八幡side
夏合宿が明けて早3日の日曜日。俺達は今、トレセン学園がある東京から少し離れた中部地方の新潟県に訪れている。その目的はジャーニーのデビュー戦の為だ。今日はそのレース当日で午後からの出走で、本人は表情にこそ出さないがやる気は充分だった。しかし当の本人はというと………
ジャーニー「……うん、昨日買っておいて正解だった。美味しいね、オル。」
オルフェ「うむ、悪くない……」
新潟の名物、たれカツ丼を食べている。2人は少し早い昼食を摂っている。レースもあるからジャーニーの食事量は少しだけ控えめだったのは安心した。
ジャーニー「トレーナーさんは食べないのですか?」
八幡「あまりお腹は空いてなくてな、今は遠慮しておく。レースが終わったら何か食べる。」
ジャーニー「そうですか……もしかして緊張されていますか?」
八幡「いいや全然。ここは勝って当然だと思っている。」
ジャーニー「ふふふ、高評価をいただけているみたいで嬉しいですよ。」
八幡「本当の事だしな。」
だが実際のジャーニーは2番人気。人気の差がかなり開いているから1番人気は圧倒的支持とも言える。けど今回は事前評価の見る目が無かったと言わせてもらいたい。
そして食事から1時間後……パドックとなった。
実況『今回の2番人気、7枠15番ドリームジャーニー。』
解説『良い仕上がりになっていますね、この中では1番の仕上がりだと思いますよ。追込を得意とするみたいですが、その末脚がどれ程なのか見てみたいですね。』
八幡「……全然いつも通りだな。」
オルフェ「姉上が緊張で身体が強張る等、あり得ぬ。」
八幡「ふぅ~ん……なぁ、お前達姉妹って緊張とか震えるとか、そういうのってしないのか?」
オルフェ「愚問……そのような矮小な行動、我々がすると思うか?」
八幡「思わないけどよく聞くだろ、武者震いって。」
オルフェ「余は王であるぞ。そして王の姉だ、そのような事はせぬ。」
何とも説得力のあるお言葉……流石は常に臣下を侍らせているだけはあるな。
ーーー控え室ーーー
ジャーニー「さてトレーナーさん。最後の打ち合わせといきましょう。」
八幡「今回は中団辺りに控えてレースを進めてくれ。メンバー的にスローになる可能性があるから、今日はあまり後方で攻めない方が良いかもしれないからな。」
ジャーニー「私も同じ提案をしようと思っていたところですよ。トレーナーさんからその言葉が聞けて安心しました。」
八幡「じゃあ今日は中団でレースを進めて、直線で一気にカタをつけろ。」
ジャーニー「はい、承知しました。ではそのように。」
ジャーニーは俺の指示を承諾すると、そのまま控え室を出て行こうとしたが、扉を開ける寸前で止まった。
八幡「?」
ジャーニー「トレーナーさん、今日のレースを楽しみにしていたのは貴方だけではありません。私もやっとデビューを迎えられた……今日は遠慮無しにやらせていただきます。」
八幡「……それは、他のウマ娘達がかわいそうになってくるな。」
ーーー数十分後ーーー
実況『暖かい日差しが続く新潟レース場は第6レースの発走時刻となりました。1番人気は15番デスコベルタ、2番人気はドリームジャーニー、3番人気はエーシントゥルボーとなっております。デビュー戦にしては珍しい18人フルゲートでのレースになりますが、その辺りはどう見ますか?』
解説『ここまで多いのはあまり無いですからね。ウマ娘達の能力は勿論、どれだけ周りに流されずに自分のレースを出来るかが鍵になるのではないでしょうか。』
実況『その鍵を手に取り、このデビュー戦を制するのはどのウマ娘なのでしょうか?さぁ次々と枠入りが進んで最後に大外のクロスホーリー収まりました!体勢完了!』
ガッコン!!
実況『スタートしましたっ!!少しバラつきました18先頭争い先に出たのはアポロファンタジー。外からショットモードとホットファッション、内からムーランヴェールも上がって横に広がっています。その後ろにオークロイヤルとヤマニンリシャスが続いてアウレウスがこのグループ最後方!中団グループから前に上がっていったデスコベルタ!マイネルファヴールとその外ドリームジャーニーが続く。インコースからアサクサヴェールとクロスホーリー!2バ身開いてタケデンヴィーナス更に開いてエーシントゥルボー。クリノマジョルカ、フジマサレインボー、コスモエターナル。最後方にアンカラシチーの体勢!3コーナーを曲がっていきます!』
良い位置に居るな、あの場所ならいつでも抜け出せる。あの中で1番冷静なのは間違い無くジャーニーだな。
実況『外からデスコベルタ上がってきた!一気に先頭グループに接近!直後にドリームジャーニーも来ている。第4コーナーカーブ、残り400を切って直線に向きました!』
ジャーニー「では、参りましょうか。はぁっ!!!!」
実況『今度はデスコベルタがバ場の4部所から先頭に、いや!まとめてドリームジャーニーが交わして先頭に変わった!!ドリームジャーニーが後続を突き離す!2バ身、3バ身とリードを広げていくっ!!後ろからはデスコベルタが単独2番手!体勢決したか!ドリームジャーニーゴールインッ!!これは圧勝です!』
ジャーニー「……ふぅ、まずまずの旅路でしたね。」