八幡side
オルフェ「兄上、タイムはどうであった?」
八幡「新記録では無いが、まぁ2,400mにしては上々といったところだ。まだデビューもしてないウマ娘が簡単に出せるようなタイムじゃないのは確かだ。」
オルフェ「ふむ……走りについてはどうだ?」
八幡「大分リラックス出来てるな。今の調子なら今後はもっと良くなる、段々良い動きになってきてる。」
オルフェ「うむ。」
ジェンティル「………」
……ジェンティルの奴、相当ショックを受けてるみたいだな。そりゃそうか、ここまで差を広げられるとは思ってもなかったんだろう。それに、俺がこの前指摘していた部分、あまり改善されてなかったしな。
ジェンティル「………オルフェさん。」
オルフェ「何だ?」
ジェンティル「一体どうやって……どうやってその走りを?前までの貴女でしたらそんな走りはしなかった、一体どうやって?」
オルフェ「己の走りを捨てた結果に過ぎぬ。」
ジェンティル「……捨てた?」
オルフェ「余の走りは兄上と出会うまでは完璧な走りだと誇りを持っていた。だが完璧だと思っていた走りは兄上には悉く指摘をされ、その指摘を受けた分だけ走りは改善された……だから余はこれまでの走りを捨てた。一から兄上に教わり、今に至る……まだまだ発展途上を辿るばかりであるが、故に余がこれから歩む覇道と共に完成させる。」
ジェンティル「………」
オルフェ「兄上も言っておったわ、貴様の走りは力頼りが過ぎると……」
ジェンティル「っ!」
八幡「まぁ確かに言ったな。お前にも言ったと思うが、あの走りじゃまず1歩1歩の脚へのストレスが大きい。力があり過ぎるせいで本来の走りを邪魔している、お前が拘る力…パワーってのは使い方次第で形を大きく変える。その力の使い方をコントロールしない限りは、お前の走りは停滞の一途を辿る。もっと砕けて言うと、今の走りをどれだけ壊せるか、だな。」
ジェンティル「私が作り上げてきたこの走りを壊す……簡単に言ってくれますわね?」
八幡「言うのは簡単だからな、けどやるのはお前達だ。オルフェも完璧な走りだと誇りを持っていた走りを捨ててまで俺に教わってる、だから今のオルフェが居る。これまでのオルフェと今のオルフェ……違いがハッキリ出ているのは、走りでしか圧を出さないようになったところだな。そのおかげで今まで以上の力を発揮出来るようになってるからな。」
前までは走りにまで気を張ってたから、抜いてもいいところにまで力を張ってた感じだ。けど今はその楽を覚えたおかげで脚の温存が前よりも良くなってるし、脚の使い方や運び方も改善された。このまま行けばデビュー戦はすげぇ事になると思う。
ジェンティル「……私は、どうしたらよろしいのかしら?」
八幡「さっきも言った通り、自分の力をコントロールしろ。そこがスタートラインだ。そこを脱却しない限りは同じ場所で留まるだけだ。」
ジェンティル「………」
八幡「まぁどうするかはお前次第だ。はい、じゃあ反省会も済んだ事だしダウンに入るぞ。ジャーニーは走った後にストレッチするのを忘れるなよ。」
ジャーニー「はい。」
そしてトレーニング兼模擬レースはこれで終了した。しかし本当に凄い人数だったな……まぁ2人が走るから注目されるのも自然なのかもな。それとゴルシ、お前はにんじんクッキーをチップ代わりに賭け事なんかするな、後でエアグルーヴに言っとくからな?
ーーー数十分後・校門前ーーー
八幡「………」
ジェンティル「……少し、お時間をいただけるかしら。」
八幡「何か用か?これでも寮に帰ってからもやる事はあるんだ。」
ジェンティル「オルフェさんはいつから自分の走りを捨てましたの?」
八幡「あまり他人の個人情報は言いたくないんだが……そうだな、ジャーニーが3冠を獲った時からだな。」
ジェンティル「彼女のあの性格……貴方の指示を渋ったりはしませんでしたの?」
八幡「しなかったぞ。俺も最初は少し疑ったが、アイツは本気だった。まぁ何かに感化されたのかもしれないが、それでも1つ自分の殻を破ったんだ。俺は素直に良い事だと思ってる。」
ジェンティル「あのオルフェさんが素直にトレーニングを……」
簡単な事じゃないのは俺も分かってる。走りを変えるってのはこれまでの自分を否定するのと同義だ。オルフェにしろジェンティルにしろ簡単に割り切れる事では無い……だがそこで決断出来る奴は大きく変われる。俺も先生の教えを自分から行こうと思わなければ、こうしてトレーナーにはなってないしな。先生の授業を続けて受けようと思った自分が居たからこそ、今の自分が居るんだと自信を持ってそう言える。
八幡「まぁその辺りの事は自分でよく考えろから結論を出せ、俺に言われたからって変える必要なんて無いしな。自分の担当でもないトレーナーからこんな事を言われても良い気分にはならないだろうしな。」
さて、俺も帰って飯の支度と東京レース場の事をもっかい調べないとな。天皇賞に向けてやる事は大積だからな、少しでも勝率を高くする方法を探さないとな。