八幡side
はぁ………手遅れとはいえマジで帰りたい気分だ。けど隣に有無を言わせない圧力と同時に満足そうな表情をしながら歩いている俺の担当の妹が居る。
オルフェ「兄上、もっと堂々とせよ。それでは服に着られておる。」
八幡「無茶言うなよ、マネキンにさせられた上にそのまま出歩けなんてどんな拷問だ?しかも何で親御さん達はスーツやら金やらを用意してたんだ?」
オルフェ「兄上に渡す為であろう。でなければ、父上と母上が手製と手間をかけてまで此処まで来たりはせぬ。」
「トレーナー様はそう仰られておりますが、とてもよくお似合いだと私個人は思っております。」
八幡「そうですか……とりあえずさ、この視線って何とかならない?」
オルフェ「ならぬ。兄上は3冠トレーナー……であるならば、それに相応しい格があるというもの。兄上ならばそれだけの格を出せよう。」
八幡「めんどいだろそんなの……それにそんなの出すもんでも無いだろ、まぁお前は出しまくりだけど。」
同期3「……お前、比企谷か?」
八幡「ん?」
同期3「何だよその格好……此処は合コン会場じゃないんだぞ、何をそんなに良い恰好してんだよ。しかも眼鏡までして……将来の嫁探しでもするつもりか?」
八幡「そんなんじゃねぇよ。コレは着せられたんだ、俺の意思じゃない。」
同期3「だったらそんな恰好で何しに行くんだよ?それでレースにでも出るのか?お笑いだなっ!」
コイツは周りの目が見えていないんだろうか?物凄い鈍感な奴でもこれは分かる、今お前は白い目で見られてるぞ。
「貴方、それはトレーナー様に失礼ではありませんか?」
同期3「俺は本当の事を言っただけだが?」
オルフェ「兄上、言ったであろう……兄上は3冠トレーナー、それに相応しい格を出せると。三流とも呼べぬようなこの下郎に愚弄される事は余が許さぬ。」
同期3「……おい、お前今何て言った?」
八幡「やめろお前達、他の人達も居るんだ。こんな所で言い争いなんてするなみっともない。」
同期3「コイツが先に「やめろと言ってるのが分かんねぇのか?」っ!!?」ビクッ!!
八幡「学生相手に本気になってんじゃねぇよ、それに反応するって事は自分は三流だって認めてるようなもんだぞ。後、こんな日にこんな下らない事で揉め事起こそうとするな。トレーナーならトレーナーらしくしろ。」
………此処に長居しても良い事は無さそうだし、早いとこジャーニーの所に行くか。
八幡「行くぞオルフェ、歩きがてら説教だ。」
オルフェ「………」スタスタ
「……っ!お、お待ちください!」タッタッ!
同期3「チッ………」ズカズカッ!
俺にも聞こえたくらいだからオルフェにも聞こえていただろう、『さっき怒ってた男のトレーナー、カッコ悪い……』って。
オルフェ「……説教はせぬのか?」
八幡「あんなの方便だ。いつもだったら一言二言何か言ってやるところだが、今日は免除だ。それに、それなりの威厳は見せるべきだと教わったからそれでチャラだ。今の俺はどう見える?」
オルフェ「……良き格である、様変わりしておるわ。」
八幡「んじゃ、このまま行くか。ジャーニーの居る所まで案内頼む。」
「はっ、かしこまりました!」
ーーーコース場ーーー
八幡「済まんジャーニー、待たせた。」
ジャーニーお待ちしておりましたよ、八幡さ………とても良く似合っておりますよ。」
八幡「そりゃどうも。お前の両親と隣に居る妹が着せてきた。」
ジャーニー「成る程……それでその格好という事なのですね。」
「あ、あの……もしかしてこの人が?」
ジャーニー「あぁ、申しわけございません。こちらが正真正銘、私のトレーナーです。」
八幡「どうも、ドリームジャーニーの担当をしている比企谷です。お呼ばれしたので来ました。ところで、俺は何で呼ばれたんだ?」
ジャーニー「私は先程イベントに参加していたのですが、今はそのファンの交流時間を設けているところなのです。そこで、私だけでなく八幡さんにもファンの皆様と交流していただけたらと思いましてね。」
八幡「俺が交流して何になるんだ?お前1人で充分「あの、よろしければサインをお願い出来ませんかっ!?それと写真も1枚!」……はい?」
「私は握手と写真をお願いします!」
「こっちはジャーニーさんとスリーショットをお願いします!」
何でか知らんが、周りが凄い騒ぎ始めた……俺、別に何でもないただのトレーナーだよ?ジャーニーの方が有名だよ?なのに何でそんなトレーナーのサインや写真を欲しがるわけ?
八幡「……なぁ、この人達ってお前のファンで合ってるんだよな?」
ジャーニー「えぇ、それで合っていると思いますよ。」
八幡「ソイツ等はどうして俺のサインまで?俺、何かしたか?」
ジャーニー「えぇ、とても偉大な事を。」
八幡「それはお前が、だろ?俺はその手伝いをしてやっただけだ。それなのに突然、俺にファンがつくとも思えないんだが?」
オルフェ「兄上は惚けておるのか?」
八幡「この状況で惚けるなんて高等テクニック、俺には無い。」
オルフェ「簡単な事よ……今の兄上の格がそうさせておるのだ。そうでなければ、これだけの民が兄上に敬意を抱く事も無い。」
格、ねぇ………俺には分からないかもな。