八幡side
この部屋に誰も入って来なくて本当に良かったと思ってる。さっきまでずっとオルフェとジャーニーの頭を撫でてたから、誰も来ないでくれと頭の中でずっと唱えていた。そして今はジャーニーのパドックの時間になった為、俺とオルフェはパドックが見える場所に移動している。
オルフェ「兄上、仮定の話は好まぬが1つ聞かせろ。余がレースに出るとして、兄上はこの天皇賞に出すか?」
八幡「ん~……その時になってみないと分からないな。けど俺だったら目指さないかもな。天皇賞よりも出したいレースがある。」
オルフェ「ほう……そのレースとは?」
八幡「凱旋門賞かBCターフ。」
オルフェ「……世界か。」
八幡「まぁな。お前の走りならその辺りを目指してもおかしくはないと思ってる。けどその前にクラシックで結果を残さないと実現は難しいと思うけど……まぁあくまで俺の考えだけどな。その辺はお前の将来の「兄上以外おらぬ。」……そんなすぐ決めていいのか?もっと吟味した方が良いと思うぞ?」
オルフェ「兄上以外に余を満足させられるメニューを組める者などおらぬ……」
言い切っちゃうから凄い自信だよなぁ……まぁそれだけ認めてくれてるって事だから嬉しくはあるんだけどさ。
実況『続いて6枠12番、本日の1番人気のドリームジャーニーです!』
解説『前走は中山巧者のマツリダゴッホに敗北しましたが、今日の調子も前回同様に良さそうですね。東京レース場のキャリアはこれで2度目と少なくはありますが、経験でカバーしてくれるでしょう。』
ーーー控え室ーーー
八幡「分かっているとは思うが、相手はGⅠウマ娘だけじゃない。他にもGⅡを勝って天皇賞に勝ち上がったウマ娘や中距離を得意とするウマ娘が集まっている、道中は自分なりに楽に走れるように心掛けろ。」
ジャーニー「心得ていますよ。併走で走った時の感覚を忘れずに走るつもりなので。」
八幡「ならいい……けど展開にも気を付けろよ。」
ジャーニー「はい……そうそう八幡さん。」
八幡「?」
プシュー!
八幡「……何で香水を?」
ジャーニー「いえ、深い意味はありませんよ。ただ少しだけオルと私の香りが漂っているのが気になっただけです。悪い気はしないのですが、他の方々に変な勘違いをされては困りますからね。」
八幡「……次のレースからは消臭剤持ってくるようにする。」
ジャーニー「ご安心ください、私が香水をかけますから。」
八幡「そっちの方が変な勘違いされるだろうが。」
ジャーニー「では、行って参ります。」
ーーー観覧席ーーー
オルフェ「………」
八幡「………」
ターフビジョンにはこれから走るウマ娘達が映し出されている。ちょうど今ジャーニーが映されていて、実況と解説が評価をしていた。いつもの事だが、俺は実況や解説は聞いていない。寧ろビジョンに映し出されている映像を見て、ジャーニーや他のウマ娘の状態を確かめている。
八幡「ウオッカは良い仕上がりになってるな……後はスクリーンヒーローとオウケンブルースリも良い感じだな。」
オルフェ「姉上と比べるとどうだ?」
八幡「個人的な評価だが、どのウマ娘もジャーニー以上では無いな。スクリーンヒーローが良い線行ってるってところだろう。」
オルフェ「………」
八幡「まぁ、レースを観てだな。」
♪~♪~♪~
いよいよか……今日は少し力が入っちまってるな。トレーニングを重ねてきたとはいえ、不安なものは不安だ。これじゃジャーニーの事を言えないな。
ガッコン!!
実況『スタートしました!ドリームジャーニーやや遅れて後方からオウケンブルースリとエアシェイディも後方からとなりました!前に行ったのは……スクリーンヒーローかっ!しかし外からエイシンデピュティが上がって行く!その間からはキャプテントゥーレ!3人が固まって向正面へと向かって行きます!』
あのスタートはわざとだな。自分から後方の位置に行く事で脚やスタミナだけでなく、スパートのタイミングも見計らうつもりなんだろう。縦長の展開だが、今のところは平均ペースだから展開の影響は無いだろう。
実況『ドリームジャーニーとサクラオリオンが後方2番手と殿追走です!3コーナーカーブに入っていきます。先頭はエイシンデピュティ、リードを2バ身取りました。キャプテントゥーレが単独2番手に上がります。マツリダゴッホが2番手に並びかけて行きまして、3コーナーをカーブして行きます!1,000m通過が59秒.8です。人気のドリームジャーニーはまだ後方、現在3~4番手の辺り!ウオッカも同じような順位で4コーナーから直線コースに入ります!』
さて、ここからだな。内から差すか、外からぶっちぎるか……
実況『さぁ先頭は3人!エイシンデピュティ、キャプテントゥーレ、マツリダゴッホの3人だ!外からサクラメガワンダー、中からスクリーンヒーローも追い上げてくる!ウオッカも内から進路を確保しようとしている!さぁカンパニー先頭に代わるかっ!?』
ジャーニー「はぁっ!!!」
ズサァ!!!
実況『しかし大外から一気にドリームジャーニーッ!!先頭争いに加わる!先頭はカンパニー!間にスクリーンヒーロー、ウオッカは内を突いて上がってくる!しかし外から12番ドリームジャーニー!カンパニー!カンパニー!スクリーンヒーロー!外から来た来た、ドリームジャーニー!外から来た来た、ドリームジャーニー!!これが最強ウマ娘の力だぁぁぁ~!!!ドリームジャーニーッ!!!3冠ウマ娘の意地っ!!直線豪快に差し切りました!!そして史上6人目、天皇賞春秋連覇達成!!』
八幡「ふぅ……勝ったか。」
ひとまず安心した……しかし道中は全て脚を溜めるのに専念していたみたいだな。直線でのあの爆発力、長い直線でなければ無理だ。
アイツはホントに身内を騙すのが得意だな。