八幡side
本番のスプリンターズSまでは残り3週間と短い期間だが、それまでにカレンを最高の状態に仕上げる……これが今の俺のやる事だ。カレン自身も迎える本番に向けて自分でも出来る事をしているという感じだ。いつになく本気の様子だから、余程ロードカナロアに負けたくないんだろう。その想いがヒシヒシと伝わってくる。そしてこれからはクラシッククラスのトライアルもあるからトレセン学園のコース場も大賑わいだ。たくさんのウマ娘でごった返しているのが現状でもある。今日のトレーニングは休みにしているからカレン自身もリフレッシュする日だと認識してくれているとありがたい。
八幡「んで?俺に何か用なのか?」
凜『アンタ、次はいつ帰って来るのかと思ってね。コイツもうるさいから電話したってわけなのよ。』
八幡「この前のレース見てたのなら分かるだろ、もうすぐデカいのが控えてるんだからそっちに行く暇は無い。」
尚人『八幡、俺達は生のカレンをかれこれ半年以上は見ていないんだ。だからそろそろ引き合わせるべきだと思うんだが?』
八幡「あのな、こっちにだって予定があるんだよ。それにこれから大きいレースが続くから帰省している暇が取れない、だからそっちに行くのは年末近くになると思う。」
尚人『そんなにかかるのかっ!?』
仕方ないだろ、まだ未定とはいえスプリンターズSの後にはアメリカ遠征があるかもしれないんだから。その後には12月に香港だ、それなのに帰省している暇なんて無いだろ。
八幡「とにかく、そっちに帰るのは年末になると思うからそれまで待ってくれ。あぁでもカレンを連れて来れるかどうかは分からないからな。」
凜『あの家族を見ればそう思うわね。』
尚人『去年はカレンちゃんの実家だったんだから今年はまたウチでも構わないだろ~っ!?』
すっかりカレンに毒されてんな、親父の奴……
凜『とりあえず分かったわ、仕事の邪魔してごめんなさいね。』
八幡「あぁ、またな……ふぅ、今年かぁ。どうなんだろうなぁ~。」
ーーー数時間後ーーー
八幡「………」カキカキ
トントンッ
八幡「?誰ーーー」
俺の肩を誰かが叩いたのだが、その誰かを確認する為に振り向いたら………
ラヴ「こんにちは、トレーナーさんっ♡」
ラヴミーラヴユーことラヴズオンリーユーが居た。俺はまた周りの物音に気付かずにメニュー書いてたのか……
八幡「…俺にイタズラした事はスルーするとして、何か用か?」
ラヴ「それだけ~?これでも1時間くらいは待ってたんだけど?君、とっても集中してたし、声をかけても全然反応してくれなかったんだもの。」
八幡「それは済まなかった、集中してるとそうなんだ。」
ラヴ「もうっ……まぁいいわ、今日はトレーナーさんにお願いがあってきたの。」
八幡「お願い?」
ラヴ「この前みたいにライブ配信したいの!だからカレンさんと併走、お願いしますっ!」
………マジかよ。
ーーー数分後ーーー
八幡「っていう事みたいなんだが、カレンはどう思う?お前に任せるぞ。」
カレン『んん~お兄ちゃんなら断ると思ってたのに答えを出さなかったのは何で?』
八幡「気持ちは分かる。だがラヴには何だかんだで世話になってるから俺自身が断りづらかったってのが正直なところだ。だから俺はお前に委ねてるんだよ、今はお前にとって大事な時期だろう?だかこそだよ。」
カレン『……うん、やろっか。お兄ちゃん、カレンのトレーニングで走りのメニューをするのは何曜日?』
八幡「金曜日だな。因みにウッドチップコースでやる予定だ。」
カレン『じゃあ今週の金曜日にウッドチップコースで配信決定したのはカレンからラヴちゃんに伝えるから。お兄ちゃんはメニューの修正お願い。』
八幡「お、おう……それとカレン、もう1つ理由はある。」
カレン『?その理由って?』
八幡「抜かれても差し返す脚を作る為だ。」
カレン『っ!………うん、分かった。』
八幡「おう、じゃあまた明日な。」
……さて、メニューの組み直しだな。だがこれは正直にありがたい。カレンは後ろから差されて2着になった、だから抜かされても差し返す脚を作ればより強くなる。ラヴの適性はマイルから中距離だが、脚質は差しだし併走でも5ハロンなら問題無いだろう。
シービー「八幡~来たよ~♪」
八幡「そうかそうか~……んで、何か用?」
シービー「あのさ、あたしの頭撫でる気って無い?」
八幡「撫でるつもりは毛頭無いが、グリグリしたい気持ちはあるぞ。」
シービー「えぇ~!」
八幡「出て行くか、静かに待つかのどっちかにしてくれ。今これから忙しくなるんだから。」
シービー「じゃあ静かに待ってるね~。」
コンコンコンッ
今日は随分と来客が多いな……電話といいこの部屋といい。
八幡「どうぞ。」
ライス「し、失礼します……あの、お兄様。ちょっといい、かな?」
八幡「どうかしたのか?」
ライス「えっとね、この前のお約束って覚えてる?」
八幡「お約束………あっ。」
ーーー回想ーーー
ライス「えへへ、お兄様の料理ってやっぱり美味しいなぁ~。」
八幡「そうか?まぁライスならすぐにマスター出来そうだけどな。」
ライス「じゃ、じゃあじゃあ今度!一緒にお料理する事って出来る!?」
八幡「俺が休みの日曜日なら構わないぞ。」
ライス「じゃあ日曜日にお料理一緒にしよ?場所はトレセン学園の厨房でも大丈夫かな?」
八幡「寧ろそこ以外に場所が無いからそこで頼む。」
ーーー回想終了ーーー
マズい、すっかり忘れてた……
八幡「よし、今すぐ厨房に行くぞ。ところで何作るかって決めてたっけ?」
ライス「えっと、ハンバーグだよ?」
八幡「ん、じゃあ作りに行くか。」
シービー「え、ちょっと八幡!?あたしを置いて行かないでくれるっ!?」
八幡「悪い、忘れてた。」
シービー「ライスとあたしの扱いの差について抗議しますっ!!」
却下させていただきます。これから忙しくなるので。