八幡side
オルフェ「此処が春の終着点……で、あるか。」
八幡「そうだな、春最後のレースだ。」
ジャーニー「オル、心配しなくても大丈夫だよ。私はきっと無事に走り終えてくるから。」
オルフェ「………」
ジャーニー「そうだね……八幡さん、いつものように控え室でアレをやっていただいてもよろしいでしょうか?オルも不安がっている事ですので。」
八幡「いや、必要無いだろ。この顔は寧ろ『勝ち以外は許さん。』っていう風に見えるんだが?」
オルフェ「………フッ。」
ジャーニー「ふふふ、八幡さんもオルの表情が読み取れるようになってきたんですね。」
八幡「「短くない時間を過ごしてるからな、一応。ある程度の表情なら読み取れるようにはなった。」
オルフェ「兄上ならば当然である。」
八幡「(いや当然じゃねぇし……今でもムズいわ。)とりあえずジャーニーは自分の調子を維持するように努めろ。」
ジャーニー「えぇ、心得ていますよ。」
八幡「しかし4月に来た時はサクラで満開だったのに、今は緑でいっぱいだな。当たり前の事なんだが、同じレース場に居るとは思えないな。」
オルフェ「季節とは巡り巡るもの……その季節にしか見せぬ景色がある。だからこそ、風情というものがある。」
偶にこうやって哲学的な事を言うんだよな、オルフェって……全然いいんだけどさ。
ジャーニー「では行きましょう。この前と同じ場所でよろしいのでしょうか?」
八幡「あぁ、同じ席だ。とりあえず行くか。」
そして俺達は大阪杯の時と同じ観覧席に向かってレース場の中に入った。中はクーラーが効いていて涼しかった。まぁこの中もいずれ人の熱気で熱くなるんだろうけど、外よりかはマシだろう。
折本「あっ、比企谷居たっ!」
八幡「?折本?」
折本「同窓会ぶり~!今日は宝塚記念観に来たんだ~当然ドリームジャーニーの応援ねっ!」
「比企谷君久しぶり。その子が比企谷君の担当してるドリームジャーニーさん?」
八幡「あぁ、そうだ。」
ジャーニー「ご紹介に預かりました、ドリームジャーニーと申します。どうぞ、お見知りおきを。こちらに居るのは妹のオルフェーヴルです。妹共々、よろしくお願いします。」
オルフェ「………」
八幡「オルフェはこういう奴だから気にしないでくれ。」
折本「いいよいいよ、私の職場にもウマ娘って何人か居るけど全然違うタイプばっかりだから。」
「もしかして、これからレースの準備?」
八幡「レースの時間までまだあるから他のレースの観戦しながら時間になるのを待つ、もう俺達の日課になってる。」
折本「そうなんだ~。」
ジャーニー「八幡さん、そろそろ。」
八幡「だな。じゃあ俺達は行く、レース場によく来るのかどうかは知らんが、まぁ楽しめ。」
ーーー観覧席ーーー
ジャーニー「オル、気持ちは分かるけどあの人達に向けるものじゃないよ。そういうのは相応しい相手に向けなさい。」
オルフェ「姉上も兄上の過去の事は聞いてたであろう……あの者達が兄上を誹謗中傷していた人物、或いはそれを見て見ぬふりをして放置していた者達だ。何故に侮蔑を抑える必要がある?」
八幡「オルフェ。そう思ってくれるのはありがたいが、俺にとってはもう過去の出来事だ。今更気にしたところでどうしようも無い事だ。だがその気持ちだけは受け取っておく……それにジャーニーの言った通り、向ける相手っていうのはお前も分かってるだろ?」
オルフェ「………本当に兄上は甘い、統治者には向かぬ。」
八幡「俺は平民で構わねぇよ、王になるつもりなんて毛頭無い。」
ジャーニー「いえいえ、八幡さんは先導者が相応しいかと……もしくは軍師辺りでしょうか。」
八幡「中世の貴族じゃあるまいし……そんなんで喜ぶのはデュランダルくらいだろ、アイツにそれらしい物か騎士の称号を贈るとか言ってみろ、表情筋緩みまくるぞ。」
ジャーニー「ふふふ、目に浮かびますね。」
ーーー関係者通路ーーー
記者「では今日も自信があるという感じなのですね?」
八幡「はい、勝つ自信はあります。」
記者「ありがとうございます、急なインタビューを受けていただけて助かりました。」
八幡「いえ、では失礼します。」
……3冠の時には無かったのに、春の3冠ではこういうのやるんだな。やっぱ史上初が絡んでるからなのか?
八幡「まぁ何でもいいか。」
永井「良いご身分だな比企谷、有名トレーナー気取りか?ちょっと歩くだけで各取材班からインタビューとはな。」
八幡「……俺から頼んでるわけじゃないぞ。」
永井「んな事どうでもいいんだよ。クソッ、何でお前みたいな奴が脚光浴びてんだか……俺には理解出来ねぇよ。」
八幡「用が無いのなら行かせてもらう。」
永井「待てよ。」
八幡「……何か用か?」
永井「今日の宝塚記念……お前、どう思ってんだよ?」
八幡「どういう意味だ?」
永井「本当は勝てるなんて思ってないんだろ?ここまで勝ち上がってきたが、長距離からの中距離、しかも距離短縮1,000mだ。この差ってのは大きい……天春の走りが抜け切れてないんじゃないのか?」
八幡「………下らない、そんな事を一取材班でもあるお前に言うわけ無いだろ。」
永井「って事は認めるんだな?」
八幡「お前の方こそ、こんなやり方でしかインタビューが出来ないのか?それとも、公式の場では質問出来ないからこうして陰でコソコソしながら回ってるのか?」
永井「テメェ……喧嘩売ってんのか?」
八幡「先に売ってきたのはお前の方だろ。まぁ俺は売る気も買う気も無いけどな、お前と同じ土俵に立ってたまるかよ。」
永井「テメェ………ッ!!」
上司「おい、何して……っ!まさかコイツがまた何か?」
八幡「いえ、軽い挨拶程度です。では失礼します。」
今は言わないでおいてやるよ、今はな。