八幡side
ヨーロッパ3国の面々が来てから早数日が経った。トレーナーの3人は未担当のウマ娘達の指導やトレーナー達に自分達の経験やトレーニング等の話を講習という形で教えてくれている。ライスの友人3人はトレーニングもしつつ毎日楽しそうにしている。連日ライスを連れてだ。そして今日は土曜日、レース開催日ではあるのだが、俺は4人の引率をしている。果たしてこの4人の引率は必要なのだろうかと疑問を抱いているところではある。
八幡「なぁ、俺って必要だったのか?」
クラウ「まぁまぁいいじゃねぇかトレーナー。ライスやあたし達だけじゃ分からないとこだってあるからよ。」
カーネギー「そうそうっ!代わりの案内役は必要でしょ~。」
ライス「ひょっとしてお兄様、レースを観に行く予定だった?」
八幡「いや、そんな事は無い。特に見たいレースとかも無かったからな。それならライスに付き合う。」
クローネ「流石はライスさんのトレーナーさんですね、賢明な判断です。」
八幡「何で上から目線?」
カーネギー「あっははは~……ん?ねぇライス、あのお店って何?」
ライス「あのお店はカラオケ屋さんだよ。」
クローネ「カラオケ……そういえば、ライスさんの歌を久しく聞いてませんね。」
ライス「ふぇ?」
カーネギー「あぁ~確かにっ!京都で聞いてからずっと聞いてないっ!」
クローネ「ライスさん。よろしければライスさんの天使のような歌声を聞かせてはもらえませんか?勿論、私達も歌います。どうか……どうかお願いしますっ。」
カーネギー「どうか、お願いします。」
ライス「わぁっ!?やめてよ2人共!こんな所でお膝を着きながら手を合わせないでっ!」
クローネ「では歌っていただけると?」
ライス「……ちょ、ちょっとだけなら///」
カーネギー「よぉ~しっ!それじゃあカラオケに行こう~っ!」
ーーー店内・個室ーーー
クラウ「こんな風になってんだな、アイルランドにはこういう店は無いから新鮮だぜ。」
カーネギー「それにトレーナーのおかげでドリンクも飲み放題だしねっ!」
クローネ「ではライスさん、まず最初は何を歌ってくださるのですか?」
ライス「ライスが最初なんだね……でも、ライスもあんまりこういう所には来ないから、何を歌ったらいいのか分かんないよ……」
八幡「無難にライスが歌いやすいので良いと思うぞ。変に選曲する必要は無いって。」
ライス「うぅ~ん……じゃあ、この曲にしようかな。」
テレビに表示されたのは、【ラブソング】という題名だった。この曲はライスが走った最後のレース、宝塚記念のウイニングライブで披露した歌だ。
ライス「いつまでも続いてゆくと 僕はずっと思っていたんだよ」
ライス「あの日君がキレイすぎるわけを 僕は何も知らなかった」
ライス「神様って人が君を連れ去って 二度とは逢えないって僕に言う」
ライス「どこに行くんだよ? 僕は何もできなかったよ 美しすぎた人よ」
そして曲は終盤、曲は終わりに入ったのだが………
クローネ「………」ポロポロ
カーネギー「うっ……うぅ~……」ポロポロ
クラウ「くそぉ、目から汗が………」ツー
八幡「はぁ……泣かないなんて無理だ。」ツー
こんなの無理に決まってんだろ……ホント何でこんな良い曲作っちゃったの?俺の為に作ったって時点で涙腺崩壊ものなんだけど。
ライス「え、えっと……皆、大丈夫?」
カーネギー「うっうぅ~…だ、だ、大丈夫……な"い"で、な"い"がら"……」ボロボロ
クローネ「………」ボロボロ
ライス「あ、あの……凄い涙………」
クラウ「な、なぁライス。今の俺達じゃ歌うなんてちょっと無理だから、も1曲だけ頼めねぇか?出来れば今のとは違うので頼む……」ツー
八幡「おぉ、俺からも頼む……」ツー
ライス「う、うん……分かった。でもどうしよう、何を歌おうかな?」
出来れば明るい曲で頼みたい……ライスのイメージとは少し外れるが、今はそっちだったら何でもいい。
ライス「じゃ、じゃあこれ!」
………え、【ささやかな祈り】?
ライス「そ、それじゃあ頑張って歌いますっ!」
ライス違うっ!確かに頑張ってほしいのはその通りなんだが、選曲が絶望的に間違ってる!そんな曲聞かされたら俺達の目の水分全部無くなるからっ!
ライス「ねぇ、三日月あなたも 迷う時があるの?」
ライス「手かざせば今夜も たおやかな光」
ライス「朧げにただ 浮かぶ明かりを追いかけて駆けだすの」
ライス「声にならずに 消えた想い詰め込んで」
ライス「私のささやかな祈り今 大空に放り投げた」
ライス「いつかあなたのように 誰かの事を照らせる人になりたいだけ」
ライス「そう 秘密だよ」
ーーー数分後ーーー
ライス「もう 泣かないよ」
………
カーネギー「もう無理………こんな綺麗な声と曲聞いてたら、私死んじゃう………だってもう涙も声も枯れたもん………」
クローネ「たった10分、たった10分ライスさんの歌を聞いただけなのに………この満足感、多幸感、今までに無い程満たされています。ライスさんの美声の後で私の汚れた声を披露する気にはなれません。」ツー
クラウ「今回ばかりはクローネの言う通りだ、この歌の後に何歌えってんだよ……無茶ぶりと同じだろ………」
ライス「え、えっと……お兄様?」
八幡「……済まんライス。お前が悪いわけじゃないんだが、お前が悪い。バラード系の後に追い打ちのようにバラード系聞かされたらこうなるって……俺もライスの後に歌うのはちょっと無理……」
ライス「ふぇぇぇぇ!?そ、そんなの困るよぉ~!まだ2時間もあるんだよっ!?誰でもいいから歌ってよぉ~!」
済まん、マジで無理……あの歌聞いた後だぞ?同じバラード系歌ったとしても『ふぅ~ん。』って感じで終わりそうだし、明るい曲にしたとしても盛り上がれるような雰囲気じゃねぇし。
八幡「本当に済まないがライス、この個室は今お前が支配してるから。どうするかはお前次第だわ……結構マジね。だから……ホントに任せるわ。」
ライス「ふぇぇぇぇぇ!!?」
その後、何とかライスは明るい選曲をした事で持ち直す事が出来たのだが、ライスがまたバラード系を歌った事で再び同じ空気になっちまった……まさかカラオケで泣くとは思わなかった。