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刻一刻と迫る大舞台の時刻。レース場は10レースが走り終えると、すぐにパドックの方へと走って行った。まるでその時間を待ち侘びたかのように………だがそれは、これから走る18人のウマ娘達も同じ事。18人いずれも同じような顔つきをしていた。ある者はそれを感情的に表現し、ある者はそれを心の奥底に押し留めていた。これから日本ダービーを走るパドックでは、そんな空気が漂っていた。
ジャーニー「……さて。」
ジャーニー(この空気、皐月賞の時とはまるで違う。熱狂と緊張が渦を成しているかのようだ。これが日本ダービー……成る程、多くの者達が欲しがるわけだ。)
ジャーニー「っ!?(この重圧は……)」
ウオッカ「……ジャーニー先輩、今日は……よろしくお願いします。」
ジャーニー「……よろしくお願いします、ウオッカさん。(あぁ……素晴らしい。いつ以来だ……こんな、冷や汗をかくだなんて……本能が訴えている。目の前の存在が、常識の埒外に居ると………かつてアネゴも、このような気分だったのだろうか。)」
―――控え室ーーー
八幡「……なんかさっきよりも表情が固いぞ、何かあったか?」
ジャーニー「えぇ、少しだけ……嵐になると思っていた航海が更に嵐になる可能性が高まったと思っていましてね。ですが、楽しみになってきました。」
八幡「気付いてるか?お前、表情は固くなってるが笑ってるぞ?」
おや……私がそのような顔をしていただなんて。気付きませんでした……
ジャーニー「すみません、不謹慎でしたね。」
八幡「いや、気にしてない。けど少し安心した。お前もそんな風になる時があるんだな。」
ジャーニー「八幡さん程ではありませんよ。」
八幡「俺の事はいいんだよ。それよりもお前は大丈夫なのか?」
ジャーニー「えぇ、ちょうど良い感じに解けてきました……では、行って参りますね。」
八幡「あぁ。」
ーーー数十分後ーーー
実況『心臓破りの最難関へ、実力と勇気が試されます。最後の坂が栄光への脱出口です。初夏の陽気が日本のウマ娘を称える日本ダービーデー。東京レース場の優駿決定を待ち侘びるスタート直前です。スタンド前からのスタートは先週のオークスも同様ですが、若駒達への最初の試練。どれだけ落ち着いた状態でいられるかもウマ娘の強心臓が試されます。さぁ、いよいよ始まります!東京優駿 日本ダービーのファンファーレです!』
♪~♪~♪~
実況『【日本の祭典】に約12万3,000人を超える大歓声に包まれました!そしてファンファーレと大歓声を聞き終えたウマ娘達は枠入りを開始しています。順調に進んでおりますが、ティアラ路線からの参戦しているウオッカは落ち着いてますね。』
解説『パドックの時も自身を見せていましたし、スタンド前でも雰囲気に呑まれた様子はありません。良いレースが期待出来そうです。』
実況『1番人気ドリームジャーニーは今、ゲートに入りました。10番プラテアード収まって、最後に大外18番フライングアップルが今ゆっくりと18番ゲートに収まりました!プライドをかけての2,400mが始まるっ!!』
ガッコン!!
実況『東京優駿日本ダービースタートが切られました!!正面スタンド前からのスタート!さぁ注目の先行争いですが、サンツェッペリンが上がって行こうという中、アサクサキングスも行く。フサイチホウオーもつけている。前走皐月賞2着のヴィクトリーはなんと後ろから2番目の位置取りという事になった!さぁここでじっくりじっくりジワッジワッとドリームジャーニーの横をすり抜けて上がって行きましたヴィクトリーです!』
八幡「後ろから3番目か……良い位置だな。オルフェもよく見ておけ、このレースはきっとお前の将来に役立つ。」
オルフェ「………」
実況『向正面の直線に入っていきました!先頭はアサクサキングス。その後ろサンツェッペリンは2番手です!芦毛のウマ娘プラテアード、ヴィクトリーは4番手にまで位置を上げてきました!人気の一角フサイチホウオーはヴィクトリーのすぐ後ろ!その内ローレルゲレイロとアドマイヤオーラ虎視眈々!その後ろにタスカータソルテ、真ん中トーセンマーチ、外フィニステール。さぁ果敢に11年ぶりティアラ路線からの参戦ウオッカ!そしてゴールドアビーつけてヒラボクロイヤル。マイネルコーンが居てナムラマース不気味な存在、ゴールデンダリアはその後ろ。1番人気ドリームジャーニーは末脚に懸ける!最後方にフライングアップルという体勢で大欅を越えていきます!』
ジャーニー(さて、この辺りからでしょうか……参りますっ!)
実況『最後の直線コースへと入って参りました!アサクサキングスピンクの勝負服が先頭だ!サンツェッペリン2番手!追い上げてくる、さぁその後ろを通って今ウオッカが上がってきた!黒鹿毛の髪を靡かせてスーッと上がってきた!そして大外からもドリームジャーニーが凄い脚で駆け上がってきている!!ヴィクトリーは伸びないか!?真ん中からフサイチホウオー!真ん中からフサイチホウオー!そしてアドマイヤオーラもつれて上がってきている!しかし、抜けた2人の一騎打ち!!ウオッカかっ!?ジャーニーかっ!?64年の偉業かっ!?2年連続の2冠かっ!?並んでゴールッ!!さぁどっちが勝った!!?これは分からないっ!!』
ジャーニー「はぁ……はぁ……はぁ……」
ウオッカ「はぁ……はぁ……はぁ……」
2人は並んだままゴール版を駆け抜け、3着を3バ身も離していた。数分後には3~5着の順位は点滅が無くなり確定したが、1~2着の順位にはまだ番号が入っておらず、審議のランプも灯っていた。