八幡side
日本ダービーはもう明日にまで迫っていた。ジャーニーの調整は既に完了している。調子は皐月賞の頃よりも良いと断言出来る、だがこれから走るのはまだ走った事の無い2,400m……それにジャーニーは東京レース場の経験が無い。いくらトレーニングでは良い時計を出せても、本番でどうなるかなんて誰にも分からない。後は本人達の走りに任せるしか、俺達トレーナーに出来る事は無い。あっても直前の作戦を伝える事くらいだろう。
八幡「……さて、どんなレースになる事やら。」
ジャーニー「おや、明日の事ですか?」
八幡「まぁな。明日どうなるかなって思っただけだ。柄にもなく今から少し思い耽ってるみたいだ。」
ジャーニー「おや、貴方にしては珍しい……」
八幡「そりゃ俺にだってそういう時くらいはある。」
ジャーニー「……先程、前日評価を拝見しました。どうやら私が1番人気に推されているみたいでした。2番人気にフサイチホウオーさん、3番人気にウオッカさんでした。」
八幡「ウオッカが3番人気か……流石はジュニアクイーンなだけはあるな。今年に入ってからも1~2着しか獲ってないしな。まぁそれはお前も似たようなものか。」
ジャーニー「私の場合、今のところ1着だけ……これも八幡さんのおかげですね。」
八幡「俺はただお膳立てしたに過ぎない。勝つも負けるも全てはお前達次第……レースが始まったら、俺達トレーナーには祈るか応援する事しか出来ないからな。」
ジャーニー「そうなのですか?私には貴方からの祈りや猛々しい声援を聞いた覚えはありませんが?」
八幡「俺がそんな事をする男に見えるか?やったらお前、絶対走りに集中出来ないだろ。」
ジャーニー「確かに、そのような八幡さんを目にしたら脚を止めてしまうかもしれませんね。」
止めるなと言いたいところではあるが、確かにそうなるんだろうな……俺だってもしジャーニーが目一杯応援しているところを見たらすぐに固まる自信がある。
八幡「そういうお前は何とも無いのか?」
ジャーニー「そうですね……八幡さんと同じく、私もある程度の緊張はしているつもりですよ。私だって緊張しないわけではありません。それに【日本の祭典】とも呼ばれているレースですからね、そのレースに出走するだけでも選ばれし18人に選ばれたようなもの……緊張なんて言葉では容易には表せないでしょう。」
八幡「確かにな。勝つだけでダービーウマ娘、はたまたダービートレーナーって呼ばれるくらいなんだからな。皐月賞を勝っても皐月賞ウマ娘なんて呼ばれるのはほんの一瞬だからな、ついて回るのは精々今言ったダービーとグランプリを勝った時くらいだろう。」
ジャーニー「確かにその通りですね。私もそのような称号が欲しいものです。」
八幡「……何でそう思うんだ?」
ジャーニー「オルの為でもありますよ。少しでもあの子の評価が上がるのであれば、私はどのような走りでもしますよ。」
八幡「やっぱりオルフェ絡みだったか……想像通りだったわ。とりあえずもう帰るぞ、此処に居る理由だって元々は無いんだから。」
ジャーニー「では、行きましょうか。」
ーーー校門前ーーー
八幡「そういや今日オルフェを見かけなかったんだが、お前何か知ってるか?」
ジャーニー「私も外出する事は知っていたのですが、理由については何も知らなくて……何処かに行く時は私にも何かしらは伝えてくれるのですが、今回は何も告げずに行ってしまわれました。なので心配です……」
八幡「ひょっとしてお前の緊張ってそこから来てたりしないか?」
ジャーニー「流石は八幡さん、9割正解です。」
やっぱそうだったかぁ~……っていうかめちゃめちゃ動揺してるじゃねぇか。
八幡「オルフェの奴、何処に行ったんだろうな?」
ジャーニー「えぇ、本当に何処に行ってしまったのやら………オルの家臣達に聞いても、誰も行方は知らないのです。」
八幡「本当に分からないパターンじゃん……明日の午後にでも東京レース場に来てくれれば良いんだけどなぁ~。」
ジャーニー「もしくは朝、もしくは今夜にでも戻ってくれたらいいのですが……」
八幡「まぁ、外泊届を確認して見ない限りは分からないな。」
ジャーニー「………」
八幡「……おい、黙るって事はまさか?」
ジャーニー「はい、今朝確認しました……外泊届が出されていました。理由は書かれていませんでしたが。」
……ホント、何処に行ったんだろう?
八幡sideout
オルフェside
オルフェ「……知っているとは思うが、姉上が明日のレースに出る。」
???「勿論知ってるわ。どのレースに走ってくれても構わないけど、怪我無く走ってくれているだけで満足よ。勿論、貴方もよオル。」
オルフェ「母上……明日のレース、余と共に参れ。無論、父上と共に。」
母上「私は勿論大丈夫だけど、お父さんが何て言うか……あの人、いっつも工房に居るから。それにあんまり喋らないでしょ?私が話したとしても無視されちゃうかもしれないから。」
オルフェ「……分かった。明日、余が説得させよう。何、姉上のレースだけを見せたいだけでは無い。」