八幡side
季節は秋、いよいよ秋のシーズンが始まるって時期だ。既にGⅠレースは開催されていて、次はティアラ路線最後の秋華賞だ。その前に1週挟むんだけどな。ジャーニーは9月末に芙蓉Sに出走して無事に勝利を収めた。正直に言うと、デビュー戦よりも強い勝ち方をした。何せ今度の勝ち方は1番後ろ、つまり最後方からの追い上げで上がりが最速の33.8をマークしての勝利だったからだ。しかも最後は流してたし。
2連勝したジャーニーの次のレースは、朝日杯FSにした。またマイルレースにしたのも理由がある。ジャーニーの適性は中長距離だが、今の内に脚の使い方を叩き込んでおきたい。マイルで使う鋭い脚の使い方なんかは特にな。オルフェと比べるとあまり切れは無いが、長い脚を使えるのがジャーニーの特徴だ。そこに鋭い末脚を混ぜたら、追込にとってはこれ以上無いくらいの強い武器になる。
だからこの2ヶ月はその為のトレーニングをするつもりだ。
ジャーニー「………トレーナーさん、この状況はどういう事かご説明していただけるのでしょうか?」
八幡「俺も聞きたいくらいだ。こっちだって何も知らないんだ、逆に聞きたいくらいだ。」
ジャーニー「そうですか、ではこちらの方々に聞きましょう。私達に何か御用ですか?」
俺達の目の前に居るのはこの前ジャーニーがレースでコテンパンにした2人と、俺がいつの日か追い払った連中が徒党組んでいるって感じだ。
1「アンタ、もう1度レースしなっ!」
ジャーニー「……と、言いますと?」
1「この前のレースたった1回じゃ納得いかないって事だよ!今度はあたし等全員と走れ、距離は2,000m!」
八幡「何を言うかと思ったら……呆れて物も言えないんだが。」
ジャーニー「えぇ、全くですね。」
2「やっぱな!この人数じゃ勝てないって思ってんだろ?だよなぁ〜!アンタみたいなチビじゃあたし等みたいな背の高い奴5人相手には勝てねぇよなぁ〜!」
八幡「何言ってんだ?逆だ逆、お前達が相手にならないって意味だから。」
3「……それどういう意味?」
八幡「いや、普通に考えれば分かるだろ。特にそっちの2人は。あれだけの差を見せつけられてもまた挑もうとするその心意気は買ってやるが、今のジャーニーに勝てると思ってるのか?一応コイツ、もうオープンクラスなんだが?」
4「そんなの関係ねぇよ!」
八幡「っていうかさ、そもそもの話なんだけど何でジャーニーに絡んで来んの?オルフェの方に行けよ、事の発端ソイツだろ?ジャーニー関係ねぇじゃん。」
ジャーニー「ふむ……確かにそうしていただきたいですね。しかし……だからといってこの小バエ達の相手をする程、オルも暇ではありません。ここはやはり私が「いやいや、自分の蒔いた種なんだ。その責任を取るって意味では自分で刈り取るってのは正しい事だと思うけどな。」……しかし、オルが取り合うでしょうか?」
八幡「じゃあこう言え、『目の前に居る5匹の小バエを退治しなかったら、明日のリクエストには応えてやらない。』って。そしたらアイツ、嫌でも此処に飛んで来るだろ。」
ジャーニー「確かに効果はありそうですが……」
八幡「それでいいだろ、俺もお前も困る事なんて無いし、コイツ等もオルフェと走れるんだ。どっちにとっても得しか無いだろ。」
ジャーニー(あぁ……目の前の方々の顔が青褪めていますね。私と走るのはいいのに、オルはダメなのか……)
ジャーニー「………トレーナーさんの仰った言葉をそのまま使わせていただきますね。」
八幡「いいぞ。ちゃんと俺が言ったって送れよ?」
ジャーニー「えぇ、分かっていますよ。少々お待ちくださいね。今妹を此処に呼びますので。」
ーーー数分後ーーー
オルフェ「……姉上、それに比企谷。」
ジャーニー「あぁ、ごめんよオル。急に呼びつけてしまって。」
オルフェ「構わぬ。して……その輩はこの者共か?」
ジャーニー「そうだよ。皆、オルとの併走やレースで負けてしまった人達みたいだけど、オルではなく私に狙いをつけてしまっていてね。そこでさっきのLANEというわけでね、何とかしてくれるかい?」
オルフェ「良かろう。余、自らが相手してやろう。2度と、余や姉上に手を出そうなどと思わぬようにな。貴様等、何を惚けておる。疾く支度せよ。今からレースをする。」
オルフェとレースをする事を想定していなかったのか、5人は青かった顔を更に青くしてブルーベリーみたくなっていた。っていうか効果覿面だったな。
オルフェ「比企谷。貴様の言葉で余を呼んだのだ、それ相応の対価を用意出来ているのであろうな?」
八幡「(はぁ?何言ってんだコイツ……)何でそんなのを用意しなきゃならないんだ?元はと言えばお前の行動のせいでジャーニーに迷惑かかってんだ、そりゃ当然責任取ってこのくらいの事はしてくれるよな?言い加えるとだ、俺は担当であるジャーニーの味方はしても、ただの妹であるお前の味方はしていない。そりゃ親族だからそれなりの対応はしているつもりだ、それが無かったら飯や洋菓子を作ったりなんてしない。ジャーニーのLANEを見たと思うが、アレは本気だ。元々聞いてやる義理も無いんだからな。嫌なら全力でソイツ等捩じ伏せろ。姉妹間での事は知らん、そこは2人で話し合え。けど俺は許さないってだけだ。」
ジャーニー「………(このような感じだったのでしょうか、トレーナーさんが感情を表に出した時は。)」
オルフェ「……行くぞ。」
その後アイツ等の言った通り、2,000mのレースを行ったのだが、オルフェの圧勝だった。だが何故かは知らんが、走る前からあの5人のやる気が無くなっていたように感じた。
ーーーおまけーーー
オルフェ「姉上、余の失態であった……伏して詫びよう。」
ジャーニー「いいんだよオル、そんな事をしなくて。私なら大丈夫だから。トレーナーさんもこれでよろしいですか?」
八幡「2人の事に口は挟まねぇよ。まぁそうだな……こういうのは姉は許しても俺は許さないって事は覚えておいてくれ。それでチャラだ。」
オルフェ「うむ……」
八幡「……まっ、今回は素直に来てくれたみたいだし、明日以降のリクエストは聞いてやるよ。週2の約束もこれまで通りでいい。」
オルフェ「っ……褒めて遣わす。」
八幡「何で上からなんだよ……」
ジャーニー「これでも喜んでいるのです、貴方の手料理が無くなるのではと少し残念そうな顔をしていましたので。」
八幡「俺の料理にそこまでの価値はねぇよ。」