
八幡「クリフジ。まぁ、聞いた事は無いと思う。現役の学生だって知らないんじゃないか?」
アサマ「……クリフジ。成る程、八幡さんはその方の子孫だったというわけですね。」
アルダン「ご存知なのですか?」
アサマ「私が生まれるより前、メジロ家が繁栄するよりも前に存在していた超名門の育成クラブがありました。そのクラブからは何人ものウマ娘が中央に行っては瞬く間に輝かしい功績を収めていました。まさか……」
八幡「いえ、自分が知っているのは名前と顔、そして実績だけです。11戦11勝、現代のレース名でオークスと日本ダービー、菊花賞を勝っています。」
アサマ「………間違いありませんね、八幡さんはクリフジさんのお孫さんだというのは。」
アルダン「オークスと日本ダービーを……それに菊花賞まで。」
八幡「すげぇだろ?今のウマ娘だったらまず絶対に進まない路線だろうな。」
アサマ「八幡さん、すぐにコンタクトを取りたい人物が居るのですが、お呼びしてもよろしいでしょうか?」
八幡「?はい、構いませんが。」
その後、URA副会長のスピードシンボリさんがメジロ家まで来たと思ったら、いきなり目の前に来て握手されたと思ったら婆ちゃんの事で色々と質問をしてきた。しかもこれでもかってくらい目を輝かせて。この人、婆ちゃんのファンなんだな。
ーーー未公開シーンーーー
アサマ「もしもし、メジロ家のメジロアサマです。お世話になっております、スピードシンボリさん。」
スピード『お世話になっているよ、メジロアサマ殿。貴女からお電話なんて珍しい、どんなご用件かな?』
アサマ「いえ、つい今し方とても興味深いお話を聞き、確かスピードシンボリさんもご興味を示されていた事を思い出したので、お電話した次第です。」
スピード『ほう、私が興味を示していた……どんな話だったかな?』
アサマ「私の孫娘のアルダンの夫、比企谷八幡さんのご親族の関係です。」
スピード『ああ、彼の事か。彼にはクリスエスだけでなく、多くのウマ娘の力になってくれていると秋川理事長から聞いているよ。それで、彼の親族がどうしたのかな?』
アサマ「八幡さんのお婆様のお名前なのですが、クリフジという名前みたいですよ。」
スピード『っ!!?それは本当の事……んんっ、済まない取り乱してしまった。それは本当の事かな?』
アサマ「えぇ、当の本人から聞きましたから。」
スピード『……今すぐそちらに向かう、彼には今しばらく待ってもらうよう伝えてもらえるかな?』
アサマ「承知いたしました。お待ちしております、では……」
スピード『失礼するっ!』
アサマ「……お聞きの通りです、これからお客人が来ます。粗相の無いよう頼みますよ。」
八幡「はぁ……」