八幡side
後輩「よし、良いぞブエナ!そこから追い上げだっ!」
ブエナ「はいっ!」
八幡「………」
平日金曜日の放課後、今日はブエナのトレーニングに付き添っている。勿論ジャーニーのトレーニングも並行しているが、今日はどちらかと言えばあっちのトレーニングに合わせてやっている感じだ。要は併走を頼まれたからだ。
ジャーニー「はぁ……はぁ……ふぅ……」
ブエナ「はぁ……はぁ……や、やっぱりジャーニーさんは凄いです。そんなに余裕そうだなんて……」
ジャーニー「いえいえ、ブエナさんの走りも前に比べて良くなっていますよ。スパートの持続も長くなっています。」
八幡「そうだな。今のスパートなら秋華賞の直線でも問題無いと言いたいが、他のウマ娘の動きや展開次第で変わってくるからな、臨機応変に走れるようにな。」
ブエナ「はい。トレーナーさん、もう1本お願いしますっ!」
後輩「今日は追い切りなんだけどなぁ……」
八幡「やらせてやれ。さっきので最後だってのはアイツも分かってる筈だ。ジャーニーもこれで最後だからな。」
ジャーニー「はい、分かっています。」
その後は最後の1本を走り終えてからトレーニングを切り上げて、部室へと戻った。因みに追い切りの内容としてはまぁまぁ良い方だと思ってる。後輩の中では分からないけどな。
ーーートレーニング後・部室ーーー
八幡「……まぁ今日は併走だったし、そんなに張ってはいないな。軽くやる程度にするからな。」
ジャーニー「軽くでよろしいのですか?」
八幡「重点的にやる必要性が無いって言ってんだよ。始めるからそのまま横になっとけ。」
ジャーニー「では、よろしくお願いします。」
俺はトレーニング後の日課になっている疲れほぐしのマッサージをしている。天皇賞が終わるまでは続ける予定だ。鍼灸とかならまた違う効果があるんだろうが、俺はその手の事は習った事が無い。心得があるのは
ブエナ「……あの、ジャーニーさん?」
ジャーニー「何ですか?」
ブエナ「その、トレーナーさんがやってるソレって、どんな感じなんですか?」
ジャーニー「とても心地良いですよ。最初にやってもらった時からお願いしています。30分もすればつい寝てしまうくらいですから。」
ブエナ「そんなに気持ち良いんですね………」チラッ
後輩「……っ!俺は先輩みたいにマッサージなんて出来ないからやらないぞ?」
ブエナ「まだ何も言ってないのに……お兄ちゃんなら出来ると思うんだけどな。」
八幡「本を読んだから程度で出来る事でも無いしな、コレに至っては。どこをどう刺激してどこをどういう風に揉むのが正解なのかをちゃんと理解してないと、安易には出来ない。」
後輩「じゃあ、それをやった後とやらなかった後っていうのは……」
八幡「確実に差があるな。まぁその効果が出るのは翌日以降だが、走りは確実に違う。何せ疲労が抜けて先日とほぼ同じくらいの走りが出来るんだからな。まぁ後は日常でも疲労が溜まりにくい身体の使い方とか身に付けておけば、楽にはなるな。まぁそれを自覚するのって難しいけど。」
ブエナ「そんな方法があるんですかっ!?」
八幡「アスリートなら寧ろ知っておいて損は無いと思うぞ。因みにジャーニーにはジュニアクラスの時からコレを教えてる。だからマイル~長距離まで脚の疲労を最大限少なくしながら走れたからな、まぁ春の3冠はそれでも大変だったけど。」
ブエナ「それって教えてもらえたりしますか?」
八幡「ん~……そのまま教えるってのもアレだからな。後輩、とりあえずお前が読んで自分なりに教えてみろ。そっくりそのまま教えたんじゃブエナの為にもならないし。立てかけてあるノートがあるだろ、その中にある【疲労の取り方と抜き方】ってタイトルだから。」
後輩「は、はいっ!あっ、後で細かく教えてもらう事って出来ますか?」
八幡「あぁ、別に構わないぞ。」
ジャーニーの施術も終わったと同時に向こうも話し終えたみたいだから、一緒に寮へ送ってから俺達もトレーナー寮に帰る事になった………のだが。
八幡「アイツ等は何をしてるんだか……」
ジャーニー「おやおや……」
後輩「あの、止めに行きます?」
八幡「いや、ケンカかどうかも分からないのに行くのもアレだろ。」
帰り道で見た光景は、ジェンティルがオルフェに視線を送っているところだった。当のオルフェは全く気にもしていない様子で座っているだけだ。本当にただそれだけの事なんだが、周りがピリピリしてるんだよなぁ……
八幡「はぁ……しょうがねぇなぁ。」
後輩「せ、先輩?」
八幡「君達んとこの王は何してんの?」
「っ!ト、トレーナー様!それが、彼女がいきなり王の元へ来たものでして。それからずっとあのままなのです。」
八幡「ふぅん……その内終わるんじゃね?」
「そ、そうでしょうか?」
ジェンティル「………貴女のお姉さんから聞いていたのだけれど、やっぱり思い違いだったのかしら?前のように牙を剥けてくるかと思っていましたけれど、本当に歯が抜けてしまったように見えますわ。」
「なっ!!?」
八幡「………」
ジャーニー「………」
ブエナ「え、えっと……」
ジェンティル「以前の貴女でしたら迷わず口を開いていたというのに……どうしてしまったのかしら?」
オルフェ「………」
ジェンティル「あら、言いかえ「兄上、姉上。終わったか……」っ!」
ジャーニー「待たせてしまってごめんよオル。退屈していなかったかい?」
オルフェ「いいや、ちょうど良い暇つぶしが居た。」
ジャーニー「そうか、それは良かった。」
八幡「……それで?向こうは言い返してほしいみたいだったが、何も言わなくていいのか?」
オルフェ「無い。言葉は不要……余は走りで証明するのみ。語りなど余には必要無い。」
ジェンティル「あら、随分な事を言うのね?」
オルフェ「事実。貴様の言う通り、以前までの余であれば貴様の言葉にも耳を傾けていたであろう……しかし、時間の無駄であった。貴様に割く時間があるならば、己に割く……当然の事である。」
おぉ……オルフェの奴言い方はアレだが、少し大人になったな。
オルフェ「行くぞ姉上。」
ジャーニー「そうだね。」
八幡「………明日はご馳走でもしてやるか。」ボソッ