比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!   作:生焼け肉

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後手

 

 

エアグルーヴside

 

 

毎年、賑やかに開催される夏祭りには多くの人々が集まる。その中には我々トレセン学園の生徒だけでなく、取材陣の方々や一般人と幅広い。そして雰囲気故に羽目を外す生徒も珍しくはない。まぁ折角の祭りだ、開放的な気分になるのは分からないでもない。そしてその中にはウマ娘と担当のトレーナーが共に楽しんでいるのも目に入る………やはり、もう少し迫るべきだっただろうか?いや、だがトレーナーも暇ではない。無理に誘うべきではない………のだが、あの姿を見ると自分でもあまり認めたくはない感情が頭の中を渦巻く………

 

『羨ましい』という感情が。

 

 

ドーベル「先輩、どうかしました?」

 

エアグルーヴ「……いや、何でもない。それよりも、ドーベルはいいのか?折角の祭りなのだぞ?」

 

ドーベル「確かにそうですけど、秋の最終戦に向けてトレーナーも張り切っていたので、邪魔したら悪いと思ったんです。」

 

エアグルーヴ「そうか……最後の1冠だからな、熱が入るのも当然だろう。」

 

ドーベル「先輩のトレーナーもそうだったんですか?」

 

エアグルーヴ「そうだな、トレーナーは………」

 

 

………そういえばトレーナーはどうだったのだろうか。クラシックレースの、しかもトリプルティアラがかかっているレースだ、並大抵のプレッシャーでは無いだろう。

 

 

エアグルーヴ「私のトレーナーは恐らくドーベルのトレーナー以上の熱量は無かったとは思うが、重圧はあっただろう。何せトリプルティアラがかかった最後のレースだ、そうならない方がおかしい。」

 

ドーベル「やっぱりそうですよね。」

 

エアグルーヴ「私のトレーナーは性格こそあまり良くはないが、我々ウマ娘に対しての扱いはかなり慎重だ。お前も知っているだろう、一目見ただけで怪我を見抜く程の眼を持っているのを。」

 

ドーベル「はい、直に見たわけではないですけど。」

 

エアグルーヴ「怪我に対してはかなり敏感とも言える。これは私の予想になるが、担当のウマ娘が怪我をしたとすれば、トレーナーは必ず治るまでつきっきりで看病をするだろう。」

 

ドーベル「そ、そこまで、ですか?」

 

エアグルーヴ「責任感は強い方だと私は思っている。」

 

 

でなければ、こんな私を担当にする筈が無い。トレーナーの師から言われた事は間違い無く正解だ。トレーナーは私のようなウマ娘を選ぶわけが無い。本当に、ただの利用し合うだけの関係………

 

 

エアグルーヴ「本当に、嫌になるな。自分が。」ボソッ

 

ドーベル「?何か言いましたか?」

 

エアグルーヴ「いや、何でもない。私はもう少ししたら部屋に戻るが、お前はどうする?」

 

ドーベル「私はもう戻ります。」

 

エアグルーヴ「そうか、気を付けろよ。」

 

ドーベル「はい、先輩も。」

 

 

………さて、見回りをするか。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

……ふむ、特に目立った行動をしている生徒は居ないようだ。これならば大丈夫だろう。よし、引き継ぎも済ませた。ならば「ライスさん、そちらはどうですか?」……?

 

 

ライス「うん、買えたよ!これでお兄様もお祭りの気分になれるかな?」

 

アルダン「兄様ならきっと喜んでくれると思いますわ。きっと今頃は自室でメニューの事をお考えになっていると思われますし、良い息抜きにもなる筈です。」

 

ライス「お兄様もお腹を空かせてたら、この時間だと自分で作らないといけないから大変だもんね。」

 

アルダン「そうですわね。」

 

 

………あぁ、そうか。何も誘うだけでは無かったのか。そういう手段もあったのだな………

 

 

ライス「焼きそばにたこ焼き、ラムネ……デザートにカステラとチョコバナナ、これだけあればいいかな?」

 

アルダン「本当ならかき氷を持って行きたいですが、この暑さに加えて宿泊所までとなると、流石に溶けてしまいますからね。これで大丈夫でしょう。」

 

ライス「じゃあお兄様の所に持って行こっか!」

 

アルダン「えぇ、そうしましょう♪」

 

 

エアグルーヴ「………」

 

 

ーーー高台ーーー

 

 

私は来る予定も無かった穴場の高台へといつの間にか足を進めていた。本当に何故だろう?ライスシャワーとメジロアルダンがトレーナーの為に屋台の品を持って行こうとしていたのを聞いた辺りから、宿にではなくこの地へと向かっていた。1人になりたかったから、そんな理由ではない。一体、どうしてだろう………

 

………いや、答えは既に出ている。私はまたしても、後手に回ったのだ。いや違う、後手に回ったのではない、そもそもそういう考えに至ってすらいなかった。

 

 

エアグルーヴ「………はぁ。」

 

 

トレーニングの動きが良くなっていると言っても、トレーナーが関わるとこの様か……何とも情けない。1番近い存在の筈なのに1番距離を感じる。いや、この距離の壁は本当の事だろうな。

 

 

エアグルーヴ「………する事もあるまい、帰るか。」

 

 

祭りに戻ったところで楽しめるような気分でも無い。私はそのまま宿へと帰る事にした。この高台で眺める空は星の輝く見事な景色なのだが、今ではその景色すら淀んで見えてしまう。

 

 

 




あら〜エアグルーヴさん、またもや後手に。
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