八幡side
ルビーとの併走が始まって数週間、今はもう2月に入っている。併走しているのを見ていて思うのは、以前にも増して走りが洗練されているという事だ。併走後には俺以外にもルビーから色々と教えてもらっているみたいだし、左回り1,200mの走りが格段に良くなっている。加えて後ろから追い込まれるという感覚も早くから身に付ける事が出来たから、想定している予定よりも早く進んでいる。メニューを早めに作っておいて良かった。
だがそれとは別に大きな問題も出てきている。それは数週間前にやったルビーとの併走トレーニングの事だ。目線カメラを使って生配信をした事でコメント欄が凄い事になっているのはカレンから聞いたのだが、それ以外にもやたらと生配信の催促がきているのだ。カレンのスマホに。それだけでなく、俺のチャンネル開設希望もあるのだとか。
八幡「俺にそんなつもりは無いってのに……」
カレン「もしかしてチャンネル開設の事?」
八幡「あぁ。まだ来るんだろ?」
カレン「うん、1人がその事を投稿したら次から次へとね。またカメラで生配信してほしいとかもあるよ。1日目だからって理由でやったのに、皆気が早いんだから。」
八幡「頼むからもうやめてもらいたい。俺はそういう活動するつもりは無いってのに。」
カレン「お兄ちゃんトレーナーのお仕事で忙しいもんね。動画の編集とかする暇なんて全く無いよね。」
その通り、そんな暇なんて俺には無い。まぁ編集する必要なんて無いのかもしれないが、もし動画を投稿するのなら分かりやすい方がいいよな。
カレン「けどお兄ちゃん、この前の投稿で他の人達も目線カメラで動画投稿してる人達が増えてるのは知ってる?」
八幡「そうなのか?今まで無かったのか?」
カレン「うん、そういうコンテンツは無かったかも。特にウマ娘の人達やサイクリングをしている人達が多いかな。でものその人達ね、必ず概要欄にカレン達の動画を載せてるんだよね。この動画を参考にしましたって。巷では目線カメラの始祖動画って呼ばれてるみたい。」
大層な呼称だな、おい。
八幡「ところで、ウマスタの投稿を見たんだが今日の夜に寮で生配信するみたいだな。何をするんだ?」
カレン「それは秘密っ♪その日になってからのお楽しみ!」
八幡「そうか、じゃあ配信終わってからコメント欄見て判断するわ。」
カレン「どうせなら配信を見てほしいかなぁ~。」
八幡「けど気を付けろよ、1月の生配信以来だからもしかしたらその手の話題が出るかもしれない。最初に牽制しておいた方が良いかもしれないな。」
カレン「うん、カレンも最初に言おうと思ってるんだ。あの日は特別だからいつもはしないよって。」
八幡「それがいいだろう。それにあのカメラ、学園の備品だから俺のじゃないしな。」
そしてその日は解散して、俺も寮に戻った。
八幡「………」モグモグ
葵「そういえば比企谷君、カレンチャンさんのウマスタを見たんですけど、今日は寮で生配信するみたいですね。」
八幡「あぁ、内容は秘密にされたけどな。」
葵「気にならないんですか?」
八幡「別に。」
葵「そうなんですか?だってもうすぐ配信時間ですよ?他のトレーナーの皆さんも見るのを楽しみにしている人が多いんですよ。」
八幡「へぇ~。内容を秘密にしているからこそだろうな。視聴者の気持ちを逆手に取っているな。」
葵「同期2君も今日の配信を楽しみだって言ってましたよ?今日の晩御飯も既に終わらせて部屋に籠って配信に備えるって言ってましたし。」
八幡「引きこもりのオタクかよ……まぁ楽しみ方は人それぞれだけどよ。もしかしてこの時間に人が少ないのってそれが関係してたりするのか?」
葵「それは分かりませんけど、きっと楽しみにしている人は居るんじゃないですか?」
黒沼さんとか六平さんとか田辺トレーナーは絶対に無いだろうな。沖野さんとか南坂さんは見るかも?小宮山さんも見るかもな。後輩も見そう。
八幡「んじゃ俺も飯食い終わったら部屋に戻るか……」
ーーー数十分後・自室ーーー
ワ∼キャ∼!
八幡「……なんか騒がしくなってきたな。あぁ、生配信の時間になったからか。けどそれにしては男女の声が混ざってるな。」
でもこのトレーナー寮って男女で別れていて、異性の立ち入りが禁止されてる。だから共同のスペースって食堂とダイニングくらいなんだよな。
八幡「……もしかして?」
ーーーダイニングーーー
八幡「………」
後輩「バレンタイン動画だったのかぁ~!楽しみになってきたぁ~!」
南坂「おや、イクノさんとネイチャさんの言っていた用事というのはこの事だったんですね。」
同期1「皆エプロン姿で可愛いじゃん~!チョコ作り頑張ってね~。」
……ダイニングのテレビで生配信を見てたのかよ、道理で声が聞こえるわけだ。っていうか結構人居るんだな。今は……おぉ、3万人くらい見てるのか。まぁでもこれから増えてくだろう。
八幡「………声の原因は分かったし、部屋に戻ろっと。」