八幡side
8月に入ってトレーニングを再開。まだ本格的なトレーニングをせず徐々に強度を上げていく方針で進めているが、天皇賞に向けて左回りのトレーニングをしている。予想通りと言うべきなのか、ジャーニーは左回りが苦手みたいだ。これまで左回りはデビュー戦とダービーの2戦しか走っていない、だからその時はあまり気になっていなかった。この前の施術が無ければ見逃していた……少しでも左回りの練度を上げると同時に脚の使い方を覚えさせないとな。
八幡「どうだジャーニー、脚の感触は?」
ジャーニー「えぇ……良い感じです、疲れが飛ぶようですよ。」
八幡「そうか……自覚しているとは思うが一応言っておく、お前は左回りが苦手だ。その影響で左脚の疲労も溜まりやすい……天皇賞までの課題だな。オールカマーも天皇賞を走るつもりで走れ。まぁその時にも言うけどな。」
ジャーニー「分かりました……しかし、たったこれだけのトレーニングでこの疲労……自身の脆弱さを痛感しました。」
八幡「完璧な奴なんて居ない。だから少しでもその短所を補い克服し、長所を伸ばす。今やってるのだってそれと同じだ。」
オルフェ「……兄上、余の走りはどう見る?」
八幡「最初の頃と比べると確実に良くはなっている。以前までは走りに少し固さが目立っていたが、今はそれも無い。」
オルフェ「前まではそうであったと。」
八幡「そうだな、お前の気性がそうさせていたってのもある。確かに激しい気性ってのは闘争心や走りにも繋がるが、反対に言うとそれをコントロール出来ない限りは暴走するだけだからな。」
ジャーニー「成る程……では、オルの走りは理想に近い、と。」
八幡「まだまだ進化すると思うけどな。今はジャーニーのついでで見ているような感じだが、本格的に走りの矯正をするとなるともっとよく見てからの判断だな。」
ジャーニー「おや、それは八幡さんがするのでは?」
オルフェ「うむ、兄上の役目だ。余は既に決めている、兄上が余のトレーナーだ。」
八幡「なぁ、俺聞いた事あるんだけど、お前って確かトレーナーを選ぶんだろ?」
オルフェ「うむ。故に余は兄上を選んだ。」
八幡「さいで……(俺は許可してないし、まだ担当じゃないけど。)」
ーーー数分後・トレーナー室ーーー
八幡「………」カキカキ…
ジャーニーの脚の疲労……溜まりやすいのは腿の辺り、その次に腿下…つまりは足首や足裏部分。3番目に膝部分で最後に太腿や股関節。中々に厄介だ……1~2番目はスパートで使う部分だからな、今後は念入りに強化と施術をしないとな。改めて本人とも相談して進める事にするか。
コンコンコンッ
八幡「どうぞ。」
ガチャッ
たづな「失礼致します。お疲れ様です比企谷トレーナー。」
八幡「お疲れ様です。何かありましたか?」
たづな「先日のご依頼の件です。先方から改めてお返事をいただきました。」
八幡「ありがとうございます。」
たづな「……あの、比企谷トレーナーにお聞きしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
八幡「何でしょうか?」
たづな「ご依頼の書類をお渡しする前に拝見させていただいたのですが、気になる文章がございましたので。」
八幡「その事ですか。今回受けた依頼先は少し前にちょっとした揉め事がありましてね、まぁ個人間での事で収めました。俺も大事にするつもりはありませんでしたので。」
たづな「……よろしければその内容を聞かせていただく事は?」
八幡「構いませんよ。」
俺は去年に起きた出来事を駿川さんに説明した。
たづな「そのような事が……」
八幡「先程も申し上げましたが、俺はこの事を大きくするつもりはありません。あちらからも謝罪をいただきましたので、俺は手打ちにしています。」
たづな「……分かりました、比企谷トレーナーがそう仰るのでしたら私も気にしません。」
とは言っても、それは俺と会社の話。俺とアイツっていう意味では解決していないっていうか一方的に悪意向けられている感じだ。
まぁ気にする事はあるまい。
八幡「きっと先方もその辺りの事は気を使ってくれると思いますし。あえてぶつけるような事はしないでしょう……余程のチャレンジャーでも無ければ、ですけど。」
たづな「比企谷トレーナーは、その同級生の方でも構わないと?」
八幡「公私を分けてくれるのでしたら、俺から言う事は何もありません。たとえ俺が嫌いでもそれを仕事に出さなければ問題無いです。」
当然の事なんだが、アイツがそれを出来るとは思えない……何せプライベートと仕事で全然切り変わってないんだから。だってこの前ブエナの取材しに来た時なんて、俺への敵意丸出しだったし。
八幡「まぁ……その辺りは全く期待してねぇけど。」ボソッ
たづな「?何か言いましたか?」
八幡「いえ、ただの独り言です。」
たづな「何かありましたら遠慮無く言ってくださいね。そうそう、食事でも飲みでもお付き合いしますので。」
……何でその2択なんだ?