比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!   作:生焼け肉

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苦悩とコーヒー

八幡side

 

 

八幡「はぁ………」

 

 

どうするべきか……模擬レースが終了して俺の纏めた紙を見せて、ハヤヒデに渡したトレーニングメニューを見ただけで、一気に6人ものウマ娘が俺に逆スカウトして来た。しかもだ、生徒会長にその右腕、異名かどうかは分からんが【怪物】にBNWの最強格、母性たっぷりウマ娘に腹鳴り過ぎ娘、どのウマ娘も将来性抜群だ。

 

 

八幡「はぁ、どうしたもんかなぁ……」

 

???「そんなに悩んでどうかしたんですか?何か困り事ですか?」

 

八幡「あぁ、南坂さん。いえ、今日はちょっと色々ありまして………」

 

南坂「もしかして、さっきの模擬レースの事ですか?」

 

八幡「まぁ……はい。」

 

 

この人は数年前にこのトレセン学園のトレーナーになった南坂さん。チームも組んでるからそれなりに実績があるのだろう。この寮内では俺と歳の近い男性トレーナーだ。

 

 

南坂「上手く行かなかったんですか?」

 

八幡「いや、そういうわけじゃないんですよ。言ったらちょっと……反感を買うかなぁって。」

 

南坂「?」

 

八幡「逆スカウトを受けまして……6人から。」

 

南坂「6人!?凄いじゃないですか、そんなに多くのウマ娘から声を掛けられるなんて!」

 

八幡「ありがとうございます。でも少し声を抑えてもらえません?」

 

南坂「あぁすみません………けどそれの何処が反感を買う理由になるんですか?確かに新人トレーナーにしてはあり得ない数字ですが、別に反感を買われる理由は何処にもありませんよ?」

 

八幡「その、メンバーが濃くて………」

 

南坂「その6人の、ですか?」

 

八幡「………」カキカキ

 

 

流石に口では言えないから、いつも常備してあるペンとメモ帳にスカウトして来た奴の名前を書いた。

 

 

八幡「このメンバーがそうです。」

 

南坂「………ひ、比企谷君。えっと………これって本当なのかい?」

 

八幡「嘘だったらこんな風になってませんよ。配属初年度は担当を1人しか持てないって話じゃないですか、それなのにこのメンバーは選択の重みがヤバ過ぎますよ………」

 

南坂「た、確かにこの中から選び抜くのはかなり勇気がいりますね。」

 

八幡「この中から1人だけ逆スカウトだったら良かったのに、6人って………」

 

南坂「人並み程度の言葉しかかけられないですけど、頑張って選んで下さい。」

 

八幡「本当に人並みだし慰みにもならない言葉ですよね、ソレ。」

 

 

ーーー自室ーーー

 

 

八幡「はぁ………どうすっかなぁ。」

 

 

あのメンバー、俺には勿体無いくらいの将来有望なウマ娘ばかりだ。そんな奴等から逆スカウトされたなんて、光栄以外の何でもないのだが、逆スカウトされたのは2日前にトレセン学園に配属になった新人トレーナーだ。南坂さんはそんな反応しなかったが、これがもしプライドの高いトレーナーだったら、その人からのやっかみなんて相当なものだろう。

 

 

八幡「はぁ………どうすりゃいいんだ。けどまだ見てないウマ娘だって居るんだ、それに今日はライスの動きだって見るって約束したしな。まだあの6人の中から絞らなきゃいけないなんてルールでも無いしな。」

 

 

けどなぁ………マジでどうしよう。このままだとメニュー組むどころじゃねぇ。少し気分転換でもするか。

 

 

ーーートレセン学園・ベンチーーー

 

 

八幡「……ん?誰か居る?」

 

 

そのウマ娘は漆黒の髪をしていて黄色い目を光らせ、コーヒーを飲みながらベンチに座っていた。まるで梟みたいな奴だな………

 

 

???「………」

 

 

アイツ、この時間にコーヒー飲んでるのか?人やウマ娘にもよるが、寝付けなくならないのか?

