八幡side
八幡「長かったな……ここまで。」
ジャーニー「そうですね、菊花賞以来ですから約半年ぶりのレースでしょうか。」
阪神レース場。この地に訪れるのは初めてだ……これまで関西に赴いた事はあっても、この阪神のレースには1回も出た事が無いからだ。今日が初めての阪神だが、トレーニングは充分にやってきた。それにジャーニーの走り方を見るからに、右回りの方が得意だから半年ぶりとはいえ結果を出してくれるだろう。
八幡「そういえば、今日親御さんは来るのか?」
ジャーニー「そのような話はしておりませんので、分かりませんね。来るかもしれませんし来ないかもしれません。」
八幡「どっちか分からない辺りがお前達らしいな……けど阪神だからなぁ。」
ジャーニー「まぁ両親は多忙ですから。レースを観に来るのは少し難しいかもしれません。」
オルフェ「父上も母上も、時間があったら来るだろう。」
八幡「時間があったらって……此処大阪な?」
ーーー観覧席ーーー
オルフェ「うむ、今日の昼餉も美味であった。」
ジャーニー「本当に美味しかった……いつもすみませんね、八幡さん。」
八幡「担当の健康や体調を整えるのだってトレーナーの仕事だ。それに美味いと言いながら食ってくれるんだから作り甲斐もある。ジャーニーはレースまでにコンディションを整えてくれ。」
ジャーニー「承知しました。」
八幡「んで、お前は何で此処に居るんだ?」
シービー「ん?八幡が居るから。」
八幡「誰も入れるのを許可した覚えは無いんだが?」
シービー「それよりもさ八幡、3人が食べてたお弁当凄いおいしそうだったじゃん。まだ残ってたりしてないかにゃ~?」
八幡「ねぇよ。あったとしてもお前の胃袋には一口もやらねぇよ。」
シービー「だって超美味しそうだったんだもぉ~ん!!」ジタバタッ!!
オルフェ「煩わしい………」
八幡「ホントにな。見ろよオルフェ、コレが3人目の3冠ウマ娘の姿だ。威厳も何も無いよな。7人目の3冠ウマ娘とは大違いだ。」
シービー「何さ八幡!あたしに文句があるって言いたいのっ!?」
八幡「文句っていうか、ただただ差が激しいなって思って。だってそうだろ?片や床でジタバタ暴れてる奴と、片や大人っぽく食後の紅茶を飲んでる奴……誰がどう見ても同じ3冠ウマ娘とは思わないだろ。」
ジャーニー「八幡さん、そのような事を言っては失礼ではありませんか。」
八幡「いいんだよ。コイツのは個性的って言葉を通り越して尖ってるだけだから。」
シービー「八幡があたしの事をイジめる~!」
八幡「安心しろ、俺がこうして喋ってる間はお前の事をマジで嫌うなんて事はあり得ないから。」
シービー「じゃあ本当の意味で嫌う時ってどんな時?」
八幡「会話を交わしたくない時だな。後はその価値すら無い相手だ。」
シービー「じゃああたしは大丈夫だっ♪」
八幡「そゆ事。お前は確かに俺にだけ暑苦しくてバカ丸出しで喧しく面倒くさいウマ娘だが、俺はそんな事で嫌ったりはしない。」
シービー「八幡、何で上げて急降下させるの?あたしの株が今大暴落した気がするんだけど?」
八幡「ん?今のお前の株の現在地を教えただけだぞ?」
シービー「知りたくなかったんだけど……」
ジャーニー「では八幡さん、我々はどうなのでしょうか?」
八幡「確実にシービーよりは高いとだけ言っておく。っていうか俺から始めておいてアレだが、この測り方自体めっちゃ失礼だな。そもそもそんな基準無いし。」
シービー「じゃあさっきの冗談っ!!?」
八幡「いや、殆ど事実。」
そして数時間後、大阪杯の時間を迎えた。
実況『6枠8番、ドリームジャーニー。今回の1番人気です。』
解説『前走菊花賞以来の出走となりますね。この間が少し気になりますが、今の状態はとても良いですね。懸念材料があるとすれば、今回初めての阪神なので、実力を出し切ってほしいですね。』
オルフェ「兄上から見て姉上はどうだ?」
八幡「コンディションだけを見るなら問題無いな。この阪神をどう攻略してくれるのか、お手並み拝見ってところだな。6月には同じ舞台でグランプリも控えてるしな。」
シービー「って事は彼女はこのレースの後は宝塚記念に行くの?」
八幡「少し違うが、まぁ概ねはそんな感じだ。」
シービー「ふぅ~ん……」
八幡「どうしたんだ?」
シービー「べっつにぃ~?天皇賞に行かないのが不思議だなぁ~って思っただけ~。」
八幡「一応、春3冠を狙ってるからな。今回のレースで3着以内だったら天皇賞、以下だったら宝塚記念ってジャーニーと決めてたんだ。」
オルフェ「では、今日の結果次第で次のレースが決まるか……では、余が再び喝を入れるとしよう。」
八幡「菊花賞の時みたいに?って事は?」
オルフェ「余の頭の慰労も忘れるな。」
八幡「ちゃっかりしてるな。分かったよ、んじゃジャーニーが控え室に向かったタイミングで俺達も行くからな。」
オルフェ「うむ。」
シービー「何しに行くの?彼女は喝を入れるとか言ってたけど。」
八幡「そのままの意味だ。」
まっ、オルフェにとってはただの慰労会みたいなもんだけどな。