八幡side
遂にこの日がやってきた、香港スプリント当日。つまりは香港国際競走の始まりというわけだ。カレンが走る香港スプリントは第5レース、14時50分に走る。それまではカレンもレースや周りの様子を見つつあまり緊張し過ぎないように過ごしてもらいたいと思っている。それなのに、目立ってしょうがない人達が居るんだよなぁ~。赤と白と黒を基調としたタオルを首に巻いてショップの列に並んでいる中年の男性と10代後半~20代前半の女性が。
………とりあえずアレだな、見なかった事にしておこう。
そんで俺の担当はというと………
カレン「じゃあ撮りますね~!
「茄子~!哇~拍得很好~!非常感謝!(チーズ~!わぁ~よく撮れてます!どうもありがとうございます~!)」
カレン「你好~!(どうも~!)」フリフリ∼!
「不好意思,我也拜託您了!(すいません、僕もお願いします!)」
カレン「是~っ♪(は~いっ♪)」
……こんな風に香港のファンと交流中だ。まぁ極度に緊張し過ぎて身体が強張るよりかはマシなのだが、これはこれでどうなのだろうかと少し思うところもある。まぁでも香港で過ごす時間は残り短い、このくらいは許してやろうか。
因みにカレンと俺は少しばかり現地の言葉を勉強したから、少しの事なら聞き取れる用にはなった。日常会話程度には遠く及ばないけどな。
「あの、すみません。貴方はもしかすと……比企谷トレーナー、ですか?」
八幡「?はい、そうですが……」
「やぱり!あの、僕は、香港でトレーナーしてます、シャムです。比企谷トレーナーと同じ、3年です。」
八幡「そうでしたか。もしかして、今日のレースには担当のウマ娘が?」
シャム「いえ、僕は研修生なので、まだ自分の担当居ないです。だから比企谷トレーナーの事は尊敬してます。同じ3年でもGⅠを3回も勝ってる。とても凄い事です。」
八幡「いえいえ、まだまだウマ娘から教わる事が多いです。」
シャム「僕も来年から独立する、のでちょっと気合い入ってます!」
八幡「そうですか。」
シャム「比企谷トレーナーに、聞きたい事あります、いいですか?」
八幡「?何ですか?」
シャム「比企谷トレーナーがウマ娘を育てる上で大切にしている事、何ですか?」
八幡「……そうですね、自分は必ず次のレースをするにも何をするにしても担当の意見を聞く事です。勿論トレーニングについてはトレーナーである自身の意見を尊重させてもらいますけど、それを込みでウマ娘と色々と相談とかをする事ですね。自分の意見だけを押し通してしまっても、良い事にはなりませんから。たとえそれで結果がついてきたとしても、それは一時的なものに過ぎませんから。」
シャム「それじゃあ、担当のカレンチャンとも、そういう風に?」
八幡「はい。トレーニング・次走・日常、どんな事においても色々と相談されてますし、自分もしてます。何をするにしてもそういう確認はしっかりしておいた方が良いですね。お互いに分からずにやってしまったら信頼関係に罅が入りますからね。」
シャム「成る程、とても勉強になります。じゃあ、ルーティーンとかってありますか?」
八幡「ルーティーン、ですか……自分は特にコレというのは特に何もありませんね。まぁ強いて言うなら担当に緊張をさせないように立ち回るくらい、ですね。特にこういうGⅠの舞台では気を付けています。まぁ、あの様子を見る限りでは、あまり説得力は無いように思えますけど。」
俺が見る先には未だにファンと交流しているカレン。あの様子ならホントに緊張するとは思えないだろうが、もしもの場合ってのもあるしな。
シャム「担当に緊張させないように立ち回る……先輩の誰もそんな事は言ってなかったです。聞いてみてよかたです。」
八幡「いえ、こうして海外のトレーナーと触れ合える機会は滅多にありませんので良い機会でした。」
それに俺自身、サブのトレーナーが付いてないから教えるという事自体が殆ど無い。寮に居たら後輩とか同期とかに色々とアドバイスをする事はあるのだが、そのくらいだからな。その中にはウマ娘も例外ではない。
シャム「比企谷トレーナーみたいな人が香港に居たら、きっと人気者になると思います。ちょっとだけでも香港に滞在してほしいですね。」
八幡「俺みたいな若造が大きい顔したら、地元のトレーナー達からやっかみを受けますよ。地元で静かにトレーナーしますよ。」
シャム「大丈夫だと、思います。比企谷トレーナー、こっちでも有名。香港のスプリンターを2度も返り討ちにしたトレーナーだって。」
八幡「……それ、本当に大丈夫なんだよな?」
シャムさんの言い方だと、あまり良い感情を持たれていないように感じるんだが……本当に大丈夫なんだよな?レース観ている間に闇討ちとかされたりしないよな?
八幡「これからレースだってのに、逆に俺の方が気を使われそうだ……」
シャム「?」