八幡side
遂にダービー当日。俺はジャーニーと一緒に午前から現地入りしているのだが……ジャーニーの調子がヤバい。昨日の時点では皐月賞よりも調子が良いのは確かだったんだが、オルフェが居ないというだけでメンタルの調子があり得んくらいダダ下がりになっている。妹好き……シスコンなのは出会った時から知っていたが、まさかここまで酷くなる程とは思わなかった。居ない奴に言っても仕方ないのだが、恨むぞオルフェ………
ジャーニー「あぁ………何て日なんだ。走らなければならない、それは分かっているのに活力が湧かない……」
八幡「なぁ、それってどうにもならないのか?」
ジャーニー「私自身、何とか出来るものなら何とかしたいのですが、オルが不在というのが中々に堪えているものでして……行き先が分かっていれば少しは安心出来るのですが。」
八幡「それすらも分からない状態だからな。姉のお前からすれば不安しか無い状態だしな。」
ジャーニー「あぁ……何処へ行ってしまったんだいオル?無事でいるだろうか?事件に巻き込まれいないだろうか?事故に遭っていないだろうか?」
八幡「徐々に雲行き怪しくなっていくな、大丈夫だって。断言は出来ないが、その内来るって。」
ジャーニー「何故そう言い切れるのですか?」
八幡「いや、そうでも思っておかないとやってられないだろ。」
ジャーニー「私は今すぐにでもオルを探しに行きたいのですが?」
八幡「お前が動いたら今度は此処に着いたオルフェがお前を探しに行く羽目になるかもしれないだろ。お前は此処で待ってればいいんだよ。」
ジャーニー「……今はその言葉を信じましょう。」
ふぅ、とりあえずこの場に留まらせる事には成功したな。しかしアイツは何処に言ったんだ?姉の大一番に失踪なんてマジでシャレになってないんだが?現状で1番絶不調なのは、確実にジャーニーだろ。
とりあえず本人の気持ちがオルフェに行かないように気分を紛らわせるか。まぁそれもいつまで持つか分からんが、何もしないよりかはマシだ。
ーーー1時間後ーーー
ジャーニー「八幡さん、やはり探しに行きます。」
八幡「落ち着け。さっき俺が何て言ったか忘れちゃったのか?」
ジャーニー「だとしても1時間は遅過ぎます。確かにあの子はとても多忙です、時間通りに来れない事があるでしょう……しかしそれでも遅過ぎます。一言くらいあってもいい筈なのに、メッセージにすら既読が付くだけ……これでは辛抱出来ません。」
八幡「既読が付いてんのなら少なくとも無事だって事だろ?ならいいじゃねぇか。とりあえずお前は此処で待っとけ、確かに今のお前の状態はこれまでで1番最悪だが、妹探しに行ってパドック遅れるどころか出走出来ないはもっと最悪だから。」
コンコンコンッ
八幡「ん?誰だ?もしかしてステゴか?いや、アイツなら無断で入って来るか……じゃあ誰だ?」
ガチャ
俺が扉を開けると、目の前には栗毛のウマ娘が立っていた。ウマ娘とは言っても学生ではなく成人している人だった………そんな事よりも、この人誰?
???「突然押し入ってしまい申しわけございません。私、オリエンタルアートと申します。そちらに居るドリームジャーニーとオルフェーヴルの母です。」
八幡「はぁ、どうも………ん?母親?」
ジャーニー「母さん………どうしてこちらに?」
アート「会えて嬉しいわジャーニー。でも今1番会いたいのは、この子でしょう?」
オルフェ「……姉上、心配をかけた。」
ジャーニー「オル!あぁ、無事で本当に良かった……」
うん、感動の再会のとこ申しわけ無いんだけど事情説明して?俺だけ置いてきぼりなんだけど?
アート「ご挨拶が遅れてすみません。いつも娘達がお世話になっております、特にオルのわがままは苦労が絶えないと思います。」
八幡「いえ……あぁ、こちらこそご挨拶が遅れました。トレーナーの比企谷です。オルフェーヴルさんには少し驚きましたが、近頃は節度も弁えられるようになりましたので。」
オルフェ「兄上、それは誤解だ……兄上に対して、である。」
アート「……オルがここまで心を開くなんて。とても安心しました。これからもご迷惑をおかけするとは思いますが、どうかこれからも娘達をよろしくお願い致します。」
八幡「は、はぁ……」
アート「あなた、次はあなたの番ですよ。」
???「……君がジャーニーのトレーナーか。2人の父だ。」
八幡「ど、どうも……比企谷です。」
???「……使い心地はどうだ?」
八幡「………?」
え、何の事?
アート「すみません、主人は無口な上に口下手なものでして。トレーナーさんが身に付けておられるループタイの事です。」
八幡「あ、あぁ!とても重宝させていただいております。普段使いはしていませんが、今日のようなレースの時には身に付けるようにしています。このスーツともよく合っていますので。」
オルフェ「そのスーツは余と姉上が見繕った品……母上と父上の合作と合わぬ理由など無い。」
なんかそれだけ聞くと、この家族からの品を身に纏ってるって事になるんだよなぁ~……
父上「……そうか。」クルッ
八幡「?」
アート「お気になさらないでください、これは単なる照れ隠しです。娘達が選んだスーツを着て、私達の作ったループタイを付けているのを喜んでいるんです。
……口にしたら何て言われるか分からないから言いはしないが、意外と可愛い性格してるなお父さん。