エアグルーヴside
6月に入って、もうすぐ宝塚記念が始まる。上半期の総決算レースが近い……集うウマ娘達は皆強者達ばかりだ。中でもこの前の大阪杯で2着だったマーベラスサンデーが居るというのも理由の1つだ。他には、この前の安田記念を勝ったタイキブリザード、GⅠ競走を2勝している他に重賞レースも連対率の高いダンスパートナー、他にも走った事のある相手ばかりだ。
しかし、今回も負けるわけにはいかん。それに……この前の大阪杯のような展開にならないように、自身の動きは入念にチェックをしている。理由は……思いつく事はあるが、今はそれを気にしても仕方あるまい、目の前の事に専念するのみだ。
エアグルーヴ「ふっ……ふっ……ふっ……!」
今は目先の勝負に勝つ、それだけだ!
八幡「………」
フジ「エアグルーヴ、何だか調子が戻って来たね。」
八幡「……あぁ。」
フジ「このまま行けば、次の宝塚記念は難なく勝てるかな?」
八幡「さぁな、それは本人達の動き次第だ。しかも今回のレースでは前走の大阪杯からの参戦勢が多い。手の内は見られている上に、阻まれる可能性もある。一筋縄では行かないかもしれない。まぁGⅠのレース自体、一筋縄で行くわけは無いんだけどな。」
フジ「じゃあ今回も………危ない展開になるかもしれないって事かい?」
八幡「エアグルーヴのセンス次第だな。」
フジ「そっかぁ………」
八幡「お前もうかうかしてられないぞ?8月には新潟でデビュー戦だ、距離はマイルの1,600mとお前向きの距離を選んだ。それにあのレース場はマイルから長い直線に変わる。強い印象を残したいからな、新潟にした。」
フジ「そっかぁ……うん、じゃあ私も八幡トレーナーさんに“キセキ”を見せてあげるよ。」
八幡「圧勝劇を楽しみにしてる。」
エアグルーヴ「はぁ……はぁ……はぁ……」
ライス「ふぅ……ふぅ……」
流石はライスシャワーだ、最後まで私の後ろにピッタリとマークしていた。あまり離す事が出来なかった……しかし、これが後ろにずっと着いてこられる感触か。プレッシャーがある上に仕掛け所を考えさせられるな。
エアグルーヴ「速いな。」
ライス「え?そ、そんな事は無いと思うけど……エアグルーヴさんに追いつけなかったし。」
エアグルーヴ「そんな事は無い、短いとはいえ差を伸ばせなかった。鬼ごっこをやった成果が出ているという事か。」
ライス「あっ……そうかも。無意識にエアグルーヴさんの内に行こうとしてたから。」
エアグルーヴ「これもトレーナーの影響か。」
ライス「うん!やっぱりお兄様は凄いね!」
エアグルーヴ「あ、あぁ………」
……私はこんな風に言えん。奴の前ではどうしても素直に物が言えん。決して毛嫌いしているわけではないのだが、気恥ずかしくなるとでも言うのだろうか………
八幡「よし、今日はこれで終わりだ。ダウンをしてストレッチにするぞ。ライス、今日はありがとうな。トレーニングに付き合ってもらって。右回りの得意なお前に協力してもらえたのは大きい。」
ライス「ううん、ライスの力が必要な時はいつでも言ってね!お兄様の力になれるのなら、ライス頑張るからね!」
八幡「とか言って、お前も俺のトレーニングに参加出来るからって思ってたりするんだろ?」
ライス「ふぇ?思ってないよ?勿論、お兄様のトレーニングに参加出来たら良いなぁ~とは時々思ってたけど……」
八幡「………思ってなかったのか。ごめんな?」
ライス「ううん、大丈夫だよ。」
八幡「んじゃダウン行ってこい、フジもな。」
………
フジ「それにしても、八幡トレーナーさんは最近誰かをトレーニングに参加させる事が多いね。シービー先輩は勿論だけど、新入生達を私達のトレーニングに入れるなんて思わなかったよね。」
ライス「え、そうなの?」
エアグルーヴ「あぁ、最近は確かに多い。」
フジ「寮でポニーちゃん達も言ってたけど、未担当の子のトレーニング参加は今のところ八幡トレーナーさんただ1人みたいだよ。担当のついてないポニーちゃん達にはとてもありがたい話だね。日に日に増えてるみたいだからね、八幡トレーナーさんのトレーニングに参加したいポニーちゃん達が。」
エアグルーヴ「加えて教官達が見ているウマ娘達のメニューもトレーナーが作っているそうだからな。教官達や生徒達からの評価や評判は良い。」
ライス「やっぱりお兄様は凄いなぁ〜。そういえばエアグルーヴさんは宝塚記念なんだよね?体調とか調子はどうなの?」
エアグルーヴ「今は問題無い。それに今日のトレーニングのおかげで後ろから追われる時の重圧が理解出来た。今日は良い勉強になった。」
ライス「お兄様から言われた時はビックリしたけど、力になれて良かったよ。次の宝塚記念、頑張ってね。」
エアグルーヴ「あぁ、お前の協力は無駄にはしない事を約束しよう。」
フジ「私も8月にデビュー戦を控えてるから、この夏は少し忙しくなりそうだね。八幡トレーナーの腕の見せどころだね。」
次のレース、落とすわけにはいかん。まだ1度も負けてはいないのは事実だが、前走は下手をすれば負けていた。今回のレースでそれを払拭せねばなるまい。
ライス参戦のトレーニングでした。