ジャーニーside
明日へと迫った天皇賞……今日のトレーニングは明日に向けての調整のみでした。しかし、いつになく落ち着きませんね。これも普段は走らない左回りのコースを走る不安から来るものだからなのでしょうか?日本ダービーを思い出しますね。
オルフェ「……姉上。」
ジャーニー?どうかしたのかい、オル?」
オルフェ「いや、何を耽っておる?」
ジャーニー「あぁ、明日の事で少しね。私にとってこの前のオールカマーもそうだけど、天皇賞だって1年半年ぶりの東京レース場でのレース……少し不安なのかもしれない。」
オルフェ「らしくもない事を言う。いつもであればそのような些事、気にする事も無かった筈だ。」
ジャーニー「そうだね……これもきっとこの前のオールカマーで初めて敗北したからかもしれないね。レースなんて負ける可能性の方が高いというのに、私はその事すら忘れていた……罪深い事だよ。」
オルフェ「恥じる事等無い。その思考は姉上が常に勝ってきたからこそ、常勝不敗だったからである。先のレースでは敗北を喫した……だがその敗北を得たからこそ、以降のレースは盤石なものになるであろう……」
ジャーニー「ありがとうオル、それだけでも嬉しいよ。負けたからこそ、この後のレースは強くなる……成る程、確かにそうかもしれないね。負けた気持ちを知ったからこそ、次は勝ちたいと思ってしまうものだからね。今の私のように……」
やはりオルは聡明な子だ、この子からは教わってばかりだ。
オルフェ「それに、余はその背に魅せられた。」
ジャーニー「っ!」
オルフェ「余が知る先駆者達の背は幾度と無く見てきたが、惹かれるものは無かった……だが去年、余は初めて1つの走りに惹かれた……その背を、その走り見て初めて指標とすべき者と定めた。姉上、余が標と定めたその背と走り……失望させてくれるなよ。」
ジャーニー「……あぁ、勿論だよオル。おかげで不安は何も無くなった、明日の天皇賞は期待しておいてほしい。これまでで1番の走りをすると約束しよう。」
オルフェ「……期待している。」
全く、そんな事を言われてしまったから負ける理由が無くなってしまったよ。明日の天皇賞、他の方々には申しわけ無いが、どうしても勝たなくてはならなくなってしまった……少々言葉は汚いが、礎になってもらうよ。
ジャーニーsideout
八幡side
後輩「………」
八幡「お前、今から緊張してどうすんだよ……明日なんだぞ?」
後輩「だ、だって緊張するじゃないですか……先輩はしないんですか?」
八幡「した時もあったかもしれないが、今はもう慣れたとしか……ダービーや菊花賞なんてずっと身体が重かったような気もしてたし、落ち着かなかったのは覚えてる。お前の秋華賞の時だってそうじゃなかったか?」
後輩「そ、そうだったかもしれません……」
八幡「何で自分の事なのに覚えてないんだよ。」
ーーー寮・食堂ーーー
八幡「とりあえず飯食って落ち着け。俺の部屋に突然来て何かと思ったら緊張で居ても立っても居られないなんてお前の後輩に聞かれでもしてみろ、面目立たないぞ?メインTから背中押されてブエナの担当トレーナー任せてくれたんだろ?しっかりしろ、まだまだこれからなんだから。」
後輩「すみません……けど先輩はよく落ち着いてられますよね。俺もそんな胆力が欲しいです。」
八幡「余計な事を考えないようにしているだけだ。レースになったら俺達に出来る事なんて何も無いんだからな、勝つ事と無事に帰ってくる事を祈る、このくらいだ。」
同期3「余計な事を考えないようにしてるって言ってるけど、要は何も考えてないだけだろ?だからこの間のオールカマーも負けちまったんだろ?」
はぁ………コイツは寮に帰ったらこれしかやる事が無いのか?
俺の同期である同期3はこんな風にオールカマーで負けた事を茶化してくる。まぁ負けたから言い訳も何も無いんだが、何でこんなに大きく出られるのだろうか……他人をバカにするくらいなら、早く担当にしたいウマ娘や独立の準備すればいいのにって思う。
後輩「あの、ちょっといいですか?」
同期3「あ?何だよ?」
後輩「えっと、違ったらすみませんなんですけど……もしかして暇なんですか?」
同期3「は、はぁ!?」
『ブフォッ!』
八幡「………」フルフル…
……偶にあるんだよな、後輩の天然発言。此処で言っちゃったかぁ~。そのせいで周りの人達も吹いちゃったし……
後輩「だってこの1ヶ月くらい、ずっと先輩に絡んできてるじゃないですか。もしかしたらと思ったんですけど……」
同期3「そ、そんなわけ無いだろ!言っておくけどな、俺にはやる事が山のようにあるんだよ!今は休憩中だっ!」
後輩「そうだったんですね、すみません勘違いしちゃって。」
同期3「フンッ!!」
その場に居るのが恥ずかしくなってしまったのか、同期3は逃げるように自分の部屋の方向に向かって行った。
後輩「休憩中なのに先輩にあんな事言うなんて……息抜きになってるんでしょうか?」
八幡「いや、まぁ……やり方は人それぞれだし?それよりも後輩、何か食いたい料理とかあるか?俺が作ってやる。」
後輩「え、いや悪いですよそんなの「後輩、お菓子余ったからやるよ。」……え?」
「私もお茶箱で勝ってるんだけど多過ぎてさ、コレあげる。」
「確かブエナビスタの併走相手探してたよな?俺の担当でよかったら引き受けるぞ。」
後輩「え、え……えぇ?」
同期3の事はこのトレーナー寮に住んでる人達なら辟易しているくらいやり取りを見ているから、今日の同期3の無自覚撃退にはきっとスカッとしたんだろう。アイツが部屋に戻った後なんかは先輩達がよく俺に声をかけてくれるんだが、今日は後輩がその日になったな。しかも俺の品まで貰えるおまけ付きで。
その後に同期3以外の同期が帰ってきて事情を説明すると、同期1はブエナに合いそうメニュー、同期2はプロテインバー1箱、桐生院は女性に人気のコスメ(ブエナへの贈り物として)をそれぞれ渡していた。後輩、今日のお前は満場一致で最優秀トレーナー賞受賞だ。