八幡side
天皇賞明けの水曜日。今日からまたトレーニングを開始していくわけだが、まだ本格的なトレーニングはしないつもりだ。ジャーニーの脚の様子を見ながら開始していくつもりで、ブエナのエリザベス女王杯も残り11日後に迫ってるからそっちをメインにするつもりだ。だから今回のトレーニングは後輩のメニューがメインの主導になる。メニューを事前に見させてもらったからその通りにやるつもりではあるが、やはりまだ甘さが残るメニューであるのは否定出来ない……まだ3年目の俺が言える事じゃないけど。
八幡「じゃあ、今日はよろしくな。」
ジャーニー「よろしくお願いします。」
後輩「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ブエナ「お願いしますっ!」
八幡「俺達はそっちのメニューに従うから、どう動けばいいのか指示を出してくれればその通りに動く。」
ジャーニー「なので遠慮は必要ありません。必要に応じて細かい指示を提示してくださっても構いませんので。」
後輩「わ、分かりました……」
ブエナ「お、お兄ちゃん緊張し過ぎじゃない?」
後輩「そういうお前だって緊張してるだろ。」
ブエナ「だ、だって先輩相手だもん!いつもはトレーナーさんがメインでやってたのに今日はお兄ちゃんがメインでしょ?私の方まで緊張しちゃうよぉ~。」
八幡「そう構える必要なんて無い、いつも通りやってくれればいい。俺の事は便利な手足が出来たと思ってくれればいいから。」
後輩「いや、それは無理です。」
それからトレーニングを開始した。アップの時点で気付いた事だが、俺のやっているアップの要素を一部取り入れている。良いと思ったものは自分の糧にするのはトレーナーも同じ事だ。よく社会に出たら使われる言葉だが、【先輩の行動を見て盗め】という。だから自分がこの先成長する為にはどの先輩でもいいから、その先輩の行動やパターンを盗んで自分の物にする方法が近道でもある。まぁトレーナーの場合、それが当てはまるのかどうかは分からないけどな。
後輩「それじゃあ併走に入る前に少休憩。」
ジャーニー「はい。」
ブエナ「う、うん!」
後輩「……やっぱりドリームジャーニーにはまだ負荷をかけても大丈夫か?でもまだアップの範囲内だし……」ボソボソ…
八幡「………ジャーニー、少し中山レース場の話をしておくぞ。この前のオールカマーとはまた違った走りになるのは確実だからな、今の内にその走りをイメージさせておく。」
ジャーニー「はい、かしこまりました。」
後輩「っ!そうか、俺達だけじゃない。先輩達の次のレースの事も頭の中に入れてメニュー組まないとダメだったんだ……このメニューじゃ全然ダメだ。」ボソボソ…
どうやら気付いてくれたみたいだな。
ジャーニー「ハッキリと言ってあげればよろしかったのでは?」
八幡「手取り足取り教えてたんじゃアイツの為にならないだろ。ヒントをやっただけで気付いたんだ、次の併走では取り返してくれるだろうよ。」
ジャーニー「では、お手並み拝見といったところでしょうか。」
その後の併走では後輩成りに知恵を絞ったからなのか、途中で『スパートそのまま!坂でもそのまま走れっ!』って言ってた。恐らくこれはジャーニーに向けて言ったのだろう……京都の直線に坂は無いからな。ブエナにもコーナーリングの指摘をしっかりしていたから、俺のヒントは無駄にはならなかったな。
メインT「調子はどうだ後輩、それに比企谷も。」
後輩「っ!お疲れ様です。最初は全然でしたけど、先輩のおかげで途中から少しだけ軌道修正出来ました。」
メインT「そうなのか?」
八幡「何の事か分かりませんね、俺は何もしていませんよ。後輩が1人で気付いただけですよ。」
後輩「え……」
メインT「はははっ!後輩、お前はもう少し腹芸というのを覚えた方が良いかもな。意地の悪い質問をされた時に効果的だぞ。」
八幡「メインTさん、それはまだ覚えさせなくていいですよ。まだ担当を持ったばかりなんですから。」
メインT「お前は違うのか?」
八幡「……俺は覚えてしまったので。」
後輩「え、えっと?」
メインT「あぁ悪いな置いてきぼりにして。それで?」
後輩「はい。併走トレーニングは順調に出来てます。」
メインT「次はエリザベス女王杯だったな、頑張れよ。」
後輩「はいっ!」
八幡「メインTさんの方はどうなんですか?敵情視察ってわけでも無いんでしょう?」
メインT「まぁな、本命のお前とブエナを警戒するのは当然だからな。」
ブエナ「あっ、メインTさん!こんにちはっ!」
メインT「元気そうだな。次のエリザベス女王杯ではよろしくな。」
ブエナ「はい、負けません!」
メインTも次のエリザベス女王杯に参戦予定で今のところ大穴扱いのクィーンスプマンテの担当をしていて、逃げを得意としているウマ娘だ。
メインT「一昨年ぶりのGⅠ挑戦だが、勝ちに行くつもりだ。」
後輩「僕も負けるつもりはありませんよ、ブエナと一緒にもう1つ勝ちに行きますから。」
メインT「……ふっ、良い目をするようになったな。そうだ、それを忘れるな。」
……どうやら良い師弟関係を築けているみたいだな。何か少しだけ羨ましい……俺って誰かのサブに入ってなければ、サブに誰かが来た事も無いからな。先生くらいだろうな、直接色々と教えてもらったのは。