 

 

???「………っ!」

 

八幡「あっ。」

 

???「………どうも。」

 

八幡「あ、あぁ、どうも。」

 

???「………よかったら、どうぞ。」

 

八幡「あぁ、はい………」

 

 

俺はそのウマ娘に促されるままに隣へと座った。特に用事なんて無いんだが、断るのはどうかと思うし………それにしてもコイツ喋らんなぁ。いや、話題を待ってるわけじゃ無いんだけどよ。

 

 

???「………悩みでもあるのですか?」

 

八幡「え?」

 

???「………浮かない顔をしていました、もしやと思ったので。」

 

八幡「あーまぁな。今年から此処に配属されて模擬レースを見て自分なりにそのウマ娘の走り方や特徴なんかをレポートしたのを頼まれてたウマ娘達に見せたんだが、そのウマ娘達から逆スカウトされてな。だからすげぇ悩まされてるってわけだ。」

 

???「………なるほど。」

 

八幡「ソイツ等、この学園内でもかなり有望な奴等でな。どう選べばいいのか分からずにいるんだ。」

 

 

ホント、どうやって選べばいいんだ………その6人でなきゃダメだってルールは無いが、ああいう風に全員からスカウトされたら、他の奴なんて選びにくい。

 

 

???「………コーヒーも一緒です。」

 

八幡「……は?」

 

???「………コーヒーにも色々な種類があります。そのコーヒーを淹れるお湯の温度で味が変わったり、量によっても変化します。私もどれが1番好きかと聞かれても、どれが1番良いかなんて答えられません。その淹れ方によって1番は変わるのです。」

 

八幡「お、おう………」

 

 

なんかコーヒーに例えられたんだが………アレか?良さは人それぞれですってか?

 

 

???「………貴方はコーヒーを飲みますか?」

 

八幡「……まぁ、甘いのなら。」

 

???「………では、どうぞ。」

 

 

するとその青鹿毛のウマ娘は俺に缶コーヒーを渡した。微糖であるのは助かる所ではあるが………

 

 

???「………私は毎週この曜日にこうしてコーヒーを飲みに来ます。来たくなったらどうぞ。私はマンハッタンカフェといいます。」

 

八幡「あぁ、名前言ってなかったな。俺は比企谷八幡だ。」

 

カフェ「………あぁ、貴方が学園内で噂のトレーナーさんでしたか。」

 

八幡「どんな噂かは知らんが、噂を立てられてるのは事実だな。」

 

カフェ「………それでは門限もありますので、私はこれで失礼します。」

 

 

そう言ってマンハッタンカフェはベンチから立ち上がって、ウマ娘の領がある方向へと歩いて行った。

 

なんか不思議なウマ娘だったな。今までに居ないタイプだったな。

 

 

カフェ「あぁそれから………」

 

八幡「ん?」

 

カフェ「よければお話し相手になってあげて下さい。その子も貴方に興味を持っているみたいなので。」

 

 

………え?誰の事?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はチームカノープスのトレーナー南坂さんに、【摩天楼の幻影】マンハッタンカフェでした!

南坂さんは競馬界の中でも実力はあるが、GⅠになると勝ちきれないスターホース達のウマ娘版でのトレーナーですね。

マンハッタンカフェは勝ち鞍こそGⅠ3勝と名馬と呼ばれるには今一つに感じられると思われがちですが、菊花賞、有馬記念、天皇賞・春のGⅠレースを連続勝利したという大記録を持っています。この記録は同馬と【皇帝】シンボリルドルフの2頭しか保持していないとてつもない記録です。

あの【シャドーロールの怪物】ナリタブライアンや【英雄】ディープインパクト、【金色の暴君】オルフェーヴルといった3冠馬達や、【黄金の不沈艦】ゴールドシップ、ビワハヤヒデ、キタサンブラックといった名馬達でもこの記録は達成出来ていないのです。

GⅠを勝つだけでも凄い事ですが、この3つのタイトルを連続勝利で手に入れる事はとても難しい事だというのが分かります。3頭目はいつ現れるんでしょうかね?

